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【事例あり】老人ホームの人間関係トラブル、こんなときどうする? 解決策、予防方法を解説

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

高齢のご家族がいらっしゃる場合、「そろそろ老人ホームを検討しようかな」と考えはじめている方も多いのではないでしょうか。

専門スタッフが24時間体制で介護してくれる安心感、充実した設備、そして同世代の方々と楽しく交流できる場所として、老人ホームは魅力的な選択肢の一つです。

そんな時、気になることの一つが「人間関係」ではないでしょうか。

「母は新しい環境で上手くやっていけるかな…」

「他の入居者の方とトラブルにならないかな」

そんな不安を抱えているご家族は少なくありません。

実際、共同生活の場である老人ホームでは、生活習慣や価値観の違いから、さまざまな人間関係のトラブルが起きているのも事実です。

しかし、事前に起こりうるトラブルを知り、適切な対策を講じることで、多くのトラブルは防ぐことができます。

この記事では、老人ホームで実際に起きているトラブル事例とその対処法について、具体的に解説します。

老人ホームで起こりやすいトラブル事例とその特徴

老人ホームでは、複数の人が「一つ屋根の下」で生活するため、さまざまな人間関係のトラブルが発生します。ここでは、実際の事例を基に、どのようなトラブルが起きているのかを見ていきましょう。

入居者同士の距離感と悪口に関するトラブル事例

入居者同士の関係で最も多いのが、生活習慣や価値観の違いによるトラブルです。

【事例①食堂での席をめぐるトラブル】

毎日決まったテーブル・席に座りたいAさん。ですがある日、Aさんお気に入りの席には先にBさんが座っていました。どうしても同じ席に座りたかったAさんは、「ここは自分の場所だ」とBさんに強い調子で主張し、席を移動するよう促しました。

ですがBさんは「固定席が決まっているわけではない」と反論し、険悪なムードに。実際には席に関する規定はないのですが、周囲もこの「場所取り」を暗黙の了解として感じていたことから、これまで表面化していなかった不満や悪口が飛び交うようになってしまいました。

【事例②趣味のグループでの仲間外れ】

DさんとEさんは俳句サークル仲間でしたが、ちょっとした意見の相違から険悪になってしまいました。EさんはDさんに直接文句を言うのが苦手で、他のサークルメンバーに「Dさんは頑固だし、一緒にやりたくない」と愚痴るように。

その結果、Dさんが参加しようとすると「もう今は集まりが終わった」と嘘を言って追い返し、Dさんはひとりぼっちに。陰湿ないじめに近い状況となりました。

【事例③個室訪問をめぐるプライベート侵害】

Hさんはおしゃべり好きで、近所の部屋に暮らすIさんを何度も訪問していました。Iさんは気をつかって応対していましたが、やはり一人で静かに過ごしたいときもあります。

ストレスを抱えたIさんは、「Hさんは人のこと考えないで勝手に部屋へ来る」「迷惑だ」と周囲に不満を言い始めました。それを聞いたHさんは「陰でそんな悪口を言われた」と怒り、関係がこじれてしまったのです。

認知症に起因するトラブル事例

認知症特有の記憶障害や見当識障害、被害妄想・幻覚などの症状があると、どうしても他者との意思疎通が難しくなり、小さな誤解や行き違いが大きなトラブルに発展しがちです。

【事例④大声を出す・暴言・暴力】

認知症が進んだCさんは、ほんの些細なことで急に怒り出して大声を上げたり、近くの人に掴みかかったりしてしまいます。

周囲の入居者が怖がって離れていくため、Cさんはさらに不安定になるという悪循環が発生し、トラブルが常態化。対応に当たったスタッフや入居者が怪我を負うこともあり、周囲から「Cさんには関わりたくない」と敬遠され、孤立が進んでしまいました。

