『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第三章 群青のアステロイド』すれ違い、それぞれの過去、古代からの教え――畠中祐さん&上村祐翔さんが土門竜介と揚羽武の関係性を語り尽くす【インタビュー】
2012年から展開されている不朽の名作『宇宙戦艦ヤマト』のリメイクシリーズ。その最新作『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第三章 群青のアステロイド』が、2025年4月11日(金)より全国の映画館で上映開始となります。
アニメイトタイムズでは、その上映が迫るタイミングで、土門竜介役・畠中祐さん&揚羽武役・上村祐翔さんへのインタビューを実施しました。
今回の「第三章 群青のアステロイド」では、畠中さん演じる土門と上村さん演じる揚羽がすれ違っていた原因が掘り下げられます。おふたりはどんなことを考えて掛け合いに臨んでいたのでしょうか?
また、古代進役・小野大輔さんからおふたりがもらった刺激や影響、教えについての話題も必読。ぜひ作品の鑑賞前後にチェックいただけますと幸いです!
【写真】『ヤマト3199』第三章 畠中祐&上村祐翔インタビュー
土門が古代へ向ける感情は「信じていたが故の苛立ち」
ーー『宇宙戦艦ヤマト』という作品は長い歴史を持つ作品です。『ヤマト』という作品の印象や出演が決まった際の心境をお教えください。
揚羽武役・上村祐翔さん(以下、上村):ささきいさおさんが歌う主題歌「宇宙戦艦ヤマト」はずっと知っていましたが、まさか作品への出演が叶うとは思っていませんでした。そんな機会があったとしても、もっと遠い未来のことだと思っていたので、恐れ多いという気持ちがあります。ただ、『ヤマト』にどっぷり浸かっていない世代の僕が託されたからには、今自分が求められていることを考えつつ思いっきりぶつかっていこうと思っています。
土門竜介役・畠中祐さん(以下、畠中):オーディション時にキャラクター概要を調べたのですが、そこに土門の運命が書いてあったので原作を見返すことはやめておきました。見てしまったらそちらに影響されてしまいそうだったんです。今回のリメイク版はまた違った運命が待っていると信じています。
上村:僕たちが演じるキャラクターを過去に演じられた方々は、尊敬する素晴らしい先輩方ばかりでしたが、僕たちはフレッシュな状態で臨んでいます。
畠中:第1作の『宇宙戦艦ヤマト』を拝見した時は、凄まじい熱量を感じました。あの戦争を経験した方々が作った作品であり、作品に込めた想いがフィルムに乗っている。
僕が小さい頃に『ヤマト』へ抱いていた漠然としたイメージは、宇宙人と戦う勧善懲悪の物語でした。だけど今は、戦いによってもたらされる別離、それでも何を大切にしたいかというテーマを感じます。原作の全てを知る訳ではないですが、それでもフィルムに残る温もりや愛おしさ、引き金を引かねばならない哀しさは伝わってきました。そういうものはリメイク版にも引き継がれているはずです。
そして、現代にも通ずる差別や異種族との共存というテーマは、今回の第三章でも描かれます。
ーーそれぞれが演じられるキャラクターの印象も教えていただきたいです。
畠中:土門は自分の想いにまっすぐ邁進するあまり、周りが見えなくなりがちなタイプですね。でも一度信じたらそれを貫く素直さも持っていて、古代艦長にはそういう信頼を向けています。ただ、今回はそれが揺らいでいる。そのうえ、畳み掛けるように揚羽から発破をかけられるので、第三章の土門は特にストレスに晒されています(笑)。
自分で演じていても、もっと深呼吸してこんなことで怒らなくても良いのにと思うくらいです。だけど、そういう時はあえて深呼吸せずに演じて、イライラしているところを出すようにしました。
上村:確かに土門にそういう印象はあるかも。
畠中:土門と古代艦長の繋がりは前の『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』から始まって、教えてもらったことが本当に多い。だからこそ土門は、古代艦長にそういう姿を見せて欲しかったのだと思います。
ーー古代にも共感できる部分はありますか?
畠中:僕自身はありますね。目の前で愛する女性の手を取れなかったのだから、その光景が頭から離れなくて心の傷になってしまうと思います。でも、土門にとっては知ったことじゃない。なぜなら、今までは古代艦長がずっと土門たちの道標だったから。なので、どちらの心情も理解できます。
ーー上村さんから見た揚羽の印象はいかがですか?
上村:最初に福井晴敏総監督から、「揚羽は過去の出来事が原因で斜に構えてしまう部分がある」と伺いました。今回で紐解かれる部分なのですが、そのせいで素直になれず土門ともギクシャクして本音が出せないでいる。
ただパイロットとしての実力は申し分ないので、すごく頼りになります。けれど自分のことになると意外と冷静さを欠く一面があって、割と周りのことは見えているはずなのに心に迫ると揺らいでしまう。
また、揚羽グループの御曹司でもあるので、カリスマ的な雰囲気もあって、みんなより少し違う立場なのかなと。個人的には、演じていくうちに揚羽という人物を理解できて、近しい存在になっていった気がしています。
畠中:アフレコも最初は別々で収録だと思っていたのですが、終盤の重要なシーンは一緒に収録できたんです。
上村:ある意味、アフレコ現場でもようやく繋がれたと思いました。
畠中:第二章くらいまでは殆ど繋がれなかったからね。
ーーそんな第二章を振り返って印象に残っているシーンも教えてください。
上村:京塚みやこに「みんながお前みたいに土門を好きな訳じゃない」と言うところでしょうか。同期の微妙な関係性が垣間見えますし、土門と過去に何かがあったことも分かる。揚羽の何とも言えない可愛い部分も垣間見えるので、彼も等身大の青年だと実感できました。
畠中:僕はサーシャと古代艦長のシーンが印象深かったです。サーシャが手を伸ばして古代艦長が触れようとするのですが、ひっこめてしