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伝統的な街並みに新たな文化拠点が誕生! 萩市「本と美容室 萩店」

山口さん

出版不況やネット販売などにより街なかからどんどん姿を消す書店。
そんな中、古い萩市の町並みに新しいセレクト書店がオープンしました。しかもただの本屋ではなく、なんと美容室と一体となった店舗なんです。
なぜ書店と美容室が一緒になったのか?そのあたりも含め取材してきました。

【写真はこちら】素敵な店内をもっと紹介

伝建地区に全国で2店舗目の「本と美容室」誕生

萩市の古い町並みが残る港町・浜崎地区。ここに今年6月29日にオープンしたのが「本と美容室 萩店」(山口県萩市浜崎町16番地)です。
このエリアは江戸~明治期の商家などが多く残っていて「重要伝統的建造物群保存地区」に選定。その1棟を活用してできた店舗です。

店舗に併設した駐車場はありませんが、150mほど北に無料駐車場がありますので、自動車でお越しの方はこちらをご利用ください。

古いガラス戸をガラガラと開けて中に入ると、時の流れを感じる広々とした空間に雑貨・書店・美容室のスペースが配されています。どこから見ていくかワクワクしてきますね。

迎えてくれたのは「本と美容室 萩店」を運営する、「アタシ社」代表のミネシンゴさん。写真から分かる通り笑顔が素敵な男性です。

神奈川県に本社がある「アタシ社」は、夫婦で共同経営するローカル発の出版社。「本と美容室」は、神奈川県の港町・真鶴町に1店舗あり、今回の萩店は2店舗目にあたります。

なぜ萩市に?と思いますが、2年前に萩の人から「萩市にも『本と美容室』をつくってほしい」という一通のメールを受け取ったことがきっかけだったそう。

実際に萩市を訪れるなどして興味を持ち始め、そしてこの度のオープンに結びつけたのだとか。

「ローカル」で見つけた良品たち

それでは、お店の中を順に紹介していきましょう。

まず入ってすぐのところにあるのが雑貨コーナー。「アタシ社」ではこれまでローカルに焦点を当てた取材・執筆活動を多く行ってきていて、その活動の中で全国各地で見つけた「良いもの」を集めて販売しています。

加工食品や調味料、お菓子といった食品から、茶碗・靴下・化粧品などの生活雑貨まで、普段なかなかお目にかかれない珍しいものがたくさん並んでいます。

精算カウンター近くの冷蔵ケースには、北海道産のジンジャーエールもありましたよ。

本を探しに来た人もこの入口の雑貨ゾーンで足を止め、気づけば30分が経過、なんてこともありそうです。

「考えるきっかけに」をテーマに

そしてお店を左側に進んでいくと、セレクトされた本が2000冊ほど並ぶゾーンへ。ここの書店ゾーンは「かむかふBOOKS」と名付けられています。

「かむかふ」とは「考える」の古い言い方で、その言葉通り「考える・学びのきっかけとなるような本」をテーマに選書されています。

ちなみに建物の軒先には店名の描かれた素敵なちょうちんがぶら下がっていて、こちら地元・萩の「大谷提灯店」に作っていただいたものだそう。

選書の責任者としてここの書店を管轄するのは「アタシ社」の瀬木広哉さんです。

兵庫県出身で2021年まで共同通信に勤務していた経歴の持ち主。
文化部に長く在籍していた経験を活かし、文学から実用、人文、絵本までさまざまなジャンルからセンスの良い本をチョイスしています。

決して「カタい」本や、珍しい本ばかりを並べているわけではなく、入り口付近には雑誌を置いてある棚を設けるなどバランスの良さも感じられます。

冊数は限られながらも「『小さな総合書店』を目指す」、と瀬木さん。

街の中から次々と書店が姿を消す時代にあって、取り扱うジャンルや選書に店主の個性が光る「独立系書店」が全国各地に登場しています。そんな「わざわざ行きたくなる」書店が山口県にまた1つ生まれた、というのはとても喜ばしいことなのではないでしょうか。

ちなみに瀬木さんに「かむかふBOOKS」らしさを感じるおすすめの1冊を尋ねると選んできてくれたのがこちら。

馬場のぼる作「馬場のぼるのおえかき教室」 こぐま社 1320円

意外なチョイス?と思いましたが、「難しく考えずに、どこから読んでもいいし、どこで読むのをやめてもいい。」とこの本の魅力を語る瀬木さんの楽しそうな表情を見て納得。

本はとても自由で楽しいものですよね!

リラックスできる美容室空間

そして店舗の右奥広いスペースに展開するのが美容室ゾーン。4席分あります。

1つの大きな空間を書店と共有していますが、本棚やのれんを使ってゆるやかに仕切られています。雑貨や書店を訪れた人と目があったりしないよう配慮されていますので、気軽に訪れることができそうです。

また、正面から見ると奥まった空間に見えますが、裏の庭に面しているため、ガラス越しに外からの光もたっぷり入り込む開放的な空間となっていますよ。

予約は「ホットペッパービューティー」などから受け付けています。

取材に訪れた日はまだオープンから日が経っていないタイミングでしたが、それにも関わらず次々とお客が訪れては髪を整えてもらっていました。

髪をきれいにしてもらった後に、書店で気になる本を買って帰る、というのもとても素敵だと思いませんか?

本と美容室が出会う場所

お店を紹介していくと、やはり不思議なのが「なぜ本と美容室がセットになっているのか?」ということ。

オーナーであるミネシンゴさんに話を伺うと、その答えがみえてきました。

ミネさんは元々美容師だったそうなんですが、ヘルニアを患ったことをきっかけにプレーヤーを諦めることに。その後、美容の業界誌を発行する出版社に転職し、美容業界に出版という形で携わることになりました。

その後リクルート社に転職し、美容院の予約サイト「ホットペッパービューティー」に携わるようになり、順風満帆。

…かと思いましたが、30代を目前に「このまま終わるのは嫌だ」、という思いを抱き、一念発起して髪をテーマとした雑誌「髪とアタシ」を自費出版。1500部を完売させたそうです。

そして、奥様とともに2015年に「アタシ社」を設立。本と美容を結びつける「髪とアタシ」はこれまでに第5刊まで発行しています。

そのような活動を続けていく中、「アタシ社」として1つの方向性が浮かんできました。

書店は文化的な価値が高いにも関わらず、これからの時代単独で経営するのは経済的に難しい。

一方、美容室は安定した収益が生み出せるものの文化的な拠点とは言い難い。

であれば、これを一緒にすることで、互いを補いつつ、互いを高めていくことができる拠点ができるのではないか、と。

そして誕生したのが「本と美容室」だったのです。

髪と心を整えて

雑貨・書店・美容室に加え、コーヒーやチャイ、炭酸飲料といったカフェメニューもありますよ。

ちょっとした座るスペースもありますので、飲み物を片手に一人でゆっくり過ごしたり、誰かとおしゃべりするのも良さそうですね。

ゆったりした時間が流れる萩の港町に誕生した「本と美容室 萩店」。

髪を整え、今まで知らなかった本に出会い、新しい「アタシ」を見つけてみませんか?

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