【アユルアー】大遡上に沸く福井・南川&北川を名手が攻略 釣果を分ける「誘い」と「ハリ」の思考法
今夏、踏み潰しそうなほどに天然アユが充満しているのが福井県若狭湾に注ぐ南川と北川だ。そして今年はリールを使ったアユルアー(アユイング)を試行許可。この情報を聞きつけ解禁日から通い込んでいるのが西浦伸至さんだ。密度が濃いから数が出るのはもちろん、釣果を伸ばすルアーアクションを見出すのが面白いという。
写真と文◎編集部
福井県の南川・北川でアユルアー
オーナーばりに勤務する西浦伸至さん(49)は兵庫県伊丹市で生まれ育ち、少年時代からさまざまな釣りを楽しんできた。バスに始まりシーバス、エギング、クロダイの前打ち、タチウオ、メバル、青物、サクラマス、タナゴ、虫ヘッド。大阪湾や近畿圏の身近な水辺だけでなく磯から大型青物をねらうロックショアでは五島列島、男女群島、伊豆諸島、隠岐の島、佐渡島などの島々を精力的に釣り歩いている。職歴も釣具店アルバイト、釣り新聞&雑誌の編集者、釣り具メーカーと業界に関わり釣りの知識は幅広い。
「釣りは何でも好きです。境界線はありません」そう話す西浦さんがアユ釣りに魅せられたのは近年のこと。周囲から「お前はハマりすぎるからやめておけ」と言われ続けていたが、オーナーばりに入社すると友人に連れられ友釣りを経験。すぐにのめり込んだ。
「友釣りは複雑な所作があって思いどおりにならない。初心者の頃の童心に帰る思いで沼りましたね。上手くなりたいから近所の加古川水系で出勤前に朝練もしていました。オトリを取るのにルアーを使っていたのが私のアユルアーの始まり。友釣り三昧だったのが、専用のルアーやロッドが出るようになった近年は、ルアーでアユを掛けるのも非常に深みが出てきました。今は友釣りはやらずルアーのみで釣行する機会も増えています。ルアーでも友釣りのように、真っ黄色のナワバリアユをねらったポイントで掛けていくのが楽しい」
よく行く川は兵庫県加古川水系、滋賀県の安曇川や愛えち知川、鳥取県の千せんだい代川、これまで福井県の日野川や北海道は島牧の小河川などでもアユルアーをやっている。そして今夏に魅せられたのが若狭河川漁協の管轄する南川と北川である。福井県若狭湾の湾奥部に注ぐこの小河川は古くから京都のアユ漁師さんが入るご漁場としても知られる。
「今年からリールを使用したルアー釣りを試行許可した河川です。解禁日に訪れると北川で64尾、その2日後に南川で84尾と凄まじい釣果が出て、天然アユがとにかく濃密で驚かされました。南川にはオトリ屋さんもあって友釣りで訪れたことがありましたが北川は初めて。川幅が狭くルアーの機動力が活きるのと、南川より比較的型のよい魚が掛かるのも魅力です」
そんな大釣りの報告を受けて解禁から1週間経った6月26日に南川・北川が潤す福井県小浜市に向かった。
南川の入川口には「リール使用によるアユルアー釣り試行許可」の看板が立っている
釣果を伸ばすアユルアーのアクション
若狭河川漁協によれば今年は5年ぶりの大遡上とのことである。アユルアー認可区間は、南川が尾崎堰堤から河口まで、北川は井ノ口橋から河口まで。記者が西浦さんと落ち合ったのは北川の井ノ口橋である。しかし到着と同時に大雨が降って間もなく濁りが出てしまった。そこで南川に向かうとこちらはササ濁り程度で掛かりそうだ。
南川の尾崎堰堤下流。遡上してきた天然アユが溜まりそこかしこで追い合う姿が見られる
「先日、尾崎堰堤の下に入った際は夕マヅメに恐ろしいほどのラッシュを味わいました。ルアーを動かす前に次々掛かる。まるで青物のナブラを釣っているみたいに狂ったような釣れっぷりです」
この日もアユの姿はそこかしこに見られた。堰堤のコンクリ上や瀬肩に足を踏み入れるとサッと逃げるがすぐにナワバリに戻ってくる。まるでアユの絨毯のような様相のスポットがいくつもあった。
さて、西浦さんはベイトタックルを愛用している。片手で細かい操作ができラインの出し入れもしやすいからだ。ラインはPE0.5号、リーダーはフロロ1.5号、ミノーは数種類を使い分けるが主力はジャッカル「オトリミノー」、「オトリミノースリム」やアイマ「誉100F」、「誉100MD」。そしてセットするハリは「鮎ルアーのフック」である。イカリ、チラシと数種類ある中で、スタート時にはキープ重視のイカリタイプの出番が多い。
西浦さんのこだわりがハリス止メ。友釣り用の「スプリングサカサ」をハンダ付けしている。軸に沿ってハリスをくるくると回すだけで固定できる
トゥイッチで石を食む動きを演出
西浦さんのルアー操作はチョンチョンと小刻みなトゥイッチを常時行なうのが特徴である。
