天神・博多に続く福岡市都心開発の〝第三極〟渡辺通エリアから始まる新たなまちづくり『(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト』
西鉄福岡天神駅から南東へ約1キロ、JR博多駅から南西へ約1.5キロに位置する渡辺通四つ角━━。九州でも有数の交通量を誇る四つ角の北側は、地元の偉人・渡辺與八郎に因んだ地名である『渡辺通』と呼ばれるエリアです。同エリアの西側に位置する渡辺通二丁目から新たなまちづくりが動き出していきます。
福岡市都心再開発の〝第三極〟渡辺通エリアとはどんな街なのか
出所:『(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト』説明資料
西鉄福岡天神駅近くの天神四つ角を基点とした『天神ビッグバン』、博多駅を起点とする『博多コネクティッド』━━━。
天神ビッグバン、博多コネクティッドに代表される福岡市都心部での再開発事業において、新たな第三極として注目を集めているのが渡辺通エリアだ。
同エリアは、九州電力株式会社が本店を構えて関連会社も数多く集積している地域でもある。
また、同エリア内には、数多くのに加え、も多く、さらに交通結節点としても多いという〝職住遊〟のユニークな地区だ。
は、渡辺通二丁目1キロ圈内だけで従業者数12万7000人を数える。
また、同エリアおよび周辺では、渡辺通二丁目1キロ圈内の徒歩圏に6万2000人が住む。
さらに同3キロ圈内の自転車圈人口は37万1000人に上る。
一方、交通要衝の同エリアには、オフィスやマンションが立ち並ぶ〝滞留の拠点〟であり、も多い。
中でも地下鉄七隈線沿いに福岡大学と中村学園大学、天神大牟田線沿線に九州大学大橋キャンパスや筑紫女学園大学などがあり、バス路線で九州大学伊都キャンパスや西南学院大学などを結び、若者らの往来も活発だ。
九州電力株式会社都市開発事業本部の田中義人・不動産開発プロジェクトグループ長は、『(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト』について、次のように解説する。
田中義人・九州電力都市開発事業本部グループ長
『(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト』は、2005年12月に決定した『渡辺通2丁目地区 地区計画』の第3期事業であり、電気ビル北館、同共創館に続く開発プロジェクトです。
(仮称)渡辺通二丁目プロジェクトとして新たに建設するオフィスビルでは、グループの再生可能エネルギー発電所などからの電気利用でCO2排出量実質ゼロを目指していきます。
そして、新しい働き方にも対応した快適なビジネス空間を入居企業やビジネスパーソンらに提供していきたいと考えます。
また、地域に開かれた天然芝広場やカフェ棟なども設ける(仮称)渡辺通二丁目プロジェクトでは、みなさまにゆったりとした大人の時間・空間を楽しんでいただけます。
そして、多彩で多様な人々がつどい集まって来ることを通じて、渡辺通らしい新たなにぎわいも創出できるのではないでしょうか。
九州電力株式会社都市開発事業本部の田中義人・不動産開発プロジェクトグループ長
一方、長年にわたって同地で喫茶店『珈琲ふじた』を営みながら、渡辺通二丁目三区 四丁目一区自治会長も務める藤田康夫さんは、渡辺通地区の魅力や可能性について次のように語る。
渡辺通二丁目三区 四丁目一区自治会の藤田康夫会長
渡辺通エリアは暮らしやすい街であり、交通の便が非常に良いところです。
私自身、渡辺通2丁目で喫茶店を始めて43年目となり、家族で移り住んで37、8年の歳月が経ちました。
長年、自治会長を務める中、渡辺通エリアは清潔で品のある街だと実感しています。
天神や博多駅と異なり、渡辺通エリアに住んでいる方々も多く、平日はオフィス街でありながら、週末は閑静な住宅街という趣のある街です。
その一方で、渡辺通エリアに公園が少なく、『渡辺通二丁目プロジェクト』で計画されている天然芝広場は楽しみであり、災害時には地域住民の避難先としても有難い存在だと思います。
そして、天然芝広場をはじめ新たな施設に人々が集い、交流・共創していくことで渡辺通エリアにふさわしい〝知的な空間〟も創造していくようなまちづくりに期待しています。
渡辺通二丁目三区 四丁目一区自治会長の藤田康夫会長
CO2排出実質ゼロの新ビルと広場からなる『(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト』
出典:『渡辺通Note』(イラストレーション:火詩)
「協働・共創の促進」「脱炭素ビルへの挑戦」「地域との共生」━━。
九州電力株式会社、株式会社電気ビル、株式会社十八親和銀行(ふくおかフィナンシャルグループ傘下)、福岡商事株式会社の4社が、渡辺通二丁目エリアにおいて取り組む再開発〝共創〟事業が、『(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト』だ。
同プロジェクトでは、再生可能エネルギー利用でCO2排出を実質ゼロにする新オフィスビルと、隣接する大規模な天然芝広場で構成されている。
沿道の魅力づくりをはじめ、賑わい創出や交流促進などに取り組む同プロジェクトでは、社会課題や環境課題の解決、地域活性化による持続可能な社会の実現を目指すとする。
電気ビル共創館の西側にほぼ同規模で建設する新オフィスビルは、2025年度中の着工を目指しており、既存4ビルと併せると完成後は約1万人の就業者数を見込む。
広場も含めたグランドオープン時は、既存ビル内の500人収容のホール、カンファレンスルーム、クリニックゾーン、飲食店、各種公的機関等に加え、複数大型オフィスビルを結ぶ広場が存在する、福岡にはなかったビジネススクエアが誕生することになる。
天然芝広場がまちの賑わいや魅力、共創を創出
天然芝広場のイメージ図
