【初下車駅3000円で街を歩く】世田谷区の「代田橋」を散歩していたら、なぜか小さい〇〇に行きついた。
東京は一駅変わるだけで街並みが変化すると言われるほど多面的な表情を持つ。大都会然としたターミナル駅に、昔ながらの下町情緒の残る駅。飲み屋街の活発な駅にビジネスビルの立ち並ぶ駅。そして、もちろん何があるのか全然知らん駅もある。
これは電車に乗るたびに思っていた。いつも通り過ぎているこの駅には、いったい何があるのだろうと。毎度気になったところで、用事がなければわざわざ降りることはない。
そこで今までに降りたことのない駅で下車し、(大体)3000円を握りしめ前知識なしでぷらぷらとその町を堪能してみようと思う。
・今回下車したのは、京王線代田橋駅。
代田橋(だいたばし)といえば新宿から吉祥寺に行くときに通過するよなあといった程度の知識しかない。この駅で降りるのは直感でしかないが、この企画は何も知らない場所の方がきっと楽しいだろう。
・とりあえずは南口から散策してみる。
駅を出て一番に目に付いたのは……
下町らしいラーメン屋さんだ。代田橋には降りたこともなかった人間だが、こういう昔ながらの店を見かけるとなんだかほっとしてしまう。
駅を出るとすぐ閑散な住宅街のようだが、歩いているとランチ定食700円の小料理屋さんに
和菓子屋さんなんかがぽつぽつとある。
東京の駅前はチェーン店で埋め尽くされている場所も多いが、こういったお店の並びに安心感を覚えるのは筆者だけだろうか。
そして少し歩くと小さな川と小さな橋に
配管のようなモニュメントが数多。
どうやら立て看板を見るに多摩川の水を引くための玉川上水が流れており、調べてみるとこの「ゆずり橋」は玉川上水第一号橋にあたるものだそうだ。
駅前や街中なんかによくあるような謎モニュメントも、置いてある理由が意外と明確にあったりするんだろうなとここにきて妙に納得してしまった。
駅へ戻ろうと進むと、見えてくるのはなかなか広い敷地を誇る和田堀給水所。
現在は大規模な工事中で、中を覗くと見るからに歴史のありそうな円形状の巨大建築物があるが、こちらはこの工事で解体されるそう。
こういう施設の見学が大好きな人間としては、中が気になって気になって仕方がないが、入れないものは仕方がない。
・踏切を渡って北口へ向かう。
こちらは打って変わって、下町らしい路地に小さなお店が立ち並ぶ。
やたら品揃えのいい煙草屋さんに(自販機に隠れてしまっているが)
昔ながらのおもちゃ屋さん。こちらも尋常じゃなく品数が多そう。
そしてまっすぐ進み甲州街道に突き当たると気になる看板が。
「沖縄タウン 小さい沖縄、生まれタウン」である。
ダジャレなのか、分かりやすいキャッチコピーなのかは判断しかねるが、少なくともこの矢印についていけば何かがありそうだ。
そして矢印通り歩道橋を渡りきると……
さらにまたもや「沖縄タウン 小さい沖縄、生まれタウン」が出現。あと150mで沖縄タウンとやらに辿り着くらしい。
・小さい沖縄 沖縄タウン
そして出迎えてくれたのはシーサーや龍の描かれたアーチが入り口となる、沖縄色満点の商店街! なんでこんなところに沖縄!?
商店街にあるお店は沖縄の酒がメインの酒屋さんに
沖縄そば、ブルーシール、そしてシーサーと圧倒的沖縄感を誇る小売店。
市場の名前はめんそ~れ大都市場だし
商店街のスピーカーからは、常に三線(さんしん)の音楽が流れている。
いや沖縄すぎる!! 至るところにシーサーいるし!!
調べてみると、昔から沖縄関係の学者さんが多く住んでいたためにこういった街並みになっていったそうだ。何も知らずに訪れた身としては、突然の沖縄に動揺を隠せない。
残念ながら訪れたのが水曜日のお昼ということで、飲食店は閉まっている場所が多め。
取り急ぎ沖縄を味わうために、ブルーシールのアイス塩ちんすこう味(330円)を頂いた。濃厚なバニラアイスに砕かれた ちんすこう が入っており、大変美味である。
夜になって飲食店が開くことを期待し、もう少し付近を散策する。
・カフェに寄り道
そろそろコーヒーでもと思い入店したのが、可愛らしい看板の「バターマスターLiving room」。
内装もポップでアメリカンなキャラクターで彩られ、素敵な雰囲気だ。
表のメニューにお馴染みの、と記載があったプリン(580円)とアイスコーヒー(520円)を注文することにしよう。
そして運ばれたきたのがウッドペッカーのグラスに入ったアイスコーヒーとクリームのたっぷり乗った固めプリン!