「ポイントにもよりますが流速のある瀬以外はミノーを動かし続けています。じっと留めるようなステイはほとんどしません。追い合うアユの動きを見ていると忙しなくてスピード感があります。だからルアーも動かし続けていたほうが反応はいいように思うのです」
ミノーはトゥイッチのたびにキラッ、キラッと石を食むような動きをする。多くのアユルアー専用ミノーは石にぶつかる、もしくは流れの受け方によってはバランスを崩して食んでいるような動きになる。しかし、西浦さんはその動き方ではアピールが物足りないとトゥイッチでハミ行動を演出しながらナワバリに侵入させていく。
「アユを挑発するアクションはさまざまです。以前エビになったルアーを回収しようとして変な動きをしたところで追ってくるアユもいました。掛かるアクションの正解がいくつもあって楽しいです」
こんな話をしているとさっそく突っ掛けてくるアユがいた。小気味よい引きの後で水面を割ったのは黄色い天然アユである。その後も連発し、スタートダッシュを決めたのだった。
西浦さんのルアー操作は常時トゥイッチをしながらじわじわとリーリング。こんな操作がしやすいのもベイトタックルである
エイトトラップでナワバリへ多方向から侵入
「関西にはサイトでアユを掛けられるフィールドが多いです。追い回すようなアユが見つかれば、追ったアクションの後にすぐさまルアーを投げ入れると高確率で掛かる。あとよくやるのが追っている野アユの死角からルアーを侵入させる。すると飛び付くように掛かる魚が多いように思います。こうしてサイトで観察しながら釣っていると発見がいくつもありますよ」
立ち位置から2m以内の近距離をダウンで8の字を描くようにぐるぐると動かす操作も多く見られた。シーバスフィッシングなどでよくやる「エイトトラップ」のような感じであるが、アユのナワバリに対してルアーの進入角度を変えて反応を見ているのだ。
もちろん探る場所も重要だ。この日は頭大の石が入った瀬肩では連発があり、掛かる魚も比較的大きかった。しかしザラ瀬や強い流心に入れると小型ばかりでアタリも続かない。西浦さんは転々と探って効率的に数が出る場所を見極めていった。
追い合うアユを確認できたら追い払った直後のアユのすぐそばにルアーを入れる。そうすると飛び付くように掛かってくる
釣れない時はハリを替える
「釣れない時にはルアーをあれこれ替えるよりもハリを交換したほうがいいです。ルアーはハリが石を掻きやすい。根掛かりしたら必ずハリ先をチェックしてください。根掛かりせずとも1時間も同じハリを使っていれば明らかに鈍ってきます。交換はまめにしたほうが絶対に釣果は伸びます。それとルアーは軽い。友釣りはオトリの重さがあるのと野アユが掛かればオトリと引き合いハリが食い込みますが、ルアーはハリ先が鈍っていると弾かれてしまう」
西浦さんはアユを掛ければ掛けるほどフィッシングハイになるという。だからハリ交換もまめに行ない種類も替える。また友釣りのハリもあれこれと試して「マイクロX」という重たい小バリが当たりバリになった日もあったという。
「当たりルアーだけでなく、当たりバリを見出すのもアユルアーの楽しみです。友釣りのハリは多彩ですからね。面白いですよ」
14時を回ったころからアユの黄色味は増していった。流れの通った場所だけでなくトロ場でも追いが立ち、西浦さんはそうしたアユを目視しながらねらい撃つ。夢中になって数を伸ばした。
南川と北川は谷筋がそれほど深くないこともあって水が引くのが早い。近隣の川が増水で釣りができない状況でもこの川だけはサオがだせることが多いという。なおまだ試行期間のアユルアー釣り場ゆえ、マナーよく釣りを楽しんでいただきたい。
西浦さんの「鮎ルアーのフック」の使い分け
最後に、西浦さんが実践する「鮎ルアーのフック」の使い分けを紹介。
イカリ
アユの密度が濃い川での数釣りに向く。キャスト回数が多い状況でもエビになるトラブルが少ない。
・キープ重視:最初はこのハリからスタート。基軸になるフック
・掛かり重視:ルアーの周りにいるけど掛からないアユが多い時に使用
・大鮎用:アユが大きい時や急瀬・荒瀬といった急流攻略で使用チラシ
密度が薄い時や追い気の弱い時に絡め取るイメージで使う。バラシも少ない。一方タモ絡みやエビになるトラブルが増え、手返しが悪くなるのがデメリット。
・スタンダード:広範囲にハリが振れる。まとわりついても掛からない魚も掛けやすい
・シャロー用:底を掻きにくいのでチャラ瀬などの浅場も探りやすい
※このページは『つり人 2025年9月号』を再編集したものです。