生麦事件参考館 再開に向け、有志が奔走 市助成金の確保目指す
生麦事件の貴重な資料などを集めた私設の「生麦事件参考館」=生麦1丁目=の館長亡き後、その意思を継承しようと地元住民や歴史団体が再開を目指して動き始めた。館の修繕費確保や活動を広げるために横浜市の助成支援「まち普請事業」に応募。7月末に行われた第1次審査を通過し、来年1月の最終審査に向け、関係者たちが協議を続けている。
大名行列に立ち入った英国人4人を薩摩藩士が殺傷し、のちの日本開国に大きな影響を与えたとして知られる生麦事件。生麦事件参考館は、浅海武夫さんが「地元の責任として記録を残しておかなければ」と、1994年に自宅敷地内に開館。国内外から集めた生麦事件の錦絵や写真、文献など約150点を展示する貴重な資料館だった。
それから約20年。大人だけでなく、地元小学生も課外授業で訪れるなど親しまれてきた同館だったが、浅海さんが昨年1月に亡くなり、閉館していた。
しかし、閉館後、再開を求める声が歴史同好者団体「鶴見歴史の会」に多く寄せられ、同会が遺族に相談。「ぜひ父の遺志を活かしてほしい」と同館を残すことに賛同してくれた。そして同会は再開に向けて鶴見区役所に相談。地域の魅力向上などに貢献する施設整備に最大500万円が助成される横浜市の「まち普請事業」への応募を提案された。また、地元自治会や商店街、団体にも協力を求め、実行委を結成。委員長を務める生麦第一地区連合会の石川建治会長は「参考館はまちの貴重な財産。歴史を後世に伝えるためにも、再生を目指して皆さんと協力してきたい」と話す。
次世代に歴史の伝達を
「生麦事件参考館リユースプロジェクト」と銘打って実行委が目指すのは、「歴史でつなぐ多文化共生・多世代交流のまちづくり」。浅海さんの遺志を継ぎ、次世代に歴史を伝達し、地域への愛着や誇り、一体感を育む拠点づくりを目指す。
老朽化した同館を改修し、資料展示のほか、住民が集える場、学校や大学との連携、地域イベントとの協力も計画。歴史と地域の特性を生かしたまちづくりを行っていきたいとしている。実行委の1人で、生麦盛り上げ隊の隊長を務める松野良明さんは「浅海さんには赤ん坊の頃からお世話になった。浅海さんは『生麦事件は不幸なことばかりではなく、日本の近代国家成立の発端となった重要な出来事。その意義を多くの人に正しく知ってほしい』と常々話していた。地元としてその遺志を継ぎ、生麦の誇りとなるよう皆さんと協力していきたい」と話した。
実行委では来年1月の2次審査に向けて運営方法などで更に協議を重ねながら、協力者も募り、活動の幅を広げていきたいとしている。