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日本はもうすぐ、“内乱状態”になるかもしれない

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日本はもうすぐ、“内乱状態”になるかもしれない

2024年12月3日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領が戒厳令を発令するも、僅か6時間で撤回に追い込まれ、失脚した。

朴槿恵(パク・クネ)元大統領とあわせ、日本に融和的な大統領は、やはり韓国で国民的支持を得るのは難しいのだろうか。


それも無理からぬ話で、韓国、加えて中国でも、反日教育は戦後、為政者の常套手段だった。子供の頃から日本と日本人を敵視する教育を受けてきた歴史を考えれば、日本に融和的な態度を取る政治家など“国賊”とされて当然である。

それほどに、政治的合理性など国民感情の前には無力だ。もし私たちが「中国・韓国は邪悪な悪魔」と教えられ育てられたなら、きっと同じ思いを持つのではないだろうか。


ではなぜ、中国や韓国では長らく、日本と日本人を憎むような教育を続けてきたのか。

いうまでもなく、政治的安定を維持するために即効性のある方法は、外敵の設定だからだ。「日本が再び、我が国を侵略しようとしている。今、国内で争っているような場合か」そう呼びかければ、国民は多少の生活の不安や為政者への疑問など、吹き飛んでしまう。


そのような状況で政府を攻撃するような政治家や国民こそ、むしろ国賊として糾弾されるので、為政者にとって最高のツールだ。

実際、中国では文化大革命(1966年~)や天安門事件(1989年)を経験するなど、国内政治は長らく不安定な状態が続いた。韓国も軍事独裁政権による不安定な治世が続き、1993年の金泳三氏まで文民出身者が大統領に就任することすらなかった。


そんな中で、日本を「仮想敵」にし、反日教育で国民の“団結”をはかった中国・韓国のリーダーたちの姿勢は、戦前からの流れもあり、ある意味で当然だったのだろう。

そして、そんな隣国の政治家やそのやり方を、多くの日本人はもちろん、快く思わない。私だって本音を言えば、そんな手法に頼った様々な歪みが、両国と国民の友好関係を損ねていると感じている。

そんなもやもや感の中、少し思うところがあって、では日本はどうなのかと近現代の出来事を時系列にしてみることがあった。


すると一つの事に気が付き、背筋に冷たいものを感じている。

「もしかして日本って今、”内乱”寸前の状態なのでは…」

という思いだ。


“失われた30年”

近現代の日本の歴史を、少し時系列で比較してみたい。

日本が近代化に踏み出し、今日的な国家の建設を始めたのは1867年のことであった。それ以降、欧米列強から猛烈に学び国力をつけていった日本は、明治新政府樹立から28年目の1894年に日清戦争に突入、翌1895年に勝利する。

さらに38年目の1904年には、大国・ロシアとの戦争も経験し、奇跡的な勝利を収めた。これを機に大陸への利権を確実なものとした日本は、44年目の1910年に韓国を併合。
国の勢いは一つのピークに達する。


同じ時系列を、戦後日本でもみてみたい。

先の大戦に敗れた日本は、1945年に連合国の占領を受けることになり大日本帝國が崩壊。日本国のスタートを切ることになる。

戦後、長らくの間、1ドル360円という今から思えば想像もつかないような「安い円の固定相場」の恩恵もあり、輸出産業を成長させると、驚異的な戦後復興を果たす。


すると27年目の1971年、ニクソン・ショックに伴う世界秩序のリセットの影響で、1ドルは308円へと切り下げられる。

さらにその僅か2年後、29年目の1973年にアメリカは「高いドルの固定相場制」を維持することを放棄して、世界は変動相場制へと移行することになった。

そして円高ドル安が進むことになる。


それでも日本は国力を伸ばし続け、“産業のコメ”とも呼ばれた半導体分野で圧倒的な強みを見せると、欧米からの風当たりはどんどん強くなった。

加えて米国の“お家芸”でもあった自動車産業のシェアをも奪い続けると、米国世論の怒りは沸騰し、もはや戦争とも言えるほどに激しい経済摩擦を抱えることになる。

おそらく50代以上の世代であれば、米国の労働者たちがトヨタなどの新車をハンマーで叩き潰す衝撃的なニュースを、色濃く記憶しているはずだ。逆に言えば、この時代の日本はそれほどまでにメチャメチャ強かったのである。


