【レポート】ミュージカル『アニー』2025 製作発表~40年目、新たなアニーが未来へつなぐ
【THE MUSICAL LOVERS】ミュージカル『アニー』第57回
【レポート】ミュージカル『アニー』2025 製作発表~40年目、新たなアニーが未来へつなぐ
2025年の丸美屋食品ミュージカル『アニー』(主催・製作:日本テレビ放送網/協賛:丸美屋食品工業)の製作発表会見が、2025年2月12日、都内で行われた。
日本テレビ主催によるミュージカル『アニー』は、1986年から日本での上演がスタートし、本年で40年目を迎える。世界大恐慌直後の1933年、真冬のニューヨークが舞台。誰もが希望を失う中、本当の両親が迎えに来る「明日」を信じて生きる孤児・アニー。そんなアニーをとりまく個性あふれる孤児たち、アニーによって変わってゆく大人たちが繰り広げるストーリー展開と、「Tomorrow」をはじめとする名曲の数々が、これまでのべ195万人を超える日本の観客に感動を与え続けてきた。また、これまで誕生したアニーは計74名にのぼる。2025年は4月19日(土)~5月7日(水)、新国立劇場 中劇場にて東京公演が行われ、夏には上田・大阪・金沢・名古屋での公演も予定されている。演出は山田和也、音楽監督は小澤時史、振付・ステージングは広崎うらんが担当する。
今回の製作発表に登壇したのは、2024年10月にオーディションで決まった新しいアニー2名(Wキャスト)と、大人キャスト5名だ。大人キャストは、続投キャストの2名と新キャスト3名、新たな『アニー』に期待が高まる。
<続投キャスト>
大富豪ウォーバックス役には、2017年から2021年まで(2020年は中止)、そして2023年・2024年にも同役を務めた藤本隆宏。
アニーたちが暮らす孤児院の院長ハニガン役には、2024年から同役を務める須藤理彩。
<『アニー』初参加の新キャスト>
大富豪ウォーバックスの秘書グレース役は、元宝塚雪組トップ娘役の愛原実花。本作が産後初の舞台復帰となる。
ハニガンの弟ルースター役は、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー‼』〝飛翔〞のメインキャストとして俳優デビューし、舞台や映画で活躍する赤名竜乃介。
ルースターの恋人リリー役は、ミュージカル『町田くんの世界』や、ラジオレポーターを務めるなど幅広く活動し、農業系Rock Musical『いただきます!~歌舞伎町伝説~』の公演を8日後に控える浜崎香帆。
<アニー役>
チーム・バケツ アニー役の丸山 果里菜(マルヤマ カリナ。9歳・小学校4年生・東京都出身)は、主な出演作に、ミュージカル『冒険者たち~この海の彼方へ~』渚役(2024年)がある。2022年の『アニー』を観劇後から毎年オーディションを受け続け、今回3回目の挑戦でアニー役を掴んだ
チーム・モップ アニー役の小野 希子(オノ キコ。10歳・小学校4年生・東京都出身)は、主な出演作に、ミュージカル『冒険者たち~この海の彼方へ~』カリック役(2024年)がある。2023年の『アニー』を観劇後からオーディションを受け、今回2回目の挑戦でアニー役を勝ち取った。
■『アニー』を支えつづける主催・協賛
ミュージカル『アニー』の日本版が40年もの長きにわたり続いてきた背景には、確かな支えがある。その一つが主催の日本テレビ放送網株式会社だ。1986年の初演以来、変わらぬ情熱でこの作品を守り続けてきた。
日本テレビ放送網株式会社 取締役 常務執行役員の澤 桂一氏は、「アニーは今年40年目という節目の年を迎えます。長く続けることは本当に素晴らしいと同時に、大変なことでもありました。会場の変更、新型コロナウイルス感染症の影響での中止や短縮バージョン等を余儀なくされたこともあります。それらを乗り越え長年にわたって続けられたのは、出演者やスタッフの皆さん、『アニー』ファンの皆さん、何より多大なるご協力をいただいております丸美屋食品工業様のおかげであり、改めて感謝を申し上げます。
さて、最近の『アニー』トピックスは、何といいましても最近ではアンナ・サワイ(澤井杏奈)さん。2004年にアニー役を演じた彼女が『SHOGUN 将軍』でゴーデングローブ賞の主演女優賞を受賞されたというニュースでした。もちろん彼女だけでなく、『アニー』出身の方々が各方面で活躍されているニュースも耳に届きます。長くやっているご褒美みたいなものだと、本当に嬉しく思っている次第です。
