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【2024年最新】介護事業所の倒産が過去最多に!専門家が解説する3つの要因と生き残りのポイント

「みんなの介護」ニュース

長谷川 昌之

介護事業所の倒産件数が急増中!2024年度の最新動向を解説

どの業態の介護事業所が倒産しているのか

高齢化が進む日本において、介護サービスの重要性が増す一方で、介護事業所の倒産が深刻な社会問題となっています。

東京商工リサーチの調査によると、2024年度上半期(4-9月)の介護事業所の倒産件数は95件(前年同期比66.6%増)と、過去最多を記録しました。このペースで推移すると、2024年の年間倒産件数は170件を超える見込みです。

介護事業所の倒産を業態別に見ると、「訪問介護」が46件(前年同期比35.2%増)と最も多く、次いで「通所・短期入所介護」が33件(同106.2%増)、「有料老人ホーム」が6件(同100.0%増)となっています。

特に訪問介護事業所の倒産が目立つ背景には、深刻な人材不足があります。高齢化に伴いヘルパーの高齢化も進行しており、若手人材の確保が困難な状況が続いています。また、2024年度の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられたことも、事業継続を断念する要因となっています。

デイサービスなどの通所介護事業所では、運営コストの上昇に加えて、大手企業との競合も激化しています。特に、地域密着型の小規模事業所は、規模の経済が働きにくく、経営効率化に苦慮している状況です。

地域別にみる介護事業所の倒産状況

地域別の倒産状況を見ると、関東地域が28件(29.47%)と最も多く、次いで近畿地域が23件(24.21%)、九州地域が12件(12.63%)となっています。

特に都市部では、賃金水準の高い他業種との人材獲得競争が激しく、介護人材の確保が困難になっています。一方で、地方部では高齢化率が高く介護ニーズは増加傾向にあるものの、人口減少に伴う利用者数の減少や人材確保の困難さから、事業継続を断念するケースが見られます。

また、東北地域では7件(7.36%)、中部地域では8件(8.42%)の倒産が発生しており、全国的に介護事業所の経営悪化が広がっていることがわかります。特に注目すべき点として、地方都市では一つの事業所の倒産が地域の介護サービス提供体制に大きな影響を与える可能性が高いという問題があります。

北海道地域では5件(5.26%)、四国地域においても4件(4.21%)の倒産が発生しており、特に山間部での介護サービスの継続性への懸念も広がっています。さらに、各地域での倒産の特徴として、複数のサービスを提供する事業所の倒産が目立っており、地域の介護インフラに与える影響が深刻化しています。

規模別・資本金別の倒産傾向分析

同データを確認すると、倒産した介護事業所の特徴として、小規模事業者が大半を占めていることが読み取れます。

具体的には、資本金1,000万円未満の事業所が83件(87.3%)、従業員10人未満が81件(85.2%)、負債総額1億円未満が77件(81.0%)となっています。

原因別では、販売不振が約7割で、既往のシワ寄せと合わせた不況型倒産が8割を占めており、売上不振で再建を断念した事業者が大半です。これは、小規模事業者が経営の効率化や人材確保に必要な投資を行う余力がなく、経営環境の変化に対応できていない現状を示しているといえるでしょう。

従業員規模別の詳細を見ると、4人以下の超小規模事業所が56件(58.94%)と最も多く、次いで5~9人規模が25件(26.31%)となっています。これらの小規模事業所では、スケールメリットを活かした経営効率化が難しく、人材の採用・育成にかかるコストも相対的に大きな負担となっています。

また、負債規模別では、1千万円以上1億円未満の倒産が63件(66.31%)と最も多く、次いで1億円以上5億円未満が15件(15.78%)となっています。これは、比較的小規模な負債額での倒産が多いことが分かりますが、経営体力の弱い事業所が早期に事業継続を断念せざるを得ない状況にあることを表しているでしょう。

特筆すべき点として、資本金区分では100万円以上の事業所が42件(44.21%)と最も多く、次いで100万円未満が18件(18.94%)となっています。この傾向から、創業時の資本力が必ずしも事業の継続性を担保するものではなく、むしろ日々の運営における収支バランスの維持が重要であることが示唆されています。

こうした倒産の傾向は、介護業界における経営の脆弱性を示すとともに、特に小規模事業所における事業継続の難しさを浮き彫りにしています。今後は、経営基盤の強化や事業規模の適正化、さらには事業者間の連携や統合など、新たな経営戦略の構築が求められています。