その結果、戦後41年目となる1985年にプラザ合意が、さらに42年目となる1986年には日米半導体協定が成立する。

詳述は避けるが、要するに「アメリカによる新たな世界秩序の押し付け」により、日本は経済戦争に敗れたということだ。

令和の今、トランプ大統領を特別乱暴なリーダーだと思っている若い人も多いかも知れないが、アメリカは昔から、同じような外交を展開してきたのである。


そしてこのプラザ合意の影響で日本は円高不況になり、追い込まれた政府と日銀は低金利政策に舵を切る。

その結果、市中に大量のお金が溢れ空前の好景気と言われた、仮りそめの“バブル経済”が発生。戦後45年目となる1989年の大納会では当時、史上最高値となる日経平均38,915円を記録するなど、日本は「最高に勢いがある時代」を迎えた。


しかしそもそもが、米国との経済戦争に敗れた“副産物”として生まれた好景気に過ぎない。わずか数年ほどでバブルが弾けると、日本経済は加速度的に衰退局面に入る。

そして1996年、「第二次ベビーブーム」頂点の世代が大学を卒業する年になるとすでに日本経済は冷えきっており、就職氷河期は本格化する。以降、“失われた30年”が深刻化することになる。


「2010 中流階級消滅」

ここまでの、明治新政府と戦後日本の歩みを少しわかりやすく箇条書きにしてみたい。

【明治日本】
28年目 日清戦争勝利(列強仲間入り)
38年目 日露戦争(大国との利害衝突)
44年目 韓国併合(国勢の山)


【戦後日本】
29年目 変動相場制移行(列強仲間入り)
41年目 プラザ合意、続いて日米半導体協定(大国との利害衝突)
45年目 バブル経済頂点(国勢の山)


驚くほど、歴史が繰り返しているような気がしないだろうか。

そしてこの後の歴史についても、引き続き箇条書きする。


【明治日本】
54年目 国際連盟成立 日本常任理事国入り(欧米ルールへの組込み)
64年目 ロンドン海軍軍縮条約(欧米による日本の国力抑え込み)
65年目 満州事変(既得権益による、情勢変化を狙った政変)
71年目 日中戦争勃発(既得権益の暴走)
79年目 敗戦、大日本帝國の崩壊(既得権益の崩壊)

【戦後日本】
52年目 日本版ビッグバン、諸外国への金融開放(欧米ルールへの組込み)
65年目 自民党大敗、民主党政権が成立し政権交代(既得権益に抵抗する国民の政変)
70年目 消費税8%に引き上げ
75年目 消費税10%に引き上げ
80年目 2024年、自公政権過半数割れ(既得権益の崩壊を願った国民の意思表示)


いかがだろうか。

明治新政府樹立以降の動きと、戦後日本の流れは、驚くほど似ている気がしないだろうか。その上で、ここで注目してほしいのは明治日本54年目(1920年)の国際連盟への加入と、戦後日本52年目(1996年)の日本版ビッグバンについてである。


私は1996年に大学を卒業し大手証券会社に入社したので、当時のことは本当によく覚えている。日本の金融業界は当時、護送船団方式と呼ばれ、国から既得権益を守られながら高収益を上げられる、憧れの就職先だった。

しかしながら様々な金融商品が諸外国に開放され、つまり「金融の鎖国解除」がなされた結果、もはや銀行をはじめとする金融機関は、見る影もなくなる。


なお当時から現在への流れ、不況について、小泉純一郎や安倍晋三・両元総理、あるいはパソナの竹中平蔵氏の政策や経営方針の結果だとする意見が根強くあるが、疑問がある。なぜか。

