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塩だけで旨い! 組み合わせの妙を楽しむ「スパイス入り春巻き3種」レスキューレシピ【スパイス編】

料理通信

日本の食品ロス量は年間472万トン*と言われています。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピをシェフに教わる連載「レスキューレシピ」。今月のテーマは【スパイス】です。火の通りやすい具材と組み合わせて春巻きに仕立てることで、食べた瞬間、新鮮な驚きが口の中に広がります。

*農林水産省「食品ロス量(令和4年度)」(前年度比-51万トン)


教えてくれた人:料理家 冷水希三子さん

レストランやカフェ勤務を経て、フードコーディネーターとして独立。ハーブや季節の野菜などをふんだんに使ったサラダやスープが得意。著書に『さっと煮サラダ』『スープとパン』(共にグラフィック社)などがある。
https://kimiko-hiyamizu.com/


巻き終わりのホールスパイスで味にメリハリを

シンプルな味付けの中に、スパイスやハーブを効果的に使ったレシピが人気の料理家・冷水希三子さん。一人のときはほとんど揚げものをしないという冷水さんだが、友人を呼んでホームパーティをする際は必ず1品揚げものを作る。


「揚げものならではの“サクッ”“バリッ”とした食感や油のコクには、煮る、焼くといった他の調理法では出せない、独特の魅力があります。揚げものは食事の流れにメリハリをつけてくれるんです」


数ある揚げものの中でも、春巻きは少し特殊な存在。粉や液状の衣ではなく、形のしっかりした皮で具を包む。一度にたくさん揚げてもくっつかないから少ない油で揚げられるし、崩れにくくて、実は初心者向きの揚げものなのだ。


そんな春巻きに、冷水さんらしいひと工夫が、ホールスパイスを皮の巻き終わりに散らして揚げるワザ。パウダーを混ぜると具全体がスパイスに染まってしまうが、ホールスパイスを使えば味わいにコントラストが付く。さらに、油で熱すると香りが立つスパイスの
特性を生かし、表面に近いところに包むことで、より一層香り高く、食べた時に弾けるようなスパイスの香りを感じられる。


失敗しない春巻きのコツは、火の通りやすい具材を選ぶこと。エビやササミなら、皮をパリッと揚げる間にふんわり蒸されて、プリッフワッな食感を楽しめる。水分の多い具は片栗粉をまぶしたり、ハーブや生ハムで巻いてから包むといい。フルーツやトマトを入れる際は、高温で一気に揚げてみずみずしさを残すのがコツだ。


スパイスが加われば、春巻きのバリエーションは何倍にも広がる。自由な発想を巻いて楽しもう。


冷水流 春巻きのコツ

1.具材:火の通りやすいものを


肉は火が入りやすいよう細切りにする。食べ応えも残したいので、細かく刻み過ぎないこと。細長く切れば包みやすくもなる。火を通さなくても食べられる野菜や果物を具に選ぶのも一つの手だ。


2.下拵え:片栗粉で水分を閉じ込める


春巻きの敵は水分。具材から水分が滲み出ると皮が破けたり、油はねの原因に。肉や魚介類は塩、酒で下味を付けたのち、片栗粉をまぶして水分を閉じ込める。肉もしっとり仕上がる。


3.巻き方:具を束ねてから巻き、スパイスは巻き終わりに


バジルの葉や生ハムで具を束ねてから皮で巻くと巻きやすい。スパイスは具に混ぜずに巻き終わりに散らして包むことで、味わいが単調にならず、スパイスの香りが立ちやすくなる。


4.道具:厚さのある鉄製の鍋


冷水さんが揚げものに使うのは、厚みのある鉄製の鍋。温度が下がりにくい上、油が馴染んでいるので、揚げ物が底にくっつかないのが利点。


5.揚げ方:鍋にびっしり並べて揚げる


春巻きは、天ぷらなどと違い一度にたくさん入れてもくっつかない。ジャストサイズの鍋にきっちり並べて揚げることで、油に深さも出て少ない油で揚げられる。用意する油の深さはおよそ1~2㎝。温度がわからない場合は、1本入れてみて周囲が泡立ってから他の春巻きを入れればOK。揚げ時間の目安は2~3分。