なぜ介護事業所の倒産が急増しているのか?3つの主要因を分析

深刻化する人材不足と賃金上昇の影響

2024年の介護業界では、より質の高いサービス提供への期待が高まる中、人材の確保と適切な処遇の実現が重要なテーマとなっています。

全産業的な賃金上昇の流れを受けて、介護業界でも職員の待遇改善に向けた動きが加速しています。これは事業所の経営において重要な検討事項となっており、特に小規模事業所では戦略的な対応が求められています。

介護職員の処遇改善については、介護職員処遇改善加算や特定処遇改善加算など、複数の支援制度が整備されています。多くの事業所ではこれらの加算を活用し、職員の待遇改善を進めていますが、2024年度の介護報酬改定も踏まえ、より効果的な制度活用が課題となっています。

実際のデータでは、従業員10人未満の事業所が全体の85.2%を占めており、小規模事業所における人材確保と待遇改善の両立が注目されています。具体的には、ICT導入による業務効率化や、柔軟な勤務体系の導入、キャリアパスの明確化など、働きやすい職場づくりを通じた人材確保の取り組みが広がっています。

このような環境下で、事業所には人材投資と経営の持続可能性の両立が求められています。処遇改善に向けた制度の活用や、効率的な人材配置、職場環境の整備など、複合的なアプローチが必要とされており、これらへの対応力が事業所の競争力を左右する要因となっています。

2024年度介護報酬改定による収益への影響

2024年度の介護報酬改定により、介護事業所の収益構造に大きな変化が生じています。東京商工リサーチの調査によると、介護事業所の倒産要因として「販売不振」が67件(全体の70.5%)を占めており、その背景には報酬改定による収入構造の変化が考えられます。

特に訪問介護では、生活援助サービスの基本報酬が見直されました。これに対し、多くの事業所では収益確保に向けて、サービス提供体制の効率化や、加算の取得促進など、さまざまな経営改善策に取り組んでいます。具体的には、ICTツールの導入によるスケジュール最適化や、複数のサービスを組み合わせた包括的なケア提供など、新たな付加価値の創出を目指す動きが見られます。

通所介護においても、事業規模別の報酬体系が見直されました。基本報酬は微増となりましたが、多くの事業所では、機能訓練の充実や認知症ケアの強化など、より専門性の高いサービス提供による収益の安定化を図っています。

また、地域密着型サービスへの転換や、介護予防・日常生活支援総合事業への参入など、地域ニーズに応じたサービス展開も進んでいます。

報酬改定への対応では、加算の取得状況が事業所の収益に大きな影響を与えています。処遇改善加算や特定処遇改善加算に加え、各種加算の効果的な活用が、安定的な経営を実現するための重要な要素となっています。このため、加算要件の適切な理解と、必要な体制整備に注力する事業所が増えています。

コロナ禍の影響と運営コスト上昇への対応

コロナ禍を経験した介護事業所では、感染症対策を含む運営体制の見直しも進んでいます。東京商工リサーチの調査によると、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が10件(10.52%)を占めており、これには感染対策コストの増加も影響していることが考えられます。

一方で、この経験を活かし、より強靭な運営体制を構築する動きも広がっています。具体的には、以下のような取り組みが見られます。

感染症対策の標準化 効率的な衛生用品の調達・在庫管理 マニュアルの整備による業務の効率化 オンライン研修システムの導入

また、光熱費やガソリン代などの運営コスト上昇に対しては、多くの事業所が創意工夫を重ねています。特に訪問介護事業所では、効率的な訪問ルートの設定やEV車両の導入検討など、コスト削減と環境配慮を両立させる取り組みが始まっています。

通所介護事業所においても、空調設備の効率化や照明のLED化など、省エネ投資を通じた長期的なコスト削減策が進められています。さらに、ICTツールの活用により、事務作業の効率化やペーパーレス化を進め、運営コストの適正化を図る事例も増えています。

こうした経営環境の変化は、介護事業所にとって新たな挑戦の機会ともなっています。例えば、オンラインによる家族との情報共有や、ICTを活用した業務効率化など、サービスの質を維持・向上させながら、持続可能な運営体制を構築する取り組みが広がっています。

介護事業所が生き残るために必要な対策とは

経営基盤強化のための具体的アプローチ

介護事業所の経営基盤を強化するためには、経営の効率化と収益性の向上が重要なカギとなります。東京商工リサーチの調査では、倒産した事業所の81.0%が負債総額1億円未満であり、早期の経営改善が重要であることが示唆されています。