今年のミュージカル『アニー』は、2人のアニー、孤児たち、ダンスキッズ、合計26名の元気な子どもたちが決定しております。そして大人キャストは、藤本さん、須藤さんに加えまして、愛原さん、赤名さん、浜崎さんという3名のフレッシュな方が加わり、山田演出の下、今年もどんな『アニー』ができるのか、今から大変楽しみです」と語り、長年続く『アニー』から生まれた芽がさまざまな場所でも花開き続けることを寿いだ。
また、2003年よりミュージカル『アニー』に協賛し、今年で企業協賛23年目となるのは、丸美屋食品工業株式会社だ。
丸美屋食品工業株式会社の阿部豊太郎 代表取締役社長は、「日本テレビ主催での『アニー』が日本公演をスタートさせて40年目です。私どもの協賛は、その半分ちょっとの23年ですが、この間に日本テレビさんが大変努力されてロングランとし、歴史のあるミュージカルに育てられました。今年も『アニー』に協賛させていただくことになり、大変光栄に思っております。
40年の間に、『アニー』の子役を卒業されて世の中に巣立っていかれた方が、各方面で活躍されていると思います。今年のいいニュースとしては、さっき澤さんもおっしゃった澤井杏奈さんが『SHOGUN 将軍』で主演女優を務められ、いくつも賞を獲ったということ、我々も協賛会社、『アニー』のグループの一員として大変嬉しく、誇らしく思っています。
40年間、さまざまなことがあっても、オーディションシステムも含めて日本の社会になくてはならない公演として根を下ろした。そのオーディションシステムで、今年も大勢の子役の皆さんが応募し、そこで選ばれた才能豊かで可能性のある皆さんが、今年も元気のいい舞台を作り、また第二の澤井杏奈さんも生まれると期待しております。私たちも、楽屋裏、稽古場に十分に差し入れ、供給をさせていただきます。4月からの元気のいい舞台にご期待ください」と、いつ小腹が空いても安心な態勢で舞台を支える。
続いては、いよいよ出演者たちの登場だ。まずは大人キャスト、ウォーバックス役の藤本隆宏、ハニガン役の須藤理彩、グレース役の愛原実花、ルースター役の赤名竜乃介、リリー役の浜崎香帆が、それぞれ舞台衣裳をまとって現れる。次は、主人公アニー役2名(Wキャスト)の登場だ。司会者である滝 菜月アナウンサーの紹介で、<チーム・バケツ>アニー役の丸山 果里菜と、<チーム・モップ>アニー役の小野 希子の名が告げられると、それぞれ「ハイ!!」と元気よく登場した。
■大人キャストの意気込み
大富豪ウォーバックス役を演じる藤本隆宏は、演出が山田和也に変わった2017年から2021年(2020年は全公演中止)、そして2023年、2024年も同役を務めた。7度目の出演で"ミスター・ウォーバックス"とも呼ばれる藤本は、「昨年は須藤さんもご一緒でしたが、ほかの大人キャストは初めてです。しかも須藤さんとは舞台上で一瞬しか会わなくて(須藤「しかも最後の最後までお預け状態です」)、他のメンバーはがっつり共演するので、新たな気持ちで、初心を忘れず演じていきたいです。今年は40年目、そういう大きな節目の公演に立たせていただけることも嬉しく思っています。『アニー』という作品が持つ魅力、ずっと支えてくれた『アニー』ファンの方々、協賛の皆さま、これまで関わられたスタッフ・キャストの皆さま、特にウォーバックス役は多くの先輩方が代々演じられています。私もしっかりバトンを受け継げるよう、40年だけではなく50年、そして100年と続く作品になるよう、先輩ウォーバックスを演じていきたいと思っています」と、新たな気持ちで臨む決意を語った。
孤児院の院長ハニガン役の須藤理彩は、2024年から同役を続投する。「昨年に引き続きハニガンを任せていただける、これは本当に大変光栄なことです。役者にとって同じ役を任されるのは一番のご褒美と思っているので、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。去年よりもさらに憎たらしく、怖くて、嫌なハニガンを作りたいと思っています」と述べると、前列のアニー2人が震え上がる。