【事例⑤周囲を泥棒扱いする・被害妄想】

認知症による記憶障害・混乱が原因で、物の所在を思い出せず「取られた」と思い込みやすいAさん。

ある日、「自分の財布がなくなった」「大事なネックレスが消えた」と訴え、同室や近隣の入居者、さらにはスタッフを“泥棒”扱いしてしまいます。実際にはAさんが別の場所に片づけて忘れていただけでしたが、疑いをかけられた相手もショックを受け、険悪な関係になってしまいました。

恋愛感情に起因するトラブル事例

高齢者の間でも恋愛感情が芽生えることは珍しくありません。ですが、施設内では毎日顔を合わせるため、恋愛感情がこじれると逃げ場がなく、精神的負担が増加してしまいます。

【事例⑥嫉妬からいやがらせに発展】

CさんはDさんに好意を寄せていて、積極的に話しかけたり手紙を書いたりしていました。

一方、Dさんはまったくその気がなく、別のEさんと仲良く交流中。CさんはDさんとEさんが一緒にいるところを見かけるたびに嫉妬し、周囲に「Eさんは計算高くてDさんを利用しているだけだ」と悪口を言うように。

DさんはCさんのアプローチに苦痛を感じており、Eさんも巻き込まれて迷惑している状態です。

老人ホームのトラブルを未然に防ぐための対策

トラブルの多くは、事前の対策で防ぐことができます。入居前の準備から、施設選びのポイント、そして家族ができる対策まで、具体的に見ていきましょう。

入居前にご本人の状況を正直に伝えておく

入居前に最も重要なのは、ご本人の性格や習慣、健康状態を施設側に正確に伝えることです。「自分のテリトリーに入られたくない」「人と一緒に食事をするのが苦手」といった特徴や、これまでのトラブル歴などを包み隠さず伝えることで、施設側も適切な対応を検討できます。

例えば、ある施設では、入居前に家族から「父は元会社役員で、指示することに慣れている」という情報を得たことで、他の入居者との関係づくりに特に配慮し、スムーズな入居生活につなげることができました。

また、認知症で記憶障害や見当識障害がある場合、あらかじめ伝えておくことが必須です。受け入れ体制の整っていない施設に無理に入居してしまうと、実際に生活が始まってから他の入居者とのトラブルが発生し、結果的にご本人にとっても周囲にとっても不幸な状況になってしまいます。

正直に状況を伝えることで、入居後にやっていけそうかを施設側と擦り合わせ、難しい場合には他の施設を検討することで、ご本人にとって適切な環境を選択することができるのです。

トラブルへの対応力のある施設を選ぶ

施設選びの際は、トラブル対応の体制が整っているかどうかを重点的にチェックすることが大切です。具体的には以下の点に着目しましょう。

第一に、スタッフの対応力です。入居者同士のトラブルに対して、どのような予防策や解決策を持っているのか、具体的に説明を求めましょう。入居者の性格や相性を考慮した居室配置を行っているか、トラブルの芽を早期に発見する仕組みがあるかなども重要なポイントです。

また、ご家族が認知症の場合には、担当医や専門スタッフとの連携はされているか、認知症ケアのトレーニングを受けた職員が十分にいるかも必ず確認しておきましょう。

第二に、相談体制の充実度です。入居者や家族が気軽に相談できる窓口があるか、定期的な意見交換の場が設けられているかを確認します。また、スタッフ間のコミュニケーションが良好で、情報共有が適切に行われているかも重要です。

定期的にご本人の状況を確認する

もしもトラブルになりかかっている場合、ご家族が早めに介入することで深刻な自体となることを回避できる可能性が高まります。

定期的な面会や電話でのコミュニケーションを通じて、入居者の様子を把握し、変化に早めに気付くことが大切です。

重要なのは、入居者本人の話をしっかりと聞く姿勢です。些細な不満や心配事でも、話を聞いてもらえることで気持ちが軽くなり、トラブルの芽を摘むことができます。

また、施設のスタッフとの良好な関係づくりも欠かせません。日頃から情報交換を密にし、入居者の様子や気になる点を共有することで、トラブルの予防や早期発見につながります。

老人ホームでトラブルが発生した際の具体的な解決方法

これまでトラブルの予防について述べてきましたが、それでは、実際にトラブルが発生してしまった場合はどのように対応すべきなのでしょうか?