成長を続ける介護事業所に共通する経営基盤強化の具体的なアプローチとしては、以下のような取り組みが挙げられます。

記録業務のデジタル化によるスタッフの負担軽減 AIを活用したシフト管理による人員配置の最適化 オンライン研修システムの導入による教育効率の向上

また、収益構造の改善に向けては、複合的なサービス展開が効果的です。例えば、介護保険サービスに加えて介護予防や生活支援サービスなど、地域ニーズに応じた新たなサービスの開発を進める事業所が増えています。

さらに、経営の可視化と迅速な意思決定も重要です。定期的な経営指標のモニタリングや、部門別収支の把握により、課題の早期発見と対策が可能となります。特に小規模事業所では、外部の経営コンサルタントや税理士との連携により、専門的な視点からの経営改善を進める例も見られます。

活用すべき行政支援と補助金制度

介護事業所の経営を支援するため、国や自治体ではさまざまな支援制度を整備しています。これらの制度を効果的に活用することで、経営基盤の強化と介護サービスの質の向上を同時に実現することが可能です。

主な支援制度として、以下のようなものが活用可能です。

処遇改善関連の加算制度 介護職員処遇改善加算
介護職員等特定処遇改善加算
介護職員等ベースアップ等支援加算 設備投資・環境整備への支援 介護ロボット・ICT導入支援事業
介護施設等の大規模修繕の際にあわせて行う介護ロボット・ICTの導入支援
業務効率化に向けたテクノロジー導入支援

特に注目すべき点として、地域医療介護総合確保基金を活用した都道府県独自の支援制度があります。これらは地域の実情に応じた柔軟な支援が可能で、人材確保や設備整備など、幅広い用途に活用できます。

また、事業継続に向けた経営支援として、各都道府県の介護サービス事業者向けの経営相談窓口の活用も効果的です。これらの窓口では、経営アドバイスや各種補助金の申請支援など、専門家による具体的なサポートを受けることができます。

成功している介護事業所に学ぶ経営戦略

厳しい経営環境の中でも持続的な成長を実現している介護事業所では、独自の経営戦略を展開しています。特に成功している事業所に共通する以下の3つの特徴が、今後の経営におけるヒントとなるでしょう。

人材を核とした組織づくり 地域との強固な連携体制 データに基づく経営判断

まず、人材育成への積極的な投資です。成功している事業所では、明確なキャリアパスを設定し、職員の成長に応じた昇給・昇格基準を透明化しています。また、専門資格取得の支援や定期的な社内研修を通じて、職員の専門性向上をサポートしています。

特に効果を上げているのが、経験豊富な職員が若手を指導するメンター制度で、技術面でのスキルアップだけでなく、精神面でのサポートにも効果を発揮しています。

次に重要なのが、地域との強固な連携体制の構築です。医療機関や地域包括支援センターとの日常的な情報共有により、利用者により適切なサービスを提供できる体制を整えています。また、地域の介護予防事業にも積極的に参画し、地域全体の介護力向上に貢献することで、結果として自事業所の信頼度向上にもつながっています。

経営面では、透明性の確保と迅速な意思決定を重視しています。月次での経営指標の確認や現場からの改善提案を積極的に取り入れることで、常に進化し続ける組織づくりを実現しています。また、定期的な利用者満足度調査を実施し、そのフィードバックを基にしたサービス改善にも注力しています。

さらに、サービスの質の向上と効率化の両立も特徴的です。介護記録システムやICT機器を戦略的に導入することで、職員の業務負担を軽減しながら、より質の高いサービス提供を実現しています。特に、オンラインでの家族との情報共有は、コロナ禍を契機に積極的に取り入れられ、高い評価を得ています。

これらの取り組みの根底には、「利用者本位」という基本理念があり、それが結果として事業の持続的な成長につながっています。成功事例からは、単なるコスト削減や効率化だけでなく、サービスの質の向上を通じた競争力の強化が、長期的な成功の鍵となっていることが分かります。

このように、安定した経営基盤の構築には、人材育成、地域連携、経営の可視化、そしてサービス品質の向上という複数の要素をバランスよく組み合わせることが重要です。これらの要素を自社の状況に応じて適切に取り入れることで、持続可能な事業運営が可能となり得るでしょう。

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