5年ぶり3回目の「耳垢栓塞」になって気づいたこと / 頻繁にイヤホンを使う人は本当に気を付けて
忘れてた、すっかり忘れていたんだよ。「耳垢栓塞(じこうせんそく)」になったことがあるということをね。耳垢栓塞とは耳垢が耳穴に詰まることを指す。当然耳の聞こえが悪くなるし、平衡感覚にも多少なりとも影響が出る。
私は過去に2回もやっているのに、そのことをすっかり忘れていた。なぜなら、最初になったのが12年前で、2回目になったのが5年前だ。それだけブランクがあれば、耳垢栓塞になりやすかったことを忘れるというもの。
最近またやっちゃったんだよねえ。改めて、症状と治療についてお伝えすると共に、私と同じようにイヤホンを頻繁に使う人に注意を促したい。マジで気を付けてよ。
・過去2回の耳垢栓塞
最初になったのは2013年のことである。12年前に「【注意喚起】耳垢と耳掃除には注意しろ! 最悪の場合耳が聞こえなくなるぞ」という、強めのタイトルで記事を執筆していた。
記事の内容を振り返ると、約2週間の間に症状のあった左耳が次第に聞き取りづらくなり、電話での通話が難しくなるほど聞こえなかったと記している。
そもそも私は、どういうわけか左耳だけ「湿性耳垢」(湿った耳垢)で、これを綿棒で取ろうとしたのがマズかったらしく、塊を耳の奥に押し込んだらしい。ちなみに右耳は乾性で乾いた耳垢である。
2回目はその7年後、2020年。コロナの外出自粛が明けたその日に耳垢栓塞をやらかした。この時はさすがに2回目で、自分の身体に何が起きたのかすぐに理解できた。というのも、7年前の教訓を忘れて、また綿棒で耳垢を押し込んでしまったからだ。押し込んだというその手応えすらわかってしまった。なのになぜ、綿棒を使ったんだ……。
この時の先生は私に「耳垢は外耳道の入り口の方にたまるので、奥に押し込まないように気を付けてください」とのアドバイスと共に、耳垢栓塞になりやすいタイプであることまでお教えくださっている。
その教えを踏まえて「【役立つ知識】耳掃除するときは「耳垢栓塞」に気をつけよう! 綿棒でやる時は特に注意した方がいい」というタイトルで記事を書いている。
・今回のケース
そして迎えた2025年8月16日、またやっちまったんだよ。
実はここ数日、耳の聞こえが妙に感じるタイミングが何度かあった。寝転がっている時とか、頭を下にするタイミングで「アレ?」と思うことがあったが、耳垢栓塞を疑うことはほぼなかった。なにしろ5年も前だから忘れちゃうんだよ……。
そして16日、実はこの日は夜に予定があって、出かける前に「そういえば」と思って耳掃除をしていた。さすがに過去に2回もやってるから、綿棒は控え目にして、ちゃんと耳かきを使っていたというのに、何かの拍子で耳の聞こえがおかしくなった。
また、やっちまった!
まただよ、またあの音が聞き取りづらい世界に入った。いわば異世界だ。すべてが灰色、音の奥行きがなくなって全部が平坦に感じる世界。聞きづらくなるだけでなく、キーンという高音の耳鳴りを伴っているからとても不快だ。
とにかく今は出かけないといけないので、ガマンするしかない。幸い、聞こえ具合は通常を「10」とすると「2」くらいなので、まったく聞こえないわけではない。
なんとかその状態でその日をやり過ごし、翌日休日診療している耳鼻科に行くことができた。
症状はやはり耳垢栓塞。治療は耳垢を吸引して除去する。これがちょっとだけ怖いんだけど、ブオーッ! という大音量と共に、蓄積した耳垢を取り除く。次第に音がよみがえってきて、灰色の世界がだんだん色を取り戻していく感覚だ。いつもこの瞬間は感動する。奥行きのない世界を脱出できたんだなって。
先生のアドバイスは今回も同じで、耳掃除に注意をするということ。私はもはや、「耳垢栓塞持ち」であることを自覚すべきだと強く思った。周期が長いので忘れてしまうから、年に1~2回、定期健診を受けようと考えている。
・3度の経験で気づいたこと
さて、あらためて音がクリアな世界に帰ってきたわけだが、今回はいろいろ気づくことがあったのでお伝えしたい。
まずは、耳の聞こえがだんだん悪くなっても意外と気づかないということ。実は数カ月前から、使用しているパソコンの音量が小さくなっている気がしていた。購入から5年を経ており、しかも普段からかなり負荷のかかる作業(ゲームや動画編集など)を毎日行っているので、そろそろくたびれてきたと思っていた。
しかし実際にくたびれていたのは私の方だった。次第に耳の聞こえが悪くなっても気づかないから、毎回同じ過ちを繰り返してしまうのだろう。
それから治療後について。格段に左耳の聞こえはよくなったんだけど、相対的に右耳の聞こえが弱く感じてしまう。いずれ慣れるとは思うけど、左耳が聞こえ過ぎて世界がうるさいのである。とくに高音の聞こえがよくなって、世のざわめきがキンキンと鼓膜に刺さる。
反面、右耳はこれまでの水準で聞こえているから、聞こえ方がアンバランスなのが気になる(気分が悪くなるほどではない)。
聞こえがよくなったことで、さらに気づいたことがある。もしかして、私が「格安イヤホン探訪」を連載していた時、音を正確に聞き分けられていなかったかも……。今の聞こえ方なら、また違って聞こえる気がしないでもない。
つまり音を扱う仕事をしている人は、耳の定期的なメンテナンスが必要なのだろうとも思った次第だ。
いずれにしても、皆さんにお伝えしたいのは、耳のケアには十分に注意して欲しい。私はほぼ毎日イヤホンを使っているのだが、時には耳を休ませることも大事なのではないだろうか。またイヤホンを清潔に保つことも大切。何より、耳掃除での綿棒の扱いには気を付けて頂きたい。
自分でキレイに保つのは難しいので、必要と感じるなら耳鼻科に行くこともおすすめしたい。私はこれ以上、耳垢栓塞にならないように、定期健診を受けることにする。自分で管理はもう限界かも……。
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24