ここでは、具体的な解決方法と、状況に応じた対応手順を解説します。

トラブル発生時の基本的な対応手順

トラブルへの対応は、段階を追って進めることが重要です。

まず最初は、現場のスタッフへの相談から始めます。スタッフは日々の様子を把握しており、多くの場合、適切な対応策を提案してくれます。

例えば、入居者同士の悪口や言い争いが発生した場合、まずはスタッフに状況を詳しく説明します。スタッフは双方の言い分を聞き、必要に応じて食事の時間をずらしたり、レクリエーションの組み合わせを工夫したりするなど、物理的な対策を講じることができます。

スタッフレベルで解決が難しい場合は、施設長や介護支援専門員(ケアマネージャー)に相談します。より専門的な立場から、解決策を提案してもらうことが可能です。

施設・スタッフとの効果的な相談・交渉方法

施設側と相談する際は、感情的にならず、客観的な事実を基に話し合うことが大切です。まずは、いつ、どこで、どのようなトラブルが起きたのかを時系列で整理します。

また、本人や家族が希望する解決策についても、具体的に提案することが効果的です。「トラブルを解消してほしい」という漠然とした要望ではなく、「食事の時間をずらしてほしい」「別のフロアへの移動を検討してほしい」など、具体的な要望を伝えることで、施設側も対応しやすくなります。

さらに、定期的なフォローアップも重要です。対策を講じた後も、状況が改善されているか、新たな問題は発生していないかを確認し、必要に応じて対応策を見直していく姿勢が大切です。

専門機関に相談するケースと手続き方法

施設内での解決が難しい場合は、外部の専門機関に相談することも検討します。主な相談先としては以下があります。

第一に挙げられるのは、自治体の介護保険課や地域包括支援センターです。これらの窓口では、介護保険に関するさまざまな相談を受け付けているため、施設とのトラブルや疑問点についても相談に乗ってくれます。

公的機関ならではの中立性が期待できますし、施設の運営や介護サービスの質に関する指摘や要望を、専門的な立場で整理してもらえるはずです。

第二の相談先としては、都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)があります。国保連は介護保険法に基づく苦情処理機関としての役割を持ち、公平・中立な立場で問題解決をサポートしてくれるのが特徴です。施設側と入居者側の意見が真っ向から対立している場合など、当事者間だけではまとまらないケースで役立ちます。

介護保険制度の運用に深く関わっているため、法的根拠や規定に基づいた助言を受けられます。

第三に、第三者委員会や福祉オンブズマンなどの外部機関への相談が考えられます。これらの機関は、行政や施設からも独立しているため、公正な判断やアドバイスを受けられます。

施設の運営方針や家族・本人の希望などを総合的に考慮し、解決に向けた具体的な調整を担う場合もあります。

ただし、こうした外部機関に相談するのは、あくまでも「施設との直接的な話し合いではどうにもならない」という場合の最終手段に近いと言えます。

早期の段階で外部機関に持ち込むと、かえって施設との関係が硬化し、話し合いが難しくなる可能性もあります。

そのため、まずは施設の管理者や担当のケアマネージャーと十分にコミュニケーションを図り、話し合いの場を設けて状況の改善を試みることが望ましいでしょう。

まとめ

老人ホームは、人生の新しいステージを過ごす大切な場所です。

もちろん、共同生活ですから、時には人間関係で悩むこともあるでしょう。

でも、それは決して特別なことではありません。むしろ、人と関わり合い、笑い合い、時には意見を交わし合える。そんな「普通の暮らし」があるからこそ、老人ホームは単なる施設ではなく、もう一つの「家」となるのです。

大切なのは、起こりうる問題に対して、ご本人も、ご家族も、施設も、みんなで向き合う姿勢を持つこと。

そうすることで、老人ホームでの生活は、新しい出会いと発見に満ちた、豊かな時間となるはずです。この記事が、そんな前向きな一歩を踏み出すためのヒントとなれば幸いです。

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