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新国立劇場に緑球6万個が落下~パリ・オペラ座『PLAY』が奇跡の東京上陸! エクマンのコメント動画も到着

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『PLAY』日本公演・公式画像(ゲネプロにて撮影)-

いま世界のダンスシーンにおいて最も異彩を放つコレオグラファー、アレクサンダー・エクマン。昨夏(2024年8月)にパリ中心部のコンコルド広場で行なわれた「パリ・パラリンピック」開会式で、トーチを掲げたダンサー達による「ボレロ」など、鮮烈な群舞の数々を記憶されている方々もおられようが、その栄えあるセレモニーの演出・振付を担当した男である。

そのエクマンが、2017年パリ・オペラ座のために創作し、パリっ子達を大熱狂させたコンテポラリー・バレエ作品こそ『PLAY』だった。北欧出身のエクマンは、本作の成功によってパリの芸術シーンを語るうえで不可欠の舞台クリエイターとなり、パラリンピック開会式を任されるに至ったのである。

6万球の緑の雨が降るパリ・オペラ座の話題作「PLAY」

『PLAY』は、2017年12月、パリ・オペラ座 ガルニエ宮にて世界初演。2024年12月~2025年1月には同劇場で久々の再演がおこなわれた。バレエ団の至宝ともいうべき特別な作品だけに、これまで門外不出扱いだったが、このほど初めてオペラ座の外に出ることとなった。しかもその上陸先が、なんと極東の地・日本!

そんな奇跡のような公演が、2025年7月25日(金)18:30、新国立劇場 オペラパレスで遂に開幕する(7月27日迄上演、全5回)。初日前夜にはその総通し稽古(ゲネプロ)も行なわれ、東京初日に向けた準備万端ぶりが、筆者を含む多数の見学客によって確認された(舞台写真参照)。

『PLAY』日本公演・公式画像(ゲネプロにて撮影)- Photo by Fukuko Iiyama

本作は、タイトルの通り、“遊び”“遊戯”を主題にし、“遊び”とは何か、という思索やメッセージが随所に散りばめられたパフォーマンス作品である。童心に帰っての純粋な“遊び”の精神の大切さが描かれる一方で、純粋に遊んでいられなくなる大人社会の憂鬱な事情も対比的に描かれたりする。「遊びをせんとや生まれけむ」(『梁塵秘抄』)を口遊(くちづさ)みたくなる向きもいらっしゃるかもしれない。

『PLAY』日本公演・公式画像(ゲネプロにて撮影)- Photo by Fukuko Iiyama

エクマンの基本的特徴は、大胆な奇想で人を驚かせたり笑わせたりすることだ。シュールレアリスティックな形状のキャラクターがナンセンスな身振りを繰り返す。まるで夢の中の世界にいるかのよう。そしてエクマンといえば、何といっても過剰な物量作戦。『PLAY』の代名詞というべき、6万個の緑色ボールが激しく降り注ぐシーンは、やはり生で体感しないわけにはいかない。

『PLAY』日本公演・公式画像(ゲネプロにて撮影)- Photo by Fukuko Iiyama

『PLAY』は過去に日本でも、その公演映像をBSテレビ放送や映画館で観る機会が何度かあった。それだけでも魂を揺さぶられるに充分ではあった。しかし、パリ・オペラ座の壮大なプロダクションが、生で上演されるとなれば、受け止める気持ちとしても格別なものがある。

『PLAY』日本公演・公式画像(ゲネプロにて撮影)- Photo by Fukuko Iiyama

あまりにも有名な6万球の落下シーンはもちろんだが、それだけでなく、パフォーマンス、美術、衣裳、など見どころはふんだん。世界最高峰バレエ団の選ばれたるダンサー達による卓越した身体と舞踊をまのあたりにできるだけでも身の引き締まる思いがするけれど、舞台全体を“動く現代アート作品”として眺めても、恍惚とさせられる。そして、エクマン作品に欠かせない作曲家ミカエル・カールソンの音楽を、ミュージシャン達や歌手がプレイするのを劇場で直に聴くことも、貴重このうえない体験といえる。