「ササミとエリンギ×クミンの春巻き」の材料と作り方

[材料](4本分)
ササミ・・・2本
塩・・・少量
 酒・・・小さじ1/2
 片栗粉・・・小さじ1
エリンギ(長さ約5㎝、太さ5㎜の細切り)・・・1本
バジルの葉・・・4枚(小さければ8枚)
春巻きの皮・・・4枚
クミンシード・・・適量
薄力粉(水適量で溶いておく)・・・適量
米油・・・適量


[作り方]
[1]ササミを切る
ササミは筋を取り、半分の長さに切ってから太さ5㎜に細く切る。


[2]下味をつける
をボウルに入れ、を順番に加えて揉み込む。


[3]巻く
バジルにササミ、エリンギをのせて春巻きの皮で巻く。巻き終わりの縁に水溶き薄力粉を塗り、クミンシードを散らして巻く。【POINT】巻き終わりにホールスパイスを置くことで、揚げている間にテンパリングされて香りが引き出される。


[4]揚げる


鍋に米油を熱し、スパイスを仕込んだ巻き終わりを下にして、中火で全体がキツネ色になるまで揚げる。【POINT】巻き終わりを下にして揚げ始めると、形が崩れず、スパイスの香りも立ちやすい。写真のように縁が茶色くなってきたら裏返し、全体がムラなく色付くように、時々回しながら揚げる。


[6]仕上げ
好みで塩を添えて食べる。


淡白ながら旨味のあるササミとエリンギをバジルで包み、どんな食材にも合わせやすいクミンでアクセントを。皮で包んで揚げることで、中で蒸されてササミもふんわり仕上がる。ひと口齧るとクミンが香り立ち、バジルのフレッシュな香りが追いかけてくる爽やかな食べ心地。


「海老と黄ニラ×花椒の春巻き」の材料と作り方

[材料](4本分)
エビ・・・5尾
塩・・・少量
 酒・・・小さじ1/2
 片栗粉・・・小さじ1
黄ニラ(2㎝幅に切る)・・・1束
春巻きの皮・・・4枚
花椒・・・適量
薄力粉(水適量で溶いておく)・・・適量
米油・・・適量
塩・・・適量


[作り方]
[1]エビの下処理をする
エビは殻を剥き、背ワタを取ってひと口大に切る。


[2]エビに下味をつける
を順番に揉み込む。


[3]花椒を砕く
花椒は紙で包み、瓶の底などで叩いて軽く砕く。


[4]巻く
春巻きの皮に2と黄ニラをのせて巻き、巻き終わりの縁に水溶き薄力粉を塗り3を散らして巻く。


[5]揚げる
鍋に米油を熱し、スパイスを仕込んだ巻き終わりを下にして、中火で全体がきつね色になるまで揚げる。


[6]仕上げ
好みで塩を添えて食べる。


食べ応えのある大ぶりのエビに、シャキシャキの黄ニラと清涼感のある花椒の香りを合わせた、気品ある組み合わせ。エビのオレンジと黄ニラのグリーンが目にも美しい。花椒は揚げることで辛味が抜け、華やかな香りだけを楽しめる。


「無花果と生ハム×アニスシードの春巻き」の材料と作り方

[材料](6本分)
イチジク(くし切り)・・・2個
生ハムスライス・・・4枚
春巻きの皮・・・4枚
アニスシード・・・適量
薄力粉(水適量で溶いておく)・・・適量
米油・・・適量


[作り方]
[1]イチジクを生ハムで包む


イチジク2切れを並べて生ハムで包む。【POINT】水分の多いイチジクは先に生ハムで包んでから皮で巻き、皮が水分を吸うのを防ぐ。巻いたらすぐに揚げること。生でも食べられる具材なので、高温で一気に揚げて皮に揚げ色がついたらすぐに引き上げる。


[2]巻く
春巻きの皮にのせて巻き、巻き終わりの縁に水溶き薄力粉を塗りアニスシードを散らして巻く。


[3]高温で揚げる
鍋に米油を熱し、高めの温度で揚げ始め、中火で全体がキツネ色になるまで1分ほどで揚げる。


みずみずしいイチジクの青臭さが生ハムの濃厚な旨味と合わさり、 ワインが飲みたくなる味わい。皮の中で蒸されたイチジクはとろっ と軟らかく甘味を増す。鼻に抜けるアニスシードの華やかな香りが、 全体をまとめるアクセントに。


(雑誌『料理通信』2019年11月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)


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