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【正直レポ】ヴィジュアル系が題材の映画『V.MARIA』は観ていいヤツなのか? 共感性羞恥とか大丈夫か? バンギャとギャ男が体を張った結果 → 1人脱落した

ロケットニュース24

「ヴィジュアル系(V系)を題材にした映画が制作されるらしい」という情報を耳にしたとき、瞬間的に「嫌だなぁ」と感じた。“自分が本当に好きなものを当事者じゃない人に扱われることに対する不安”は、どの界隈の愛好家も共通に抱くものだと思う。

むろん上手に扱ってくれるなら「めっちゃありがとう」なのだが、そうでなかった場合を想像すると、激しい共感性羞恥で今から泡吹いて倒れそうだ。どうしても1人で鑑賞する勇気がなかった私は、当サイトの田中ケッチャム先生に付き添いをお願いすることにした。

コタツ記事ライターとして知られるケッチャム先生、実は25年モノのギャ男(V系を愛好する男性)である。はたしてこの映画はV系ファンにとって「観て大丈夫なヤツ」か、はたまた「ダメなヤツ」なのか? 我々が体を張ってお伝えしよう!

・『V.MARIA』だってよ

問題の映画『V.MARIA(ヴィイマリア)』は現在、目黒シネマで2週間の限定ロードショー中(4月14日まで)。単館1日1回上映、しかもレイトショーのみ。割とハードモード。

不安を抱えながらも私が本作を観に行かなければならなかった理由……それは先月になって「作品の劇中歌と劇伴をSUGIZOさんが手がけた」という発表がされたから。

SUGIZOさんならびにSUGIZOさんが所属するバンドLUNA SEAは、私にとって「推し」だの「本命」だのといった概念を超越した唯一無二の存在=であり、いちおうV系得意ライターを名乗っている身の上として、さすがにスルーすることはできなかったのだ。

さて劇場へ到着し館内を見渡すと「客の半数くらいはSLAVE(スレイブ / LUNA SEAのファンの総称)だな」という印象であった。観ちゃダメなヤツだったとしても共に駆け抜けよう……そんな謎の仲間意識を感じつつ着席。

そして1時間半後……映画が終了。

そこから自分がどのようにして席を立ちロビーへ向かったのか、正直よく覚えていない。ふと我に返ったとき、私は近くにいたSLAVEのお姉さん(他人)をつかまえ「あなたはこの映画のオチを知っていてここへ来たのか?」と問い詰めているところであった。

・死ぬかと思った

まず先に本記事のテーマ「この作品はV系ファンが観ても大丈夫なヤツなのか」問題に関しては、「大丈夫なヤツだった」ことをご報告しておく。

V系ファン目線で見たとき「こんな状況、ありえる?」「んな奴いねーよ」等と感じるシーンはもちろんあったのだが、「エンタメに昇華させている以上、多少の誇張は仕方ないよね」と全然納得できる程度。よほど過敏な人でなければ共感性羞恥で倒れる心配はないと思う。

ただし……

問題は“ラスト10分の衝撃展開”であった。

個人的には映画『シックス・センス』くらいの衝撃を感じたラスト10分。ただ困ったことに、この衝撃は “少なくとも全アルバムを聴き込んでいる程度のレベルにあるLUNA SEAファン” にしか感じられないものだったのだ。

なんだかややこしい話になってしまったけれど、かくして気が動転した私はそのへんにいたSLAVEのお姉さん(他人)に話しかけるという奇行に走ったワケなのである。

──このラスト、ご存知でしたか?

スレ姉「はい。知っていました。ただ、それは試写会や早い段階で鑑賞した人がSNSでネタバレ発信したのを見てしまったためで……公式には、このラストは公表されていないはずです」

──そうなんですね……あっ! すみません、めまいが。

スレ姉「いや、知らなかったらビックリしますよね。SUGIZOさんが関わると発表されてから、ファンの間では『こういうラストになるのでは』と深読みしていた人もいたようですけど、本当にこういうことになって(笑)。観客のSLAVE率が異様に高いのは、そのせいもあるかと思います」

──ここまでLUNA SEA色が強いと、他のV系のファンの方が観たときにどう思うんだろう? と不安を感じるのですが。

スレ姉「そうですね。自分もSLAVEなのでそのへんは分かりませんが……少なくともSLAVEの間では『LUNA SEAファンなら絶対に観るべき』という話が広まりつつあるので、もはや “LUNA SEAファンのための映画” という解釈でもいいのかもしれないですね」

・ギャ男に委ねるしかない

「ヴィジュアル系の映画かと思ったら狂おしいほどLUNA SEAだった」という、予想外すぎる展開をみせた『V.MARIA』。いやぁ、これは困ったことになった。 “LUNA SEA大本命かつSUGIZOファン” である自分に、この映画の公平なジャッジを下すことは事実上不可能……。

仕方がないので、ここは “ギャ男だけどLUNA SEAが本命なわけではない” という立ち位置のケッチャム先生に全ての批評を丸投げすることにした。なおケッチャム先生が好きなバンドは筋肉少女帯、MALICE MIZER、PIERROTなど。うむ、ちょうどいい感じ。

