新婚26歳の会社員だった私が、アラブ航空会社CAに転身した理由。夫に「1年だけ」と約束しUAE移住。
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、会社員としてはたらくも、「人生のやりたいことリスト」をかなえるために アラブでキャビンアテンダント(以後CA)に転身した方のストーリーをご紹介します。
新卒で医療系ベンチャー企業に入社した青松里香さんは、友人に誘われたドバイ旅行をきっかけにアラブの航空会社に転職し、CAに転身。その経験を振り返り、noteに投稿しました。
※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「私の転身ストーリー。会社員から外資CAへ」から抜粋したものです。
「君、面白いね」。ありのままの自分をさらけ出したら就活がうまくいった
新卒から勤めた会社を辞め、26歳でアラブ首長国連邦の航空会社にCAとして転職した青松さん。とてもユニークなキャリアの持ち主ですが、大学生の時には、他の学生と並んで就職活動に勤しんでいました。
そんな就職活動中のある日。駅からグループディスカッション会場に向かう途中、ふと周りを見渡すと、そこにいたのは真っ黒なスーツに身を包み、淡々と歩く学生だらけ。自分も同じように真っ黒なスーツを着て、個性をできるだけ消して歩いていることに、急に違和感を覚えます。
私はこの何百人の中の一人に埋まっていってしまうのだろうか。会社の色に染まって、自分の個性が消えてしまうのでないか。
私の転身ストーリー。会社員から外資CAへ より
それまでは、志望動機を捻り出すようにエントリーシートを書いていた青松さん。この違和感に気付いてからは、「ありのままの自分」で就職活動と向き合うようになります。
そこで、もともと就活の軸としていた、「自分自身のためだけでなく、社会や企業など、全方位に貢献ができるビジネス」に加え、「自ら企業文化をつくっていける企業に入りたい」という想いが固まりました。すでにある会社に染まることに不安を持っていた青松さんにとって、成長段階の企業で一緒に文化をつくっていけることは、大きな魅力でした。
この2つを軸にするとともに、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を並べて、自分と企業の共通点を見つけるようなやり方でエントリーシートを書くのはやめました。
こうしてありのままで臨んだ、医療系ベンチャー企業の最終面接。当日話した内容はあまり覚えていないそうですが、面接官が「君、面白いね」と言ってくれたことは印象に残っていると言います。「ありのままの自分として会社に受け入れてもらえたのだ」と嬉しくなったそう。
その後、この企業で無事内定が決まり、新卒で入社することになります。
「やりたいことリスト100」と向き合い、CAの道へ
学生時代最後は、卒業時期とコロナウイルスの流行が重なり、卒業式は中止。青松さんの社会人生活は、オンラインでの入社式から幕を開けました。
1年目は経営企画部に配属になり、クリニックや病院の経営や収支管理を担当します。しかし、もともと事業開発に興味があったことから、1年目の終わりに社内公募に応募。2年目からは事業開発室へと異動になり、充実した毎日を送っていた青松さん。ちょうど結婚をしたタイミングでもあり、仕事もプライベートも順風満帆だったと言います。
しかし、3年目に入ったころに「何気なく過ぎていく毎日になんとも言えない焦燥感」を覚えるように。業務を通じて得られるものは多い一方で、あまりにも生き急いでいる感覚があったのです。
時を同じくして、友人がドバイに語学留学にいくことになります。かねてより旅行が好きだった青松さんは、「遊びに来てよ」という友人の誘いに、翌週には休みをとって飛行機に乗りました。
久しぶりの海外旅行。目に映るもの、流れる空気、出会う人々、すべてが新鮮でした。ドバイの空気を体いっぱいに吸い込み、生き急いでいる自分と向き合うようになっていきます。それはまさに「むくむくと冬眠から目覚めていく感覚」でした。
この旅行を経て、青松さんは人生計画の見直しに取り掛かります。
まず、青松さんは、企業の将来像として定めるVision(未来像)を、自分の人生にも設定しました。そこで改めて、Visionと自分自身がやってみたいDream(夢)は違っていいのでは、と感じ始めるのです。
「Dream」は違っても良いんじゃないか、visionに向かって最短距離でキャリア形成をしていくよりも、心踊る沢山の寄り道から起こる偶発性を楽しんでも良いんじゃないか、そんなことを思いながら20代後半の私の人生について思いを巡らせた。
私の転身ストーリー。会社員から外資CAへ より
そうして引っ張り出したのが、大学生時代に書き出した「人生のやりたいことリスト100」。その中にあった「世界131か国に行く」「旅するようにはたらく」のふたつを叶えるなら今しかないと、会社を退職すると同時に、アラブの航空会社へエントリー。青松さんは、迷いなく夢に向かって邁進します。
就職活動でも役に立った持ち前のリサーチ力で綿密に戦略を立て、「絶対合格したい!」という気持ちで臨んだ航空会社の試験。努力が実を結び、見事合格を掴み取ります。
結婚して間もないタイミングでしたが、「今しかできないから、1年だけやる」と夫に約束。「自分の人生のハンドルを自分が握っている」感覚に胸を躍らせ、アラブへと旅立ちました。
︎「本当にこの選択をして良かった」。厳しいトレーニングを乗り越えた先に出会った、CAの本当の面白さ
アラブに到着してすぐ青松さんを待ち受けていたのは、厳しいCAのトレーニングでした。
トレーニングは思った以上に大変だった。いや、予想していた10倍は大変だった。行く前にある程度調べてはいったものの、なんとかなるだろうと思っていた能天気な私の心を見事にへし折り、トレーニング期間に何度泣いたか数える方が難しいくらいであった。
私の転身ストーリー。会社員から外資CAへ より
そんな厳しいトレーニングを乗り越え、晴れてCAとしての仕事がスタート。必死にはたらくうちに、「飛行機は、人々の人生において、特に印象深い思い出になる場所」であることを実感します。
新婚旅行で最高にハッピーな人、早く家族や友人に会いたいとわくわくしている人、留学や海外就職など親しい人たちと離れる寂しさや不安でいっぱいな人。たった数時間、数十時間のフライト、だけどその時間にその人たちが感じる感情は人生においても非常に大事な瞬間。そんな瞬間に立ち会えることの素晴らしさを、この仕事に就いて初めて感じることができた。
私の転身ストーリー。会社員から外資CAへ より
また、空港の出口で飛行機から降りて来る人を迎える側にも、さまざまなストーリーや想いを感じ、目頭が熱くなることも。「国境を越えて仕事がしたい」とCAへの道を選んだ青松さんは、国境を越えたたくさんの人との出会いを通じて、がかけがえのない時間を経験したのでした。
「心躍る」感覚を大切に。自分の決断に感謝できる人生を送りたい
2024年4月。青松さんは1年間のCA生活を終え、日本へ帰国しました。
「この1年は、人生におけるどんな1年とも比較にならないくらい、得たものも人生への影響も大きかった」と振り返ります。就職活動で「ありのまま」を大切にしたように、社会人になってからも自分自身の心の声と向き合うことで、今しかできない決断と経験を手にしたのです。
目標や描くキャリアに向かう最短距離ではないかもしれない。それでもあえて「心踊る寄り道」をすることで、新たな道が切り開ける。青松さんの経験は、私たちが忘れがちな「寄り道」の大切さを教えてくれました。
<ご紹介した記事>「私の転身ストーリー。会社員から外資CAへ」【プロフィール】青松里香1年間、中東の航空会社で客室乗務員として勤務。現在は帰国し会社員として仕事をする傍ら、ライターとして活動をしています。
(文:田口愛)