『PLAY』日本公演・公式画像(ゲネプロにて撮影)- Photo by Fukuko Iiyama

さらに会場ロビーでは、公演パンフレットや、緑色ボールの写真が装飾された『PLAY』のTシャツが販売される。滅多に観れる上演ではないので、パリ・オペラ座『PLAY』をとことん遊び倒す心持ちで、観劇に臨んではいかがであろうか。各ステージ各開演時間の60分前より、当日券売り場にて販売あり。

さて、このほどパリ・オペラ座と共に来日したアレクサンダー・エクマン様の、新国立劇場バックステージにおけるありがたいコメント動画が届いたので是非ご覧いただきたい。

パリ・オペラ座『PLAY』振付家・アレクサンダー・エクマンのスペシャルインタビュー動画 - Movie by Masashi Koike / STROBE RUSH Inc.

ここで改めてアレクサンダー・エクマンの足跡を振返る。エクマンは、1984年スウェーデン・キスタ生まれ。1994年から2001年までスウェーデン王立バレエ学校に学び、 スウェーデン王立バレエ団(2001年~2002年)、NDT2=ネザーランド・ダンス・シアターII(2002年~2005年)、クルベリ・バレエ団(2005年~2006年)でのプロダンサー経験を経て、弱冠21歳にして振付家に転進した早熟の天才である。

2010年にNDT2で発表した『Cacti』は、世界中のダンスカンパニーによって上演されるなど注目を浴び、2013年に同作は英オリヴィエ賞にもノミネートされた。2012年には、やはりスウェーデン出身の作曲家ミカエル・カールソンと出会い、『Tyll』(スェーデン王立バレエ団)を皮切りに、以後、今回の『PLAY』を含む15作品で協業する盟友関係へと発展する。

2014年世界初演の『白鳥の湖』(ノルウェー・ナショナル・バレエ)も、(チャイコフスキーではなく!)ミカエル・カールソンがオリジナル音楽を書き下ろした新作バレエだった。上演に際しては6000リットルもの水を導入して、舞台上に本物の湖を作り出すという前代未聞のスペクタクル演出で世間を驚愕させた。彼の得意とする物量作戦、この作品では大量の水と共に大量の水泳帽のダンサーたち、そしてゴムのアヒル1000羽を登場させている。

2015年には古代異教的でグロテスクな狂騒の祝祭光景を描き出した『真夏の夜の夢』(音楽:ミカエル・カールソン)をスウェーデン王立バレエ団で発表し、忽ち大ヒットとなる。また、2016年ドレスデン国立歌劇場バレエで世界初演された『牛(Cow)』(音楽:ミカエル・カールソン)は、11人のダンサーが牛として振舞い、あらゆる人間生活を牛の行動に結びつけた異様な舞踊作品として巷をざわめかせた。

そして2017年世界初演の、パリ・オペラ座『PLAY』。エクマンの奇想とパリ・オペラ座の洗練を最高潮に融合させた本作は全上演回を完売させ、その大反響に呼応するかのごとく、収録された映像は世界諸国で上映されてきた。なお、エクマン舞台作品は、『PLAY』、『白鳥の湖』、『真夏の夜の夢』、『ESKAPIST』(2019年 スウェーデン王立バレエ)および映像作品『イングマール・ベルイマン-振付師の目を通して』(2016年)がブルーレイ化されている。また、『ハンマー』(2022年。エーテボリ歌劇場ダンスカンパニー)は過去にNHK-BSで放送され、その後NHKオンデマンドで暫くの間、配信されていた(現在は存在しない)。

2024年パリ・パラリンピック開会式(Opening Ceremony | Paris 2024 Paralympics | Paris 2024 Paralympics)の模様をはじめ、前述エクマンの振付作品の一部は、Youtubeで閲覧可能だ。

2024年パリ・パラリンピック開会式

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