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【来て、見て、能登】のと鉄道「震災語り部観光列車」で地域のためにできること

さんたつ

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2024年元日に北陸地方で突如発生した能登半島地震。特に被害の大きかった能登に同年9月21日、今度は観測史上最大の豪雨が襲った。これらの災害で、町もそこにある暮らしも、以前と同じではなくなった。しかし能登にはいま、地域を前へと動かし続ける人たちがいる。彼らの力で少しずつ復旧、復興が進んでいる。自分の目で、足で、能登のいまを知る旅に出かけよう。『旅の手帖』2025年4月号から、のと鉄道が運行する観光列車「震災語り部観光列車」の話をお届けします。

「震災語り部列車」で地域のためにできること

観光列車とのと鉄道の中田哲也社長(左)、のと鉄道旅行センターの東井豊記さん。「観光できるところ、泊まれるところもまだ少ないですが、能登にお越しになって、応援していただければ幸いです」と中田社長。

七尾駅と穴水駅を結ぶのと鉄道も、2024年1月1日の地震で甚大な被害を受けた。しかし直後から急ピッチで復旧にかかり、4月6日には全線復旧に漕ぎ着けた。

のと鉄道の中田哲也社長は、震災後まもなくから、この地震のことを風化させない取り組みを考え始めていた。それが「震災語り部列車」で、2024年9月16日から団体客向けで運行を開始。車内で被災の体験やその後のことなどを話す「語り部」は、観光列車のアテンダント3名が務めている。

「心に傷を受けた被災体験を話すことは酷なこと。それでも地域のためにできることをしたいと引き受けてくれました」(中田社長)

地震や豪雨の話だけでなく、能登の魅力についても語る宮下左文さん。震災の話をするときは当時を思い出し、声を詰まらせながら案内をすることも。

語り部のうち、宮下左文さんと坂本藍さんは当日、観光列車「のと里山里海号」に乗務していて、能登中島駅停車中に地震に襲われた。

「マイクでずっとお客様に声をかけていた宮下さんの声がだんだん小さくなったとき、もう終わりだと覚悟しました。その恐怖をお伝えすることで、防災へ意識を向けてくださる方が一人でも増えてくれたらと願っています」(坂本さん)

2025年の4月6日からは、宮下さんたちが発災時に乗務していた観光列車が「震災語り部観光列車」となってバージョンアップし、日時限定で個人客も乗車できるように。乗客はよりリアリティーを感じられる分、宮下さんらにはフラッシュバックなどの精神的な負担が心配となる。

「久しぶりに観光列車に乗ったら懐かしくて、やはりここが私の居場所なんだと思いました」と宮下さんはほほえむ。

2024年4月の能登鹿島駅。「これが見たくて来たんや」と仮設住宅から来た方も多かったそうだ。

春は沿線のそこかしこで桜の花が見られ、なかでも有名なのが“能登さくら駅”の愛称がある能登鹿島駅だ。

「2024年は、地元の方がたくさん花見に訪れて、その頃はまだ能登に笑顔がほとんどありませんでしたが、この駅だけには笑顔があふれていたのが印象的でした」と、のと鉄道旅行センターの東井豊記さん。

能登半島地震がどんな地震だったのか、そしていま能登はどうなっているのか、震災語り部観光列車に乗って、見に来てほしい。

「のと鉄道 震災語り部観光列車」
☎0768-52-0900( のと鉄道旅行センター)
2025年の一般向けは7月19日~8月31日の土・日・祝に一日3往復運行(※以降の運行は夏頃決定)。1750円(七尾〜穴水間)、普通運賃+900円。
乗車1カ月前から電話、穴水駅窓口、インターネット(https://nototetsu.jp)で予約。

取材・文・撮影=若井 憲

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