それをフォローするかのように、藤本が、「須藤さん、本当は優しいんですよ。子ども大好きで、バックヤードではすごくニコニコしているんです。舞台に立つと急に怖い顔になる」。そのギャップが大きすぎて、舞台上で藤本が吹き出す場面もあるそうだ。そんな須藤のハニガンを、「面白くて大好きです」と藤本は太鼓判を押す。須藤も、「トラウマにならないぐらいで大暴れしたいと思います」とつなぎ、「40年ということですが、初演の時から1公演ずつ積み重ねてきての今だと思うので、私たちもまた来年にいいバトンをつなげられる素敵な公演にしたい」と爽やかにパワーアップを誓う。
ウォーバックスの秘書グレース役を演じる愛原実花は、「歴史のある素晴らしい作品に参加させていただくこと、とても嬉しく思います。初参加ということで、少し緊張もしていたんですけれども、先ほど共演者の皆様とお話しさせていただき、とても楽しい雰囲気になりそうな気がして、今から楽しみにしております。その雰囲気をお客様にもお届けできますように、私自身も精一杯頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」と、グレースのように品格ある口調で述べた。
ハニガンの弟ルースター役を演じる赤名竜乃介は、「40年目を迎える歴史ある作品に携わることができ、本当に光栄に思います。幅広い層に愛されている『アニー』の魅力を全部お届けできるよう、しっかり役に向き合って本番を迎えたいと思います」と、役者としての矜持を語った。
ルースターの恋人リリー役を演じる浜崎香帆は、「私個人として、悪役は初めての挑戦になるので、秘めているイタズラ心を出す時が来たな、とすごくワクワクしています。悪役といっても、やっぱり芯のある強い女性だと思うので、そういう部分も出し、リリーらしい愛らしいところもいっぱい引き出せるように頑張りたいと思います」と、芯のある女性としてのリリー像を目指すことを明かした。
■同級生同士、共演経験もある2人のアニー
さて、いよいよアニーの出番だ。2025年2月現在、2人とも小学4年生である。2024年のミュージカル『冒険者たち~この海の彼方へ~』では共演経験もある。
アニー役に選ばれたことについて、丸山は、「本当にアニーなの?ってくらい、びっくりして嬉しかったです。最初は信じられなかった」とのことだが、今は実感が湧いてきているそうだ。
小野は、「(呼ばれたことを含め、いろいろ)分かんなくなっちゃって。でも呼ばれた時は、すごく嬉しくて自然に涙が出てきちゃいました」とのことで、周りからも沢山「おめでとう」と言われたそうだが、誰にどんな言葉をかけられたかは、緊張して覚えていないそうだ。
どんなアニーを目指しているか問われると、丸山は、「前向きで、明るさ100パーセント!のアニーを演じたいです」と答え、衣裳姿の大人キャストには、「すごい素敵で、今からもう(本番に向け)ワクワクしています」。小野は、「明るくて元気なだけじゃなく、悪さや面白さもあって、ずる賢くて、とても可愛いアニーになりたいです」と答え、衣裳姿の大人キャストには、「迫力がすごすぎて。去年までは舞台や写真でしか見られなかったけれど、今この近くで見れるのが不思議で、とても嬉しい」。小野の「迫力」という言葉に、「私のことですか」とすかさずツッコむ須藤ハニガンが面白い。
藤本は、アニー2人の衣裳姿を見て、「もう、すごく似合ってますよね。ビロードの素材を使っているんですけど、縦と横があって、横の素材が、実は緑色も入っているらしいんです。今年の2人がちょっと小柄なので少しシャープにして。それがもう2人にぴったりで、今からじゃあ、踊ろうか!、って。今すぐ舞台に立ちたいような気持ちにさせるくらい、すごく似合っていると思います」と、饒舌に語った。
■演出・山田和也からの手紙
ここで演出の山田和也からの手紙が紹介された(下記に全文掲載)。
【山田和也からの手紙】
丸美屋食品ミュージカル『アニー』2025/製作発表に寄せて
丸美屋食品ミュージカル『アニー』が40周年を迎えます。40年……ちょっと気が遠くなるような年月ですが、40年前、皆さんは何をしていらっしゃいましたか? 私は大学を出て、この世界に飛び込んだばっかりの「駆け出しの裏方」でした。演出を仕事にするようになるのはもっとずっと後のことです。
40年間にはいったい何人の子供たちが『アニー』に出演してくれたのでしょう? 40年ですから、もう大人になり、子供を連れて『アニー』を観に来てくれた「元」子供たちも少なくないでしょう。オーディションを受けに来てくれた子供たちの数は40年で……それこそ数万人? ……でしょうか?