スプーンを入れるとむちっとするほど固めのプリンは、口どけまろやかでバニラビーンズが効いた濃厚な味わい。苦めのカラメルがプリンの甘さと混じり合って最高に美味しい。代田橋に来たらこれは絶対に食べた方がいいと断言できる。
夕食の時間にはまだ余裕がある。ってことでやってきたのは……
・湯の楽代田橋
そう銭湯である。筆者は無類の銭湯好き。街ブラするなら見つけ次第銭湯に入ってやるぞ~と意気込んでいたのだ。
甲州街道に面したビルの一階に入っているようで、危うく見逃すところだった。
入浴料は入浴+サウナで850円。
ビル型の銭湯というだけあって待合室もロッカールームも綺麗な作りだ。
設備はというと、広めのメイン湯船に(ジェットバスと電気風呂あり)
TV付きの遠赤外線サウナ。8人ほどは入れる広さで、筆者が訪れた時は空いていて独占状態だった(写真はこの日は女湯だった塩サウナ。偶数日が女湯が塩サウナ側で、奇数日が男湯が塩サウナになる入替制だそう)。
そして深めの水風呂に……
小さめだが岩に囲まれた立派な露天風呂!
サウナーとしては、この外気を感じられる空間があるととてつもなくありがたい。
サウナ水風呂外気浴を3セットほどして、銭湯を出る頃には日が沈みはじめるほど長居してしまった。
・沖縄タウンに回帰
というわけで、次にすることは飯である。
訪れたのは噂のめんそ~れ大都市場内にある「沖縄酒場SABANI」。
実は市場入口の看板に沖縄すばの文字を見かけて狙っていたのだ。
ちなみに筆者は沖縄に行ったことがなければ、沖縄そばを食べたこともない完全なる素人だ。まさか沖縄そばデビューが代田橋になるとは。
注文したメニューは一番上の沖縄すば(800円)。麺とスープが選択できるシステムなのだが、右も左も分からないため「一番沖縄っぽいやつでお願いします!」と注文したところ、豚とカツオのWスープと亀浜製麺のゆで麺の組合せになった。
さっそく出てきたのがこちら。ディナータイムとのことでお通し(330円)も一緒に頂くことに。
ここにきて人生初の沖縄そば。口馴染みのない味を想像していたのだが、カツオの出しがしっかり効いた上に豚の脂のまろやかさが感じられ本当に美味い!
麵はつるっとした中太麵で、食べ応えがあり
ソーキはほろほろになるほど柔らかく、肉厚で抜群の存在感を放っていた。
初めての沖縄そばに大満足し、完食。
沖縄そば、こんな美味いのになんで今まで食べてこなかったんだ……?
お会計を済ましてお店を出ようとすると、店員さんにこれお土産にどうぞとちんすこうまで頂いてしまった。
十分に沖縄……もとい、代田橋を堪能できたところで、駅に戻り帰路につく。
駅北口付近は夜になると赤提灯が立ち並び、飲み歩きも楽しめるような街に様変わりしていた。
思いつきで降りった代田橋駅。なんとなくチェーン店で雑多な街並みと住宅街があるくらいかなと予想していたが、しっかり裏切られしっかり楽しんでしまった。
たまには普段は気にも留めない駅で途中下車して、知らない街を散策するのも案外悪くない。それなりに知っているつもりの土地でも、まだ見つけられていない魅力をきっと発見できるはず。
【今日の会計】
「いじゅん」
ブルーシールのアイス 塩ちんすこう味 330 円
「バターマスターLiving room」
プリン 638 円
アイスコーヒー 572 円
「湯の楽代田橋」
大人入浴+サウナ 850 円
「沖縄酒場 SABANI」
沖縄すば 800 円
お通し 330 円
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合計 3520 円
参考リンク:沖縄タウン 和泉明店街、バターマスターLiving room、湯の楽代⽥橋温泉、沖縄酒場 SABANI
執筆:玄野すばる
Photo:RocketNews24.