日本企業のOJTに存在する「6つの不足」とは? Z世代への評価にも要注意 民間調査
人材不足や時間不足などの構造的な問題に加え、属人的で教育の品質にバラつきが出るなどの組織的課題が顕在化する中、従来のOJT(On the Job Training)では対応しきれない局面が増えている。パーソル総合研究所(東京都港区)は1月14日、OJTに関する調査結果を発表し、教える側・新人側双方に求められる行動や意識、構造的な問題を明らかにした。
OJTの課題は企業や組織の構造的な課題から
同研究所では、近年のOJTの課題を次のように分類している。
構造的課題が生む「3つの不足」
・効率重視・短期的な成果主義による「時間不足」
・人材不足や年齢構成のゆがみによる「お手本不足」
・仕事に対する価値観の世代間ギャップが生む「共通前提の不足」
組織内(教える側)の課題が生む「3つの不足」
・ハラスメントを回避する「踏み込み不足」
・属人的で無計画な「ツール不足」
・教える側の情報共有の「共有の不足」
調査では、これら6つの「不足」によって、新人のパフォーマンス低下や、組織へのなじめなさ、新人の主体性の欠如などの問題が発生していると指摘する。
思ったより成長したい意志が強い? Z世代の過小評価に警鐘
新卒新人(Z世代)の就業意識の実態に関して、新人本人に聞いた実態と、教える側の(新人への)予想を見たのが以下のグラフとなる。教える側の予想以上に新卒新人の意識が強く、ギャップが大きい項目は以下の通り。
・経済的な成長を重視する
・一度就職したら定年まで勤めたい
・会社のために貢献することが重要
この点から調査では、新卒新人が教える側が思う以上に「長期雇用重視」「(社会貢献よりも)経済成長重視」「会社貢献意識が強い」と分析。教える側が、Z世代を過小に見積もっている恐れがあると指摘する。
一方で、仕事の単調さや成果主義傾向、多忙さは、新人の「没個性化」を招いていることも示唆。既存の従業員のまねをさせるような指示や、厳しい指導が没個性化につながることも明らかにした。
新人のOJT 有効的な教え方は?
では、どのような教え方がOJTで有効となるか。調査では、新人のパフォーマンスを高める指導方法として効果的な対応を、以下のように分析している。
勇気づける
・仕事ぶりを褒められたり励まされたりした
・仕事を積極的に任せていた
・質問やわからないところについての発言を促した
位置づける
・まず、担当業務の全体を理解することを重視した
・今のスキルや経験がどの位置にあるのか把握させていた
・簡単な作業から徐々に複雑な業務へと進んでいった
跡づける
・短期・中期・長期とそれぞれの目標を設定しながら進めた
・業務手順書やチェックシートなど、OJT専用のツールを使った
・定期的なアンケートやサーベイがあった
振り返る
・行動や結果に対して、具体的に良い点と改善点を伝えていた
・定期的に振り返りの機会が設けられていた
また、OJTにあたって教わるネットワークが広く、1人に対して複数人で教わっているほどに、パフォーマンスや組織社会化(社内の人間関係・歴史の理解、業務上の知識やスキルの習得、全体に対する自分の役割の理解)にプラスになることがうかがえた。このことから、教える側が、新人に人と「出会わせる」行動を与えることによって、新人のエンゲージメントにプラスの効果を与えるとする。
同調査は、男女20歳から59歳の正社員で、最近3年以内にOJTを受けたことのある4000人を対象に、2024年10月にインターネットで実施された。詳細は、同研究所の公式リリースで確認できる。