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幼稚園年中の自閉症息子、人との距離感や声の大きさをどう伝える?友だちトラブルが不安に【専門家アドバイスも】

LITALICO発達ナビ

幼稚園年中の自閉症息子、人との距離感や声の大きさをどう伝える?友だちトラブルが不安に【専門家アドバイスも】

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

誰とでも手を繋ぐ……適切な距離感をどう教える?

わが家の次男かーは、発語に遅れが見られたり、こだわりが強く激しい癇癪を起こしたりと、発達に気になるところがあったため、2歳から児童発達支援に通っています。先日、医師の診察を受けたところ、長男と同じ知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。今は、幼稚園と児童発達支援に並行通園をしながら、病院でも言語療法(ST)と作業療法(OT)を月に一度受けています。

人と関わることが大好きなかーですが、いま取り組んでいる課題の一つに、「人との適切な距離感をつかむ」ことがあります。かーは、話の内容や何をしているのかはよく分かっていなくても、とにかく人の輪に入ることが好きな子で、特にスキンシップで安定するところもあるようです。そのせいか、時と場合によらず、自分の気持ちを優先して、お気に入りの女の子と手を繋ぎたがります。相手の都合もお構いなしのその行動が、私は気になっていました。

お友だちが不安になっているときや、相手が了承しているときなら手を繋ぐことも良いと思います。しかし、自分本位に手を繋ぐという行動をこのまま続けていってしまったら、成長していく中で、相手に嫌がられたり避けられたりすることも起きてくるでしょう。私はかーに、手を繋いでいいときや悪いときなどを知ってほしいと思うようになりました。そこで、かーと手を繋ぐときに声をかけることにしてみました。

もともとかーには多動傾向があったので、出かける際には必ず手を繋ぐようにしていたのですが、手を繋ぐ前には、「手を繋ぎます」と声をかけるようにしました。相手の身体に触るときには声をかけてからにするということを、かーにルールとして意識してほしいという思いからでした。

また、児童発達支援の先生とも、かーの距離感の課題について共有し、友だちと近づきすぎないように、様子を見ながら声をかけてもらうようにお願いしました。

その効果があったのか……かーは、スキンシップを求めるときには「だっこしてください」など、声をかけられるようになりました。最近では、スキンシップを求めるのは家族や幼稚園の先生、児童発達支援の先生などの身近な大人に対してだけになり、お友だちに近づきすぎることはなくなってきました。かーがルールを守ってスキンシップを求められたときには、できるだけ応えるようにしています。人との距離感がつかみにくいかー。ゆっくりでも学んでいってほしいと思います。

言葉が増えてきてうれしい反面、別の悩みも……

かーのもう一つの課題は「話す時の声の大きさ」です。幼稚園でお友だちと関わる中で刺激を受けているからか、最近のかーは、たくさん話ができるようになってきました。物語を見てそのストーリーを話したり、テレビで出てきたキャラクターについて教えてくれたりするようになってきました。

家の中で楽しく話すのはいいのですが、かーのおしゃべりは外出先でも変わりません。そして、その声の大きさがなかなかのものなのです。

実は、かーの声の大きさについては以前から悩んでおり、児童発達支援で使っていた声のボリューム表に合わせて(ありが一番小さい声でぞうが一番大きな声)、小さな声で「ありさんだよ」と伝えるようにしていました。

これまではその声かけで声の大きさを抑えることができていましたが、今はそれを忘れてしまったのか、あるいは話したい気持ちのほうが強くなってしまったのか、音量は変えずに(かえって大きくなるときもあります)「ありさーん!」と言うように……。

幸い幼稚園ではそういうことはないようで、家と児童発達支援だけで見られる行動のようですが、先生方とも連携して、根気強く伝え続けるようにしています。

一つの悩みが落ち着けばまた新しい課題が出てきて、でこぼこの道を進んでいるようです。ですが私たちには頼れる場所がある、相談や共有できる人たちがいる、そのことに感謝しつつ、これからもこのでこぼこ道を進んでいきたいと思います。

執筆/かしりりあ

(監修:鈴木先生より)
私の外来に来ているASD(自閉スペクトラム症)のお子さんには、人との距離感に関しては、30cm定規くらいの長さ、あるいは前へならえの時に腕を伸ばした長さくらい離れて話そうねと伝えています。これはトイレットペーパーを使う量についても同じで、腕の長さに合わせた長さで切って使うように示すと無駄がなくなります。保護者が実際にやってみせてから、お子さんにやってもらい、そしてできたら思いっきり褒めてあげればいいのです。

また、手を繋ぐ以外でも、他人に何か頼む場合は必ず「○○していい?」「借りていい?」と確認してからにしようねと教えています。声の大きいお子さんに対しては、スマートフォンのマイクアプリなどを利用して、音量が5段階から3段階になる様子を視覚的に示します(実際に大人が声を出して子どもに聞かせる)。または、文字のフォントサイズを小さくするかの如く、画用紙などで大きな丸と小さな丸をつくり、大きさの変化を示すこともあります。自分なりにできる工夫を考えたり、園や学校の先生にたずねて知恵を拝借したりすれば、知的発達症のお子さんにも分かりやすいやり方に出合えるはずです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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