下寺尾官衙遺跡群 国史跡指定から10周年 3月に記念事業も
茅ヶ崎市北西部と隣接する寒川町の遺跡で構成される「下寺尾官衙(かんが)遺跡群」が今年、国指定史跡になって10年の節目を迎える。3月には同時に指定された川崎市、横須賀市の関係者らを招いたシンポジウムも開催される。茅ヶ崎市教育委員会では「指定から10年の歩みと今後について考えられたら」と話す。
同遺跡群は茅ヶ崎市下寺尾の西方(にしかた)遺跡や下寺尾廃寺(七堂伽藍(がらん)跡)、寒川町の大曲五反田遺跡などからなる。
このうち西方遺跡では2002年度に行われた調査によって、約1300年前の役所(官衙)跡が見つかった。周辺では寺院跡や船着き場、祭祀場も発見されており、律令体制と呼ばれる天皇を中心とした統治が行われていた時代、この場所が相模国・高座(たかくら)郡の中心だったことがわかった。
同遺跡群は15年3月10日、「地方官衙の構造や立地を知る上で重要」などとして、国指定史跡となった。
弥生時代の環濠集落も発見
下寺尾官衙遺跡群の価値は「律令時代の役所があった場所」に止まらない。西方遺跡では、さらに時代を約1千年さかのぼった弥生時代中期後半の集落跡が見つかった。
周辺には2本の環濠(大きな溝)が巡らされており、外側の環濠は推定で東西約400m、南北268m。「南関東最大級の規模」とされる。
土器のほかに石器や鉄器も出土し、石器から鉄器へ移行していく時期だということが分かるという。こうした調査の成果もあり2019年2月、追加で国の史跡に指定された。「二重指定」は全国で2例のみ。市教育委員会では「実は縄文時代の貝塚なども発見されている。地域の歴史が重層的に残っていることを、市民の皆さんにも知ってもらいたい」と話す。
現地説明会も
遺跡群を構成する西方遺跡では1月25日(土)、現地説明会が開催される。会場は茅ヶ崎市下寺尾字西方505の2付近。午前の部が10時30分から11時30分、午後の部は1時30分から2時30分。申し込みは不要。小雨決行、荒天中止。詳細は市社会教育課【電話】0467・81・7226へ。
記念イヤーにシンポ
市教育委員会では史跡指定10年を記念して、博物館での展示などを行う予定。さらに「史跡のかこ・いま・これから」と題したシンポジウムを3月9日(日)、茅ヶ崎市役所で開催する。当日は専門家の講演のほか、10年前、同時に指定された川崎市(橘樹官衙遺跡群)、横須賀市(東京湾要塞跡)の関係者が10年間の取り組みなどについて報告、パネルディスカッションなども行う。
関係者は「他市の取り組みを知るともに、連携しながら、今後の保存・活用について考えていきたい」と話している。