「我を忘れる」という経験をしたことがなかった私を“変化させたもの”
潜在意識インタビュアーkahoのコラム【良い人生は後から】 「良い花は後から」ということわざがあります。先に咲いた花よりも、後に咲いた花の方が美しいという意味を持つこの言葉。人生も同じだと思いませんか? 酸いも甘いも経験した40代頃からのほうが人生の豊かさを感じられるようになります。そんなことを意識しながら生きているkahoが日々思うことをお届けします。
”我を忘れる”ことがない人生
先日、娘が推しているグループのライブに出かけた。人生に”推し活”がなかった私が、娘の影響で頻繁にライブに参戦している。
その日の座席は、2階スタンド2列目の席。1列目の人たちはライブがはじまっても立たなかったので、「ラッキー!」と思った。背が低い娘も座っても見られるし、何より私は、立ってライブを見るのが苦手なのだ。
推し活をしたことがなくても、好きだなぁと思うアーティストのライブに行くことはある。でも、できればステージは見えなくていいので座って聞きたい派だったりする。もちろん、雰囲気的に座っていられない場合は立って見ることもできるけど……。
ましてや、音楽に合わせて手を振ったり、リズムを取ったり、声を出したりするなんてことは一度もしたことがない。
そう。私はこれまでの人生の中で一度も、我を忘れるという経験をしたことがなかった。というか、できなかった。
例えるなら、我を忘れそうなタイミングになると必ず、斜め上くらいの位置にいるもう一人の私が、「やめなさい。みっともない」「そんなことはしちゃだめよ。恥ずかしい」と注意してくるような感覚を小さな頃から感じていたから。
ノリノリでライブを楽しんでいる友人が、「ほら! kahoも!」と言ってきて、一瞬腕を挙げようとするのだけど、俯瞰しているもう一人の私が、「みっともないわよ」と言っているような気がして動きが止まる。そんな感じで生きてきた。
プロレス観戦で知った新しい自分
その翌週、友人に誘われて人生初のプロレス観戦に出かけた。
全日本プロレスが開催する、「エキサイトシリーズ2025」東京・エスフォルタアリーナ八王子 メインアリーナ ~めだかやドットコムpresents~。
プロレスを見に行く日が来るなんて夢にも思わなかったし、行ったところで楽しめる自信もなかった。けど、これも何かのご縁だと思って出かけた。
そして私はそのプロレス観戦で、全身で悔しがったり、喜んだり、選手に対して声を出して応援をするということを生まれて初めて体験した。
最初は、目の前で戦う姿に驚き、リングに倒れ込む音に怯え、びっくりしすぎて涙が出たりしたのだけど、見ているうちにだんだんルールのようなものが理解できてきてどんどん楽しくなっていった。
行く前に対戦カードを見て、「この選手、かっこいいな」と思っていた人が登場してきたときには、「やっぱり、かっこいい!」と声が出たし、その選手が追い込まれたときには、「いけーーーーー!」と叫んだし、負けたときには、「いやぁぁぁぁ!」という声が出た。全日本プロレスのMUSASHI選手。私の推し活生活がはじまってしまいそうな予感がしている。
何より、声を出して応援したり、「イケイケ~!」と手を振り回している自分に驚いた。「私、こんなことができるんだ! 私の人生に必要だったのは、プロレス観戦だったんだ!」と思った。
プロレス自体もおもしろかったけど、絶対できないと思っていたことが自然とできた自分がとても気持ちよかった。
新しいものとの出会いは前向きに
自分の気持ちに向き合うより先に、その感情を発散させたとき他人からどう思われるかばかりを気にして生きてきた後遺症とでもいうのだろうか。
私は、自分の感情を出すことが苦手だ。喜怒哀楽の喜と楽は出せるけど、怒と哀はなかったことにして自分の中の深いところへ封じ込めるようなクセがある。
これは、生きていく中でとてもバランスの悪いことだ。ポジティブな感情だけで人は生きられない。その逆も然りだけど。
とは言え、長く身についた怒と哀の感情の押し込みはなかなか直らない。そして気づけば、私の中には行き場をなくした怒と哀の感情がたまりまくっていた。
「怒りを発散させて」ということを、何度も人から言われたことがある。そう言われるたびに、「どうやって?」と思ってきた。感情の発散が苦手な私にとって、それはとてもハードルの高いアドバイスなのだ。
そんな私が、人生初のプロレス観戦で、感情の吐き出し方を発見することができた。いつも、斜め上から俯瞰している私が消えた。大きな声を出したり、足をバタバタさせたり、その瞬間の自分の感情を何も考えずにストレートに表現することができるようになったというのは、私の中で大きな変化だった。
帰宅後、夫に「楽しかった!」という話をしたら、「俺もプロレス観戦行きたいな」と言った。いろんな人に聞いてみたら、意外とプロレスを生で見たことがある人って少ないらしい。
人によって、抑えているものを発散させられる方法はそれぞれだと思うけど、「自分の感情を抑えがち」と感じている人にはプロレス観戦がおすすめだ。
格闘技だから、痛そうだし、目を閉じてしまうシーンもあるけども、選手たちはそれを見せるプロだし、見せ方をわかっている。
何よりも、帰り道の心の軽さがすごかった。ルンルン♪ 地面から足が浮いているかもしれないと思うくらい。
46歳にして新しい世界の扉を開けたら、自分にはできないと思っていたことが軽々できるようになった。まだまだ知らない世界がたくさんあって、そこに求めているものがある可能性はたくさんある。
何歳になっても、新しいものとの出会いは前向きに捉えたほうが良いと感じる経験をしたというお話。
潜在意識インタビュアーkaho/ライター