そんな『アニー』を大好きな皆さんに支えられた40周年です。子供たちは1年で次の子供たちと交代ですが、私たち大人はもう少し長く続けさせてもらえるので、『アニー』の演出家は40年の間に私でまだ3人目です。ちょっと不公平……かも知れませんね。
それはともかく、これからも『アニー』のことを応援していただけると嬉しいです。50周年の時に演出をしているのはきっと4人目の演出家でしょうが、私もいつまでもいつでも応援しています(できることなら100周年まで)。
演出・山田和也
須藤は、「40年という時の流れ、1日1日という積み重ねの40年、ということがものすごく感じられる手紙ですよね。昨年は本番中に2000回公演を迎えたんです。その時も1年1年というより、1回1回の積み重ねを感じました」。
40年前は何をしていましたか、という問いに対して、須藤は、「8歳ですね。鼻水だらけで公園で遊んでたヤンチャな女の子で。(藤本に)どうでしたか?」と問うと、藤本は、「私? 何やってましたかね。泳いでました」。須藤「そこからオリンピックに」と話が弾む。40歳以上限定の語りになったことで、藤本が赤名・浜崎に気遣い、「まだ生まれてないよね?」と問うと、愛原も「私も生まれてないです」とお茶目に乗っかった。
■メインビジュアル&「♪Tomorrow」初披露!
ここで、2025年の『アニー』メインビジュアルが発表された。
丸山「すごい嬉しい。初めて見た」、小野「端っこにサンディがいるのが可愛い」、藤本「めちゃくちゃ良くないですか?」愛原「おしゃれな感じですね」須藤「ポップなハートのペンダントもあって(アニーが劇中、首から下げているもの)」、赤名「40周年の『0(ゼロ)』もハートになってます」、浜崎「実感が湧いてきました。あの『アニー』に出られるんだ!って」と、ひとしきり盛り上がる。
次にアニー2人が、初披露となる「♪Tomorrow」を歌唱。丸山から歌い出し、小野につなぎ、最後はハーモニーを聴かせた。初参加となる愛原は、「素晴らしくて、ちょっと泣きそうになってしまうぐらい、すごい感動してしまいまして。私自身も小さい時から観に行っていたので、こんな特等席で聴かせていただいて、目頭が熱くなってしまいました」。赤名も、「本当にここに向けてすごく練習してきたんだろうなって感じて、なんか、お父さんみたいな気分というか……本当に2人のこと、そして出演する沢山の子どもたちのためにサポートできればいいなと思います。そのためばかりじゃないんですけど、もっと頑張りたいなと、すごく思いました」と自分が悪役であることを忘れて心を打たれている。早くも共演者の心を動かす2025のアニーたちだった。
■2025年の公演に向けて
記者からの質問で、「チーム・モップ、チーム・バケツの仲間と仲良くなるためにやってみたいこと」を問われたアニー2人。チーム・バケツの丸山は、「名前を覚えるために、名前で鬼ごっこ」と述べ、チーム・モップの小野は、「ダンス」で仲良くなりたいと答えた。
次いで、アニーの名刺代わりである「♪Tomorrow」以外に、好きな曲・好きな場面は?と問われた出演者たち。
まず、「♪N.Y.C.」を挙げたのは丸山、愛原、浜崎だ。丸山は、「ウォーバックスさんと一緒に外に出かけるっていうのが大好きでしょうがないです」。愛原は、「アニーの『ここで暮らしていたのに気づかなかった』という歌詞が、いつも見ていた街並みなはずが、一緒にいる人や心の持ちようによって全然違く見えると言っているのがすごく心に刺さった。また、ウォーバックスさんの歌詞で『クールでタフなやつ』って、街のことを、人みたいに『タフなやつ』と表現しているところが、本当に今自分の住んでいる街を愛している感じが伝わってきて、すごく好きな曲の一つです」。浜崎は、「昨年の『「アニー」クリスマスコンサート』を拝見させていただいたとき、藤本さんの『N.Y.C.』を初めて生で目の前で観て、一気に『アニー』の世界観に引き込まれて涙が出てきてしまって。ウォーバックスさんの人の良さとか男らしさはもちろん、儚さっていうのも感じた部分があって、すごく魅力的な曲だなって思います」。