小泉氏や安倍氏が総理になるよりも前、1998年に出版された「2010 中流階級消滅」という1冊の本がある。上述、1996年に本格化した日本版ビッグバンの2年後に出された本で、英国シティの証券会社で20代の若さで役員に昇った故・田中勝博氏が出した1冊だ。

要旨、日本は2010年までに中流階級などと言われるものは無くなり、非正規雇用が普通になることなどを予言する内容である。そしてその通り、日本は1996年の金融開放から世界秩序に巻き込まれ、日本的な終身雇用などは失われた。


結果、雇用の非正規化が進み貧富の差は拡大し、国民の不満が増大して政情が不安定化した結果、奇しくも2010年の前年、2009年に政権交代まで発生し、民主党政権が発足することになる。


日本人は決しておとなしくない

そして話は冒頭の「日本は内乱寸前」についてだ。

令和の今、なぜ日本はそんな危機にあると危惧しているのか。

先述のように、明治日本の政治家たちは欧米ルールに組み込まれ、日本狙い撃ちの国際秩序が高まると、既得権益のリーダーたちは外敵を作り、国民の不満を海外に向ける。

まさに戦後、中国や韓国のリーダーが採った手法と同じである。


しかし今の日本でこんな手法は絶対に通用しない上に、リベラルが幅を利かせるマスコミがそんな世論形成など、絶対に許さない。

ごまかしのガス抜きで国民の“団結”をはかるなど、不可能ということである。するとどうなるか。


明治日本では79年目、敗戦により国が崩壊した。

戦後日本では80年目、自公政権の過半数割れが発生した。


これは既得権益の暴走と破壊がハードランディングするか、それともソフトランディングするかの違いでしか無く、まさに瀬戸際ではないのか。

にもかかわらず、今も自民・公明の与党は増税と再配分にこだわり、減税に徹底抵抗している。


その結果、ヘイトの行き先は財務省のSNSに向かいはじめ、荒らされるなど、キナ臭い世相になってきた。

それでも政治が変わらず、政治的意思決定の構造が維持されるのであれば、この国はハードランディングを迎えざるを得ないのではないかと、危惧しているということだ。


そういえば、韓国・尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領の戒厳令に対し市民が結集し、その企てを阻止したことについて、こんな書き込みがSNSで目立った。

「韓国では民主主義が根付いていて羨ましい」

民主主義が根付いていればこんな政変も起こり得ず、“無秩序”が政治を変えることなどありえないので、その解釈は間違えている。ただし、国民が強い意志で政治に意見をする行動力については、素晴らしいと思う。


その上で日本でも、実は国民が怒り狂った時には、同じような行動力を発揮している。

古く江戸時代には、一揆をはじめとする一般庶民の武装蜂起が頻発した。わずか120年ほど前の1905年には、日比谷騒擾(日比谷焼き討ち事件)が発生し、東京は政府施設や鉄道など社会インフラが焼かれ、大混乱に陥っている。


同じようなことが、そろそろ令和の日本でも発生し大規模な“内乱”が起きるのではないかと危惧するのは、考えすぎだろうか。

それほどに、今の政治は国民を舐めきっている。

***


【プロフィール】

桃野泰徳

大学卒業後、大和證券に勤務。
中堅メーカーなどでCFOを歴任し独立。

主な著書
『なぜこんな人が上司なのか』(新潮新書)
『自衛隊の最高幹部はどのように選ばれるのか』(週刊東洋経済)
など

先日、亡父のお墓参りに行ったら、花生けに一輪の小さなひまわりが供えられていました。
誰が供えたんだろう。冬のひまわりも、とてもキレイなものですね。

X(旧Twitter) :@ momod1997

facebook :桃野泰徳

Photo by:Stijn Swinnen

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