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25年前は予知できた噴火…今の懸念は「人」自宅を失った女性が目指す共助のカタチ

Sitakke

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25年前の3月31日、北海道胆振地方の有珠山が噴火しました。
次の噴火に備えて何ができるのか。「記憶の伝承」と「高齢化の課題」を抱える町を取材しました。

【特集】“じぶんごと”防災

胆振地方の洞爺湖町に住む荒町美紀(あらまちみき)さんは、洞爺湖有珠火山マイスター。

「あの建物が私が住んでいた団地で桜ヶ丘団地っていう名前の団地です」

下から数えて3つ目、本来4階のベランダの柵が大きくひしゃげた部屋が、荒町さんのかつての「我が家」でした。

「あれだけ壊れているっていうことは、大きめの噴石が当たったのかな」

ここ桜ヶ丘団地は、2000年の噴火により泥流が流れ込み、噴石と火山灰が降り注ぎました。1階部分は泥流で完全に埋まっています。

「自宅の裏が有珠山の裾野ということも知らなかった。有珠山が噴火するかもしれないけど、うちは大丈夫だろうなという気持ち」

避難するときは「戻れるもの」と思っていた

荒町さんは噴火の2日前に避難をしました。

『戻れないかもしれない…』

そんなことは微塵も考えなかったと言います。

「何が一番って子どもたちのアルバムを持って出なかったので、それだけは無事でいてほしいなっていう気持ち」

噴火から数か月後、2度ほど一時帰宅できたため思い出のアルバムは持ち出せたものの、二度とこの場所で暮らすことは叶いませんでした。

「まさか」の経験…これが大きなきっかけとなり、有珠山の正しい知識や、噴火の記憶を語り継いでいく『洞爺湖有珠火山マイスター』の資格をとりました。

「2000年は自宅は失くしても命はなくさなかった、犠牲者が出なかったが、次の噴火はそうはいかないということもある。この地で暮らすためには有珠山のことを知っておかないと」


懸念は…「人」

有珠山の噴火の周期は、20年から30年といわれていて、今年はその中間点にあたります。

2000年の噴火を予知した有珠山研究の第一人者、北海道大学の岡田弘(おかだひろむ)名誉教授。

火山活動に関する監視能力は、25年の間に機材面では格段に整備が進んだとしながらも、25年間、東北・北海道で大きな噴火が起こらなかったことで、ある懸念を指摘します。

2000年当時の噴火

「危機感を体験できる、現場を経験することは全くできなかった。災害の現場で役に立つのは"人"なんですよ。危機感をもってそういうことに対応できる、コミュニケーションができる、そういう人を育てているかといったら、これはかなり怪しい」

その懸念は、避難の現場でも…。

有珠山のふもとに位置する洞爺湖町。
一時避難場所の設置や、噴火警戒レベルに合わせた避難など、避難の計画は25年前に比べて整備されてきました。

ただ、町民の避難を主導する自治防災室は、課題のひとつに「高齢化」をあげます。

「実際に避難するときに1人で避難できないとか、交通手段を持たない人がいる」

洞爺湖町で65歳以上の年齢が占める割合は、2000年の噴火の際は25.3%でしたが、25年で倍近くまで増えていて、今後も増え続けると予測されています。


2度の噴火を経験して

洞爺湖温泉地区に50年以上住む宮崎秀雄(みやざきひでお)さん、77歳。
これまで2回の噴火を経験しています。
4~5年前から防災への意識が変わってきたといいます。

年齢によるものも大きかったと話します。

「25年前の52歳のときはすごく若かったから馬力があった。その前の噴火のときは30歳だからもっと馬力あった。この歳になると、しゃがんだり立ったりするのも大変なときもある」
「みんな同じように年をとってきている。走ることもできないし、いざ逃げろって言われても体が動かない」

高齢化によって、これまでより避難に時間を要する人が増えています。
1人で避難ができない人に対しては、避難の際に必要な配慮や支援をする人を決めた「個別避難計画」を作りました。

しかし、支援をする側にも高齢者がいるといいます。

洞爺湖町・総務課自治防災室の平間剛志室長は「必ず救助にいくというのは人員的にも限界があるから、行けない場合も多々あると考えておいてもらいたい」と話します。

そのうえで、自分の力と周りの助けを上手に生かしながら避難行動をとってもらうよう呼びかけています。


「共助」のための資格を

洞爺湖有珠山火山マイスターの荒町さんは、4年前に新たな資格をとりました。

それは『防災介助士』。

障害者や高齢者など、自力での避難が難しい人たちの避難方法の知識を持つ人です。
荒町さんは地域の人たちにこういった知識を伝えていきたいと話します。

「私は高齢者とか障害のある人には、自助もそうだけど共助が大切だと思っていて。周りがちゃんと助けてあげる、周りとともに助かるというのが一番重要だなと思う。誰も取り残さないという、みんながやらないところを私がやっていければいいなという思いが強い」

ともに助け合う、『共助』の力をどこまで活かせるか、高齢化が進む町の課題です。

北海道大学の岡田弘名誉教授は、「有珠山は噴火の前に体に感じる地震など前兆活動がある」としていますが、「2000年の時のように避難に十分な時間があるとは限らない」として、余裕があると考えていると困ったことになる恐れがあると話しています。

高齢化というのは、取材した洞爺湖町だけではなく、どこの町でも抱えている問題…。
いざというときに、誰も取り残さず避難できるように社会全体で考えていかなくてはいけません。

【特集】“じぶんごと”防災

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年3月31日)の情報に基づきます。

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