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【あんぱん】「なんのために生まれて」...映し出されたのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の光と影

毎日が発見ネット

【あんぱん】「なんのために生まれて」...映し出されたのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の光と影

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「光と影」について。あなたはどのように観ましたか?



※本記事にはネタバレが含まれています。



国民的アニメ『アンパンマン』の原作者で漫画家・やなせたかしと妻・小松暢をモデルとし、中園ミホが脚本を、今田美桜が主演を務める朝ドラ『あんぱん』第3週が放送された。



今週のサブタイトルは「なんのために生まれて」。もちろんアンパンマンの主題歌の歌詞だが、先週の予告で伯父・寛(竹野内豊)が語るシーンが流れ、馴染みあるフレーズを渋い低音ボイスで聞くギャップにソワソワした人もいるだろう。しかし、この問いが、夢を見つけるのぶ(今田)と模索中の嵩(北村匠海)の光と影を映す。



のぶは高等女学校5年生。卒業後はほとんどが結婚する時代で、学校では立派な子を育てるために体育が重んじられ、周囲は縁談で浮かれている。そんな中、幼馴染の木島中尉(市川知宏)と再会し、木島中尉の提案により、町内の祭りでパン食い競争を行うことになり、依頼を受けた朝田パンは活気づく。



1等の商品・ラジオを釜次(吉田鋼太郎)が欲しがっていることを知り、走るのが得意なのぶは出場したいと言うが、女だからという理由で資格も与えられない。「嵩はええな。おなごはつまらん」と漏らすのぶ。亡き父・結太郎(加瀬亮)の言葉「おなごも遠慮せんと大志を抱けや」を胸に抱きつつも、現実は高い壁が立ちはだかっている。



しかし、パン食い競争当日、嵩が腹痛で棄権すると言い、出場者のたすきを渡されたのぶは男子を追い抜いて一等になるが、失格となってしまう。



「みんな女子に負けて悔しいんだ」「あいつらこそ男らしくないよ」と憤る嵩に「嵩でも怒ること、あるがやね」と目を丸くし、礼を言うのぶ。嵩が自分にパン食い競争の権利を譲ってくれたことに、のぶは気づいていた。



しかし、そこに繰り上げ1等になった嵩の弟・千尋(中沢元紀)が現れ、本当の1等であるのぶにラジオを譲る。のぶは、近所の子供達にラジオ体操を教え、それが「学校の先生になりたい」「思いっきり夢を追いかけることを教えたい」という夢につながる。



体育の教師になるために女子師範学校に進学したいというのぶに、釜次は大反対するが、次女・蘭子(河合優実)は男の人をどんどん追い抜くのぶに胸がスーッとしたと言い、応援。おなごらしくしろと言う釜次に、今度は母・羽多子(江口のりこ)が「おなごらしうて、何ですろうか」と参戦し、進学を認めるよう頼み、蘭子は結太郎の帽子をかぶって「お父ちゃんの代わりにうちも」と頭を下げ、その帽子を三女・メイコ(原菜乃華)が手に取り、釜次の頭にそっとかぶせてニコリと笑う。この漫画的な流れが実に美しい。



一方、嵩はかつて成績首位だったが、振るわなくなり、伯母・千代子(戸田菜穂)に漫画について小言を言われる日々だ。おまけに、のぶの助けになるのは、朝田パンを大量注文してくれた木島中尉や、パン食い競争でラジオを譲り、男子に押しのけられて転倒しそうになったのぶを咄嗟に支えていた千尋だ。しかも、のぶは体育教師になる夢を千尋のおかげで見つけたと言う。



立派になった中尉に圧倒され、体の弱かった千尋にも体格、柔道や走ること、成績でも負け、嵩はと言えば、のぶを応援するばかり。本来177センチの長身で圧倒的な華がある北村匠海を、弱く小さく、冴えなく見せる180センチ超男子達の包囲網と演出が巧みだ。



しかも、千尋に勧められて応募した漫画が新人漫画大賞を受賞、賞金10円を獲得するが、称賛されるでもなく、草吉(阿部サダヲ)やのぶ達姉妹にかき氷などをおごるだけ。受賞のきっかけをくれたのも千尋で、千尋に感謝として小遣いを渡す。



そんな中、母・登美子(松嶋菜々子)が8年ぶりに現れる。しかも、漫画を読んで笑い、ベタベタに褒めてくれたのは、登美子だけだった。



のぶは登美子に対し、かつて嵩が登美子に会いに行き、冷たくされたときの思いを代弁、音信不通だったことを責める。しかし、嵩はそれを制止し、のぶは母に捨てられたことがないからわからない、自分は母に会いたかったのだと言う。これはかつて嵩がのぶに言った「もう僕を守るのはやめてほしいんだ」と呼応する言葉で、のぶの優しさ・強さが、またしても嵩を惨めな気持ちにさせ、傷つけてしまったのだろう。



さらに、嵩に柳井医院を継ぐ道を譲ろうという思いもあるのか、千尋は医学の道ではなく、法の道に進みたいと言い出す。「貧しゅうて今日食べるものもない子どもらや、社会で虐げられた女性ら、そういう人らを法の力で救いたいがです」という高潔な人格もまた、ますます嵩のコンプレックスに拍車をかけていく。



「女らしさ」の呪縛から解き放たれ、夢に向かって進もうとのぶに対し、嵩はまだ「男らしさ」と「強さ」の呪縛に雁字搦めになっている。



第一話冒頭でのぶは「嵩さん」と呼んでいた。嵩が描くヒーローを「ちっとも強そうじゃなくて、カッコ悪いけど、そこがいい」と評した。しかし、今はのぶは嵩を「嵩」と呼び、のぶにとって嵩は「守るべきもの」で、嵩はそれを不甲斐なく思い始めているし、自分の優しさという強さにまだ気づいていない。



この幼馴染ならではの呼び方や関係性、ジェンダー的価値観の転換がいつ、何をきっかけに生じるのかは、この作品にとって大きな柱となりそうだ。


文/田幸和歌子

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