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エサ釣りからルアーへ…… 断片的(?)「スズキ釣り」変遷を追想

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エサ釣りからルアーへ…… 断片的(?)「スズキ釣り」変遷を追想

周囲を海に囲まれた我が国ニッポンは紛れもなく海釣り天国、多種多様な魚がねらえるが、同じ魚種をねらうにしても、さらに同じ釣りジャンルといえど、地方によって独特のカラーがあるのが、何より古くからニッポン人が釣りに親しんできた証拠。
「あの釣りこの釣り古今東西」第18回はスズキ釣り。近年は陸釣りも船釣りもルアー釣り、いわゆるシーバスフィッシングが全盛だが、かつてはエサ釣りでいろいろなものが存在した。今回は関西圏を中心に懐かしいスズキ釣りを語ってみたい。

大阪港の伝統


懐かしい「朝バネ釣り」

初めて真剣にスズキという魚をねらったのは40年以上前。大阪港の沖堤に午前3時ごろ出発の渡船で渡り、生きたシラサエビを撒きつつ小さな電気ウキで防波堤の際をねらう「朝バネ釣り」だった。「ハネ」の前に「朝」がつくと「バネ」という表記になるのだが、「ハネ」とは出世魚であるスズキの40~60cmサイズを指す関西独特の呼称で、関東でいう「フッコ」のことだ。

スズキは出世魚。関西ではセイゴ・ハネ・スズキ、関東ではセイゴ・フッコ・スズキと成長とともに呼び名が変わる

勤務していた釣り週刊誌の取材だった。たぶん原稿締め切りの前日だったと思うが、その日は釣果に恵まれず、締め切り当日の翌朝に再チャレンジ。何とか釣果(セイゴクラスだったと思うが)を得て、眠い目をこすりながらそのまま出勤、その日のうちに原稿を仕上げて何とか締め切りに間に合わせたことを、今も覚えている。

大阪港の伝統ともいえる「朝バネ釣り」はその後、大阪港へ渡す渡船店の廃業もあり、すたれてしまったが、今でも釣りが可能な周辺の防波堤や護岸などからは、生きエビを撒きスズキを集めてねらう「ハネ釣り」として健在だ。

大阪港の朝バネ釣りは衰退したが、大阪湾岸の各地で「エビ撒き釣り」として健在だ

シラサエビがふんだんに獲れた


関西ならではの「エビ撒き釣り」

「エビ撒き釣り」それは播州地方や泉州地方の野池や琵琶湖などでもシラサエビが豊富に獲れ、安価に手に入る関西ならではの釣りである。対して関東ではシラサエビ(関東ではモエビと呼ばれる)1匹の値段が驚くほど高く、大量にマキエをしてねらうことはなかったようだ。そんな関東での昔のスズキ釣りといえば、アオイソメなどでの電気ウキ釣りが中心だったと記憶している。
(そういった事情もあり、ルアーでのシーバス釣りは関東エリアが先進のはずである)

手軽にシラサエビを使えた関西。対して関東はエビの値段が高く、なかなかマキエには使えなかったと聞く

ところで、同じ「エビ撒き釣り」だが、変わったところでは「尼崎市立魚つり公園」で今も盛んな「ズボ釣り」だろう。クッションゴムを介した仕掛を桟橋直下に垂らし竿先でアタリを取る釣りだ。これに似た、チヌの夜釣りとして以前は盛んだった防波堤の「コスリ釣り」は、スズキをねらう釣りでもあったことを付け加えておこう。エサはアオイソメなどの虫エサだ。

尼崎市立魚つり公園では現在もズボ釣りスタイルのスズキ釣りが健在(写真は2008年当時)

須磨沖で人気だった船からのエサ釣り


伊勢湾口では今も盛ん

船釣りでは、夏場に兵庫県神戸市の須磨沖でのエサ釣りも盛んだった。仕掛の詳細(1本バリ? 尼崎のズボ釣りに近い感じ?)は忘れてしまったが、エサはたぶんアオイソメだったと思う。このとき釣ったハネは「これでもか!」というぐらい脂が乗っていて抜群に美味しかったことを覚えている。スズキの旬が夏場であることを実感した瞬間だった。
しかし、私が乗船したのは30年ほど前で、その後、須磨沖のスズキ釣りの話をあまり聞くことがなくなってしまった。

かつて夏になると須磨沖にはスズキをねらう遊漁船が見られた

一方、伊勢湾口にあたる愛知県の師崎や篠島から出船する遊漁船では現在もスズキ釣りが盛んで、スズキの現地名である「マダカ」釣りとして人気がある。エサはアオイソメやウタセエビ(海エビ)。仕掛は下オモリ式の1~2本バリのようだ。

マニアックに楽しめる


機動力がウリのルアー船

須磨沖もそうだったが、伊勢湾口では多人数が乗り合わせる乗合船が主体(もちろん仕立船もある)のため、比較的リーズナブルに楽しめるのが魅力。
しかし現在、大阪湾や東京湾をはじめ船からのスズキ釣りは「シーバス・ルアー船」が主力。小型のボートで少人数の釣りなので、狭いポイントにも入っていける機動力がウリだ。

シーバスねらいのルアー船。陸からはねらえないような場所でルアーを引けるのが魅力

好みのルアーを「取り換えひっかえ」マニアックな釣りが楽しめるとあって若い人を中心に人気があり、陸っぱりでは自由に釣りができる場所が少なくなってしまった現在、そして今後も人気が衰えることはないだろう。

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