ピックアッププレーヤー テニス女子 逆境を力に変える福徳学院エース川野蒼奈(2年) 【大分県】
全国選抜高校テニス大会の女子団体戦に出場する福徳学院。そのエースとして注目されるのが2年生の川野蒼奈だ。昨年の全国高校総体に個人シングルスで出場した経験を持ち、チームをけん引する。
川野が福徳学院に進学したのは、中学3年時に負った膝の大けががきっかけだった。「中学3年の6月、膝の半月板を負傷しました。九州大会など大事な試合があったので、痛みをこらえてプレーしましたが、9月に手術を受けました。入院やリハビリのために学校を長期間休むことになり、県立高校の受験が難しくなりました」。受験の選択肢が限られた中で、「テニスに集中できる環境」を最優先し、福徳学院を選んだ。結果的に、彼女にとって最良の選択となった。
高校入学後も、けがとの戦いは続いた。それでも川野は、試合経験を積みながら着実に実力を伸ばしていった。「高校1年の5月には県大会でベスト16に入った。同学年ではトップだったけど自分のテニスにはまだ納得できなかった」。そして迎えた全国選抜。1年時にはメンバー入りするも、試合には出場できなかった。しかし、2年生になると飛躍的に成長し、個人シングルスで全国総体に出場。「初めての全国大会で、すごく緊張しました。地元開催で仲間の応援が多く、それが逆にプレッシャーになってしまった」。大舞台で思うようなプレーができず、悔しさが残ったが、この経験が川野をさらに成長させた。
試合経験を積みながら着実に実力を伸ばした川野蒼奈
全国選抜への出場を懸けた九州高校選抜大会。敗者復活戦の長崎東戦で、シングルス1として出場した川野は、4-7のビハインドから9-7の大逆転勝利を収めた。「卒業した3年生や仲間の応援が、最後の一押しになった。『ありがとう』と言われたとき、自分のシングルスにも自信がつきました」。かつてプレッシャーに感じていた応援は、今では力に変わっている。
しかし、九州選抜後に腰椎椎間板ヘルニアを発症。大事な試合を欠場し、大分県ランキングも下がった。その影響で、全国選抜ではシングルス3番手またはダブルスでの出場が濃厚だ。川野は「シングルスが得意だが、ダブルスでも試合をつくれるように準備している」と前を向く。
全国選抜に向けて調子は上向きだ。「(練習を)やりすぎてしまうので、まずはケガをしないことが大前提」。目標はベスト8。そのために、「コートに立つ責任」を強く意識し、チーム一丸となって戦うことを誓う。「かっこよさよりも一生懸命さを大事にしたい」と懸命にボールを追い、勝利を目指す。
コートに立つ責任を持ち、勝利を目指す
(柚野真也)