ケッチャム先生(以下:ケ)「上演中、あまりに亀沢さんの挙動が不審だったので、てっきり泣いているのかと思っていました。アレは笑いをこらえていたんですね」

──いいシーンだったと思うんですが、ビックリしすぎて思わず笑ってしまいました。フィクションだとは分かりつつ、史実も多く混在している内容だったので、どうしても時空の歪みが気になってしまって。

「僕も細かいところがいちいち気になって、ところどころ体をくねらせながら観ていました。難しいところですが、1つだけ言えるのは“別にV系がテーマである必要はないストーリーだった”ってことです」

──それはマジでそう。ヒップホップ界隈でもアイドル界隈でも、同じ脚本でいけましたね。

「なので“LUNA SEAファンや90年代のV系シーンを生きた人がノスタルジックな気持ちになれる”という部分が、この作品の正しい観方なのではないか、と感じましたね」

・ギャ男、冷静に語る

ケッチャム先生がおっしゃる通り、作中には我々が実際に見てきた90年代V系シーンとは若干異なる描かれ方がされている箇所も多い。ただ、少しだけネタバレになってしまうので知りたくない人はここでタブを閉じていただきたいのだが、例えば……

「バンドを解散した元バンドマン、整骨院を開業しがち」

「そして新バンドを結成する際、女メンバー入れがち」

などといった妙にリアルな描写もみられ、「分かってやってんのか、それとも偶然なのか?」と観る者を混乱させる箇所も、また多いのである。ストーリーがやたら飛ぶので鑑賞中に推測や考察を余儀なくされるし、奥が深いぞ『V.MARIA』……!

──V系に全く興味のない人がこの作品を観たとして、V系に興味を持つでしょうか?

「自分もギャ男なのであくまで予想ですが、微妙かなぁと思います。V系界隈が実際より怖そうな感じに描かれている部分があるので、『V系界隈って嫌な世界なんだなぁ』みたいな楽しみ方はできるかもしれませんが。この作品をきっかけにV系に興味を持ってライブハウスに行くかというと、ちょっと想像できないですね」

──SLAVEじゃないギャ男として、今日、来てよかったですか?

「はい。 “鹿鳴館で撮影した映画を目黒で観るというアクティビティ” みたいな観点もありますし、経験として、来てよかったと思ってます」

──ギャ男のお友達に、この映画を勧めますか?

LUNA SEAのファンであれば勧めますが、そうでないなら正直『2000円払って観ろ』とは言えないです。90年代を生きたV系ファンなら1500円、それ以降の世代なら1000円が妥当ってとこですかね……」

・時間が足りやしねぇ

と、ここまで話したところで終電の時間がきてしまった。結論として『V.MARIA』は……

LUNA SEAが好きな人=必見
90年代のV系ファン=それなりに楽しめる
それ以外のV系ファン=興味があれば……
V系に興味がない人=一切の責任は負いかねます

といった感じでありました。

それはそうと、バンギャ・ギャ男共通の見解として、本作を観るうえで何より重要なことがある。それは“2人以上での鑑賞を強く推奨する”ということ。ケッチャム先生と『V.MARIA』の感想を語り合うだけで、軽く5時間は過ごせる自信がある。なぜ、なぜレイトショーしか無いというのか……?

先述の “SNSでネタバレ発信しちゃった人” を擁護するつもりはないが、予想だけどその人、1人で観ちゃったんじゃないかなぁ? これほどツッコミどころ満載の映画を観せられて「黙っていろ」というのはあまりに酷。

本作最大の醍醐味は「観終わったあとに友達とあーだこーだ語り合い、ノリでカラオケとか行っちゃうこと(もちろんV系しばり)」だ。これだけは間違いない。

愛するSUGIZOさんが関わった作品に若干物申す感じの記事になってしまい震えが止まらないのだが……個人的には本作品について「V系ファン・V系に興味がない人の両方を取り込もうとした結果、どっちつかずな感じになってしまったのでは?」と推測している次第である。

V系がテーマで、このキャストで、SUGIZOさん全面協力で、アレもアレも使っていい……という条件下であれば、うまくすれば日本のV系ファンが全員観るくらいの作品に仕上がった可能性は全然あったと思う。もし次回作『V.ROSIER(仮)』が制作されるなら、私にも監修、させてくんねぇかなぁ……(上目遣い)。

とまぁ、色々言ったし他にも言いたいことは死ぬほどあるけれど、私はLUNA SEAならびにSUGIZOさんのファンなので、この作品を劇場で鑑賞できて本当によかったと思っている。目黒シネマでの『V.MARIA』の公開は今月14日(月)まで。その後の拡大上映などは現在のところ不明だが、まぁ何かしらの手段で鑑賞することは可能だろう。

最後に、この映画のオチをまだ知らないSLAVEへ……悪いこと言わないから、今すぐ一切の情報を遮断して映画館へGOすることをオススメする。ビックリするわよ、マジで。

参考リンク:目黒シネマ
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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