(仮称)渡辺通二丁目プロジェクトにおいて、新オフィスビルと共に中核を担うのが天然芝広場だ。
広場の周辺や建物間のスペースには、多様なタイプのベンチやテーブルを配置し、憩いや語らいの空間も提供していく。
広場を使ったワークショップをはじめ、週末の朝市、マルシェなど、地域と一緒になって多彩なイベントを開催する考えだ。
そして、人々の交流や気づき、刺激の生まれる場になっていくことも期待されている。
ビジネスのあり方が、そしてワーカーの働き方が、より社外との連携を強める方向に代わる中、スクエア内では地域向けワークショップや大学のサテライトゼミも開催。
BtoBだけでなく、地域との共生を図っていきながら、当エリアの価値を高めていきたいという。
これらまちに開かれた空間づくりや交流の場を創出していくことで新たな価値を生み出す活動を〝つながるOpen Labo〟と称し、同コンセプトの下、地域に関わるいろいろな人たちと共に、今後に向けた〝新たな働き方・学び方・暮らしの楽しみ方〟を実践できる、まちづくりや環境整備を図っていくとする。
東京に本拠地を構える一方、福岡にも基盤を持ちながら、5年越しで渡辺通エリアのまちづくりを手掛けている株式会社aptpの滝口聡司代表取締役は、次のような見解を示す。
株式会社aptpの滝口聡司代表取締役
天神地区、博多駅地区という福岡市の二大拠点における都心再開発が進展していく中、〝第三極〟となる渡辺通エリアのまちづくりの意義は大きいと考えます。
従来の二極構造が、第三極の登場で〝鼎(かなえ)〟にも似たトライアングル構造となり、面的なつながりや広がりを生み出していくことも可能です。
そして、人々の暮らしや振る舞いにも考慮した渡辺通エリアでの新たなまちづくりは、いわば都市のリノベーションといえます。
今後のまちづくりにおいて、全国のいろいろな地域に水平展開可能なひとつの事例となることが期待されます。
株式会社aptpの滝口聡司代表取締役
2024年6月14日、渡辺通エリアのまちづくりをテーマに座談会開催
スペシャルゲストであるOpen A Ltd.の馬場正尊代表によるプレゼンテーション
「都市をリノベーションしていく」━━。
2024年6月14日、渡辺通エリアにおけるまちづくりをテーマとする座談会が開催された。
当日、会場となった福岡市・渡辺通4丁目のeスポーツ施設『esports Challenger’s Park』には、約80人の参加者が足を運んだ。
当日の座談会では、地元・福岡でまちづくりに取り組む専門家らに加え、在京の有識者らも登壇し、熱心なディスカッションを繰り広げた。
さらに来場者らからの質問や意見も積極的に取り上げるなど、今後の渡辺通エリアにおけるまちづくりについて語り合う場として、大いに盛り上がりをみせた。
今回の座談会を主催した『わたなべ―ス実行員会』では、渡辺通エリアのまちづくりのコンセプト案である〈街をみんなのキャンパスに!〉の実現に向けて、今後も対話や議論の機会をつくっていきたいとする。
当日の登壇者の一人であり、アーバンデザインや公共空間の活用などに詳しい九州大学大学院人間環境学研究院の黒瀨武史教授は、(仮称)渡辺通二丁目プロジェクトを核としたまちづくりについて、次のようにコメントする。
九州大学大学院の黒瀨武史教授
日本の大都市の再開発は、事業収支を中心に考えると、どの街でも、同じような用途構成のプロジェクトになること多いのが実態です。
渡辺通エリアは、薬院や春吉、高砂、清川といった個性的な地区に囲まれ、再開発が進む天神や博多駅周辺とは異なる魅力を備えていますが、区画ごとに個別に再開発するだけでは、このエリアの可能性を活かしきれない気がしています。
渡辺通エリアを〈どういう場所にしていくのか〉〈どんな人たちに来てもらいたいのか〉という議論を、地域の人たちとも一緒になって考えていく場を作り上げていくことは、まちの将来像を具体化するうえで極めて大切なプロセスです。
本日の座談会は、エリアの将来を考える作戦会議の場だったといえるでしょう。
渡辺通エリアは余白や伸び代も多い地域であり、多様な方々を巻き込んで、エリアを面白くする仕掛けが生まれ、エリアに実装されていくことに期待しています。
九州大学大学院人間環境学研究院の黒瀨武史教授
(仮称)渡辺通二丁目プロジェクトから始まる新たな都市再開発、まちづくりの挑戦
福岡市の都心再開発である天神ビッグバン、博多コネクティッドの両巨頭に対する第三極となる渡辺通のまちづくりは両者と一線を画した取り組みともいえる。
天神ビッグバン、博多コネクティッドは、いわばとに主眼を置いた再開発事業という見方もできる。
これに対して、第三極である(仮称)渡辺通二丁目プロジェクトでは、従来の都心再開発に無かった大規模広場やオープンラボ機能などを備えている。
さらにのみならず、にも配慮した新たなまちづくりとなっている点も特徴の一つとして挙げられる。
また、天神ビッグバン、博多コネクティッドという大規模な都心再開発は、天神エリアや博多駅エリアに限られる。
これに対して、(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト級の再開発は、多くの県庁所在地規模の都市において実現可能な取り組みといえる。
福岡市都心再開発の〝第三極〟である(仮称)渡辺通二丁目プロジェクトの取り組みについては今後、都市開発関係者や自治体関係者らからの注目が集まってくるものと考えている。
参照サイト
九電グループ、ふくおかフィナンシャルグループによる「(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト」が始動します -福岡都心に緑地広場を望むオフィスビルが誕生-
https://www.kyuden.co.jp/press_h230926-1.html
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