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15種の新種&推定7000歳のサンゴ群を発見! 沖合深海底の<海洋保護区>から希少な生物が多数見つかる

サカナト

海底広域研究船「かいめい」(提供:PhotoAC)

2020年に新たに指定された、沖合深海底の海洋保護区に関するモニタリング調査を実施している国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、これまでの調査で15種の新種に加え、数多くの希少種を報告しています。

【画像】沖縄・大東諸島の深海洞窟から見つかった日本初記録の魚

また、調査の結果、保護区の大部分は人為的な影響が少ないことに加え、健全性が高い状態であることから、保護区としての役割を発揮していることを明らかにしました。

沖合海底自然環境保全地域とは

沖合海底自然環境保全地域とは、自然環境保全法に基づき、2020年12月に指定された沖合深海底の海洋保護区です。

2010年に愛知県で開催された「生物多様性条約 第10回締約国会議」で、加盟国は愛知目標の一つとして、陸地の17%、海域の10%以上を保護地域として保全することが定められました。

当時、日本が管轄する海域の保護区は8.3%でしたが、2020年、自然環境保全法に基づき日本海溝の最南部及び伊豆・小笠原海溝周辺の海域、中マリアナ海嶺と西マリアナ海嶺を含む海域、西七島海嶺を含む海域、マリアナ海溝北部の海域の4海域が海洋保護区に指定。

これにより、日本が管轄する海域における保護区の割合は13.3%となり、愛知目標を達成した形となりました。

沖合海底自然環境保全地域においては、海底の形質を変更する恐れがある特定行為が規制対象となります。具体的には、鉱物の探査および海底動植物の捕獲等(環境大臣が農林水産大臣の同意を得て定める方法によるもの)鉱物の掘採などが挙げられています。

継続的なモニタリングを実施

指定された海洋保護区は、健全な状態を保っているのか、海洋保護区として保全効果を発揮しているのかを確かめるために継続的なモニタリングが必要です。

しかし、2020年に新たに指定された沖合海底自然環境保全地域はそのほとんどが沖合の深海底であることから、生態系のモニタリングは非常に困難だとされています。

海底広域研究船「かいめい」(提供:PhotoAC)

そんななか、深海調査を行うための船舶や機器を多数保有するJAMSTECは、沖合海底自然環境保全地域における生態系モニタリング調査を環境省からの委託業務として実施しています。

5つの航海と58日間におよぶ調査で得られた数多くの成果

JAMSTECは、2020年と21年に海底広域研究船「かいめい」、2022~24年に深海潜水調査支援母船「よこすか」で、指定された4つの沖合海底自然環境保全地域における生態系調査を実施。

5つの航海、58日間におよぶ調査では、無人探査機有人潜水調査船「しんかい6500」など様々な調査機器が用いられました。

15種の新種を発見

各調査海域の生物多様性を明らかにすべく、採集された動物の同定も行われています。

分類学的な同定の結果、19の動物門からなる約500種の動物が見い出され、これまでに15種の新種が報告。なお、このうち14種が2020年、21年に実施された航海で採集された動物ですが、これは新種記載には長い時間を要することに起因しています。

調査船(提供:PhotoAC)

また、15種の新種以外にも数多くの希少種が見つかっており、日本初記録の種も少なくありません。

魚類においてはカクレカサゴウラシマチョウチョウウオなどの希少種ほか、2024年に標準和名が提唱されたカガリビマトウダイ、深海のトッププレデターとして話題になったヨコヅナイワシなどが発見されています。

推定年齢7000歳のサンゴ群体?

中マリアナ海嶺・西マリアナ海嶺北部沖合海底自然環境保全地域の水深525メートル、西マリアナ海嶺の頂上部付近からは、通常の数倍の大きさもあるツノサンゴ類の1種の群体が見つかっています。

高さ約308センチ、幅が約441センチ、基部の直径が28センリに達するこの群体は、過去の研究による推定成長速度(年間0.02ミリメートル)をもとに算出すると、推定年齢がなんと7000年であることが分かったのです。

この群体は、地球上で最も長寿の可能性がある海洋生物とされています。

今後も調査に期待

JAMSTECがこれまでに実施してきた調査・研究結果から、海洋保護区への指定より約4年が経過した沖合海底自然環境保全地域が健全な状態を維持していることが明らかになりました。

一方で、沖合海底自然環境保全地域の生物多様性については、まだ十分に理解できていないといいます。

今後も、これらの海域における生物多様性をモニタリング調査を行い、生物の分布・生態を明らかにすることで、地球環境の変動が深海生態系に及ぼす影響を正確に評価することが期待されています。

(サカナト編集部)

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