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新潟の鰻の名料亭【一〆】で技を学び、京都【未在】でもてなしの極意を習得した料理人が挑む新たな鰻懐石|【銀座 虎あら】

ヒトサラMAGAZINE

銀座虎あらの鰻料理

2025年6月にオープンした【銀座 虎あら】。店主の物江英明さんは、新潟の鰻の名料亭【一〆】で料理人のキャリアをスタートさせ、銀座で日本料理店の料理長を務めた人物です。しかしながら「もてなし」の極意を学ぶべく38歳で京都のミシュラン三つ星日本料理店【未在】に弟子入りし、8年の研鑽を積んだのち独立を果たしたのです。「目指すのは、思い入れの深い鰻料理と旬の食材で季節を堪能する懐石の融合」という目標を持つ物江さんにお店にかける想いを伺いました。

新潟、東京、京都の名店で研鑽を積んだ料理人が満を持して独立

店主・物江英明さんがキャリアをスタートしたのは故郷の新潟で150年以上続く鰻料理で有名な料亭【一〆】です。

「鰻を捌くのは大変なでしたが、親方から何があっても辛抱してれば必ず道は開ける」と、技術だけでなく精神的に大切なことの多くを教えていただきました」と謙虚な話し振りも魅力の物江さん。「5年半経った頃に“東京で経験を積んではどうか”と、日本料理店を出店していた岡山の【宗家 源吉兆庵】に親方自らが連れて行ってくれました」。

「正統な日本料理のコースの中に、自分なりに進化させた鰻料理を融合させて個性を出していきたい」と話す店主の物江英明さん

縁と義理を大切にする物江さんは【宗家 源吉兆庵】でも真摯に仕事に打ち込み、料理長を任されるまでになりました。13年経った38歳の時、独立する前に日本料理の真髄である“もてなし”を改めて学びたいと考えるようになったそうです。そして縁にも恵まれ、茶懐石をベースにした京都のミシュラン三つ星店の【未在】で働くことになったのです。

料理だけでなく、もてなしの真髄を理解するべく茶道も学び続けている
茶室に生けるような自然の情景を映す茶花を意識しながら物江さん自ら生けている

当初3年くらいで東京に戻って独立しようと考えていたそうですが、謙虚、かつ何事にも誠心誠意で向き合う物江さんだけに「料理はもちろん、設え、器、花の生け方など細部に至るまで、亭主の“もてなしの心”を宿らせる茶道を学べば学ぶほど奥深く気がついたら8年経っていた」とのことです。

「まだまだですが45歳を過ぎて、そろそろ独立するギリギリのタイミングかもと思っていたところ、銀座で、居抜きですが理想に近い設えの物件に出合い決心を固めました」。

美しい檜のカウンター、網代の天井など丁寧につくり込まれた設え

思い入れの深い鰻料理と茶懐石の融合目指して

18歳で料理人の道に入り、初めて〆た魚が鰻だった物江さん。

「生きたまま〆る鰻は、まな板の上で暴れます。活きがいいうえに長くてぬるぬるしているので当然指を切ることもしばしば。しかも鰻の血には毒素があるので、ジンジンとひどく傷んで夜眠れないこともあるなど慣れるまで本当に大変でした」。

鰻をまな板に目打ちして背開きに。手慣れた早業で骨を外し、串打ちをする物江さん

青春をうなぎに捧げただけに、思い入れも深く「コースの中で鰻料理を出す、ということが私のアイデンティティなのかもしれない」と物江さん。可愛がってくれた【一〆】の親方の恩に報いるためにもおいしい鰻料理でお客様をもてなしたい、という想いも込めながら、【未在】で研鑽を積んだ茶懐石の流れに則って緩急あるコースの構成を考えています。

『甘鯛と加茂茄子のお椀』。味に深みが出るよう、昆布と鰹でとっただしに甘鯛の頭と骨でとっただしも加えている
『夏の八寸』。岩もずくと雲丹、鱧の煮こごり、蛸の小口煮、白瓜酒盗和え、金時草お浸し、車海老甘つや煮、鰻寿司、稚鮎など2人分を大皿に盛り込みながら季節の風情を表現