「♪フリードレス(Fully Dressed)」を挙げたのは小野。アニー以外の孤児たちが歌って踊るナンバーで、「面白くって、見ていて楽しい。私も出たかったです」。
「♪Easy Street」を挙げたのは藤本と赤名。藤本は、「ハニガン、ルースター、リリーによる、この曲がカッコ良くて大好きです。我々は舞台の左右を使うことが多いんですが、この曲は奥行きも全部使って、照明もパッと変わってスポットライトが当たって、ザ・ブロードウェイ・ミュージカル、っていう感じの曲なんです。いつも魅入っています」という(ちなみに藤本は、序盤(ウォーバックスの出番前)の子どもたちによる「♪Maybe」「「♪Hard-Knock Life」「♪Tomorrow」も大好きだが、「大好きすぎて泣いてしまうため観られない」のだそうだ)。赤名は、「ただ悪巧みをしているような曲ではなく、ハニガンやルースターのこれまでの生い立ちなども歌詞に表されているので、練習していて身も入ります」。
持ち歌である「♪Little Girls」を挙げたのは須藤。最初に歌う「子ども、子ども」というフレーズは感情を乗せやすいそうで、「これまで溜まってきた鬱憤をこの歌に込めて歌える」と感じ、子どもたちをバックに従えて歌うことが、「クセになるほど楽しかった、やめられない」「ミュージカルに立つって、こういうことだ!」と実感したのだそう。「この曲をもっともっとうまく歌い上げることを目標に1年間過ごしてきたので、またさらにグレードアップできるようにしたいと思います」と意気込む。
「40年目ということで、大人になったかつての子どもにどう『アニー』を楽しんでもらいたいか。また、長年続けていること」を問われた大人キャストたち。
15歳から身体を鍛えている藤本は、「2017年から演出が山田和也さんに変わった。2016年まではある程度(難しい部分を省く等で)子ども向けの作品にしていたのですが、これは1977年のブロードウェイのトニー賞を獲った作品なのだから、と、(曲もセリフも)オリジナルに戻したんです。だから、子どもでは理解できなかったことが大人になって分かるという要素もたくさん散りばめられているし、何歳になっても子どもの感覚と大人の感覚は違うと思うので、そこも楽しんでいただければと思います」と、ブロードウェイ作品である『アニー』としての魅力を語った。
幼稚園の時から「自分は人よりも足が速い」と気づき、陸上のみならず水泳、剣道、今はヨガなど、スポーツを続けてきた須藤は、「うちの娘は、上の子が18歳なんですけれども、小学校低学年で観た時と、昨年自分が大人目線になって観たのでは、まるで違う作品だったと言っていました。10年ぐらいでまるで違う目線になれる、すごく魅力的な作品なんだと私も改めて感じたので、長く愛されている理由は、そういうところにもあるのかな、と感じます」と、月日を経ても新しい発見ができる舞台であることをリアルに語った。
舞台や映画を観に行くことを愛好し続けているという愛原は、「本当に小さい時から青山劇場に毎年のように観に行っていて、自宅のベッドの上でアニーごっこをして憧れていた作品です。『アニー』の時代背景としては大恐慌の直後、とても厳しい時代だったと思うのですが、現代に置き換えて、先の見えない変化の時代でも、どんな恐怖であっても、アニーのように前を向いて必ず明日を信じる力を、今の子どもたちにも感じていただけたら」と、どんな時代でも困難を乗り越える力が湧き出る舞台であることをを願う。
小学生の頃から毎日腕立て伏せと腹筋を欠かさない赤名は、「今回『アニー』に出演することが決まったら、子どもを連れて行きたい、って言ってくれる親戚がすごく多くて。僕も子どもの時に『アニー』を観ることができていたなら、どんな気持ちになっていただろうって考えることが多い。大人になったら感想も全然違ったりすると思う。僕はお金儲けを企む悪役なんですが、それ以外にもウォーバックスさんとアニーのプライスレスな出会いや縁の大事さ、そんな『アニー』の魅力を幅広い層に届けられたらいいなって思います」と、縁を持って出演者に選ばれたからには、何歳からでも楽しめる作品を届けることを誓っていた。
毎朝納豆を食べ、健康第一の浜崎は、「小さい頃、とある舞台を観に行ってこの世界を目指すようになった。子どもがこの世界を目指すきっかけとなってくれたらすごく嬉しいし、そういった子たちと何年後、何十年後かに共演できたら、なおさら嬉しい」と、客席から未来のスターが生まれることに期待を寄せた。40年目の節目を迎えた本作は、これまでの伝統を大切にしながらも、新たな輝きを放つ舞台になるだろう。
丸美屋食品ミュージカル『アニー』は、2025年4月19日(土)~5月7日(水)、東京・新国立劇場 中劇場にて計27回上演予定。夏には上田・大阪・金沢・名古屋での公演も予定されている。前売りは2025年2月15日(土)午前10時より開始、土日祝料金:11,000円(税込)・平日料金:8,500円(税込)。平日は2,500円お得となる。
なお、ルーズベルト大統領(SPICEでの連載表記は、ローズベルト大統領)は森田浩平。1987年に日本テレビ主催『アニー』にて大人アンサンブルで出演しており、2022年に上演されたミュージカル『春のめざめ』では、栗原沙也加(2007年アニー役)、中原櫻乃(2010年アニー役)とも共演している。
大人アンサンブルキャストは、鹿志村篤臣、後藤光葵、後藤裕磨、望月 凜、八百亮輔、矢部貴将、AYAKA、岩矢紗季、江崎里紗、近藤萌音に決まった。
『アニー』は40年間、多くの人々に希望を届けてきた。その間、日本や世界では災害や悲しい出来事、不況など、さまざまな困難が続いてきた。新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年は全公演が中止、2021年も新国立劇場での公演は初日のみで幕を閉じるなど、舞台に立つことすら叶わない時期もあった。それでも『アニー』は、どんな時代でも「Tomorrow(明日)」を信じ続けてきた。
そして40年目を迎える2025年、新たな挑戦として、舞台手話通訳付き公演が実現する。対象は4月24日(木)12時公演と4月27日(日)16時30分公演。通訳を務めるのは、現在上演中のミュージカル『SIX』で、躍動感あふれる手話表現で観客を魅了している田中結夏。40年目の『アニー』は、これまで以上に多くの人へ「明日はきっと良くなる」というメッセージを届ける舞台となるだろう。
ちなみに、『SIX』の翻訳・訳詞を手がけたのは、『アニー』の「フーバービル」訳詞を2017年から担当している土器屋利行だ。そしてその舞台(『SIX』)には『アニー』から巣立った皆本麻帆(2001年アニー役)、豊原江理佳(2008年アニー役)も出演している。アニーのDNAを継ぐ俳優たちが、さまざまな場所で活躍している。それを楽しむのもまた、長年続く作品が作り出すご褒美なのかもしれない。
取材・文=ヨコウチ会長 ※転載・転用禁止