森崎在住小川さん 走水小の記録 後世に 75年前の日記を書籍化
森崎在住の小川胖(ゆたか)さん(86)が今月、75年前に走水小学校で書いていた絵日記をまとめた書籍「僕の絵日記太平洋戦争直後を生き抜いた僕たち」(青山ライフ出版)を上梓した。同校の閉校を契機に出版したもので、当時の様子が一人の少年の目線で等身大に描かれている。
小川さんは横浜市出身で第2次世界大戦終戦間近の1945年4月に満州の小学校に入学。戦後、引き上げ船で帰国し親戚を頼って横須賀に移住した。
絵日記は、小川さんが走水小へ転校した1949年9月から卒業する51年3月までのもの。「放課後に大津へバスで買い物に向かった」「(走水の)桟橋で父親と釣りをした」などのエピソードがつづられ、当時の生活や学校の様子が伺える。
きっかけは今年の始め、自宅に訪れていた孫(12)が本棚の奥から年季が入った日記帳を発見して。ページをめくると小学生だった当時の記憶がありありと頭に浮かんだ。「命からがら帰ってきて日々の生活も大変だったが、海が近くにあって遊ぶのが楽しかった」。75年ぶりの思い出との再会に喜びと懐かしさを覚えた一方、走水小は今月末で統合に伴う閉校が決まっていた。「それなら記録を残したら」という孫の提案で書籍化を決意。出版社に連絡を取り、閉校に間に合わせるため2月までに膨大な原稿を書き上げた。
海に親しんだ2年間
小川さんが特に気に入っているのは、51年1月10日の節。日課だった海水温の計測に向かう際、岩に張り付いた海藻に滑って転倒したことを描いた絵で「転ぶ衝撃が良く伝わる」と目を細める。同校では当時、目の前に広がる海で水球の授業を行っていたといい、小川さんも夏休みは馬堀海岸で遊泳を楽しんだ。「走水小の子どもたちは海洋環境に恵まれていた」と振り返り、母校の閉校を惜しんだ。
A5判、205頁。書店で取り寄せ可能。定価2200円。