旬の山海の幸を盛り込んだ八寸の多彩な美味を肴にゆっくりお酒を楽しむ間に、物江さんが捌きたての鰻を炭火で焼き始めます。最初は素焼き、そしてタレをくぐらせながら焼き進めるうちに炭火台から立ち上る煙と共に漂ってくる蒲焼ならではの香りに誰もが食欲をそそられるに違いありません。

まずは皮目から焼き始めじっくり脂を引き出す
それを返して、身がふっくらしてきたら
タレを3回ほどくぐらせ……
香ばしく焼き上げる

焼き上げた鰻は炊き立ての土鍋ご飯の上にのせて再度蓋をして少し蒸らします。
「“ひつまぶし”ではなく、こうやって土鍋の余熱でさらに鰻がふっくらする“土鍋まぶし”をうちの名物にしたかったんです」と物江さん。

焼きたての鰻をのせ、タレをかけて暫く蒸らしてからいただく『土鍋まぶし』
1杯目はそのままで、2杯目は京番茶を注いでもらい『うな茶』でいただくのがおすすめ

八寸に鰻寿司を盛り込んだり、時に鰻を炊いて旨煮にしたり、コースの中で3品程度の鰻料理を出しています。「今後は、こんな鰻料理もあるんだね」とお客様にもっと喜んでもらえる料理を生み出していきたいと試作を重ねているそうで、形になりそうなのが『鰻カツ』。
「生から揚げた方がいいのか、焼いて香ばしさを引き出してからがいいのかなど色々試しています」と目を輝かせて話す様子に、鰻への並々ならぬ愛情を感じることができます。

活きのいい鰻を目打ちにしてまな板に固定し、背開きにする
身を開いて骨の下に包丁を入れる

無駄なく骨をはずす
熱伝導で身の中まで火が入るよう金串を打つ

好み、気分に寄り添う多種多様なお酒が揃う

お酒は「お客様の好みや気分で選んでいただけるよう、できるだけ選択肢を多い品揃えを心がけています」と話す物江さん。日本酒は10種類ほど、ワインはブルゴーニュを中心に軽やかなものから重めのものまで揃っています。お酒選びに迷ってもサービスを取り仕切る女将の新井さんに相談すれば安心です。

日本酒は、品質の高い人気銘柄のものを中心に、季節酒なども取り揃えている

コースは、茶懐石の様式に則って、朱盃に店主・物江さん自らがお酒を一献振る舞うところから始まり、8〜10品ほどが目の前で仕上げられていきます。そして最後は、和菓子とともに物江さんが点てる薄茶をいただき、締めくくりとなります。

カウンターに紺の毛氈(もうせん)を敷き、その上でお茶を点てる物江さん
店名にちなみ「虎」にまつわる絵柄の抹茶茶碗をコレクションしている

「三つ星の【未在】出身ということもあって、【未在】の雰囲気、スタイルを期待されて来られるお客様もいらっしゃいます。しかしながら、同じことをするためではなく、よりよいおもてなし、精神性を磨くための修業でしたから、師匠から学んだことを活かしながらも“独自性”を追究し、お客様に『また来たいね』と思われる料理、おもてなしができるよう精進していきたいです。まだまだスタート地点に立ったばかりですから」と物江さん。物腰やわらかく控え目な人柄ながらもその闘志は熱く、会話を重ねていくうちに勇壮な虎と愛らしいコアラを重ねた店名の意図が見えてきました。

また、お店のオープンに合わせてつくった鰻のタレは、今後浸けて足してを繰り返すうちに味わいも深まっていきます。「鰻料亭で修業していた頃はそのお店の味でしたが、これから自分のタレがどのように深化していくのか、私自身も楽しみです」と物江さん。人柄にも料理にも通うほどに愛着が湧き、行きつけにしたくなる。そんな魅力に溢れています。

■店舗概要
店名:【銀座 虎あら(ぎんざ こあら)】
住所:東京都中央区銀座8丁目7-7 JUNO銀座誠和ビル 3F
電話番号:03-6263-8873
メニュー:季節のおまかせ(8〜10品程度) 28,000円(税込・サ別)
営業時間:18:00〜/20:30〜 ※一斉スタート
定休日:なし

銀座 虎あら

【電話】03-6263-8873
【住所】中央区銀座8-7-7 JUNO銀座誠和ビル 3F
【エリア】新橋/汐留
【ジャンル】日本料理・懐石・会席
【ランチ平均予算】-
【ディナー平均予算】30,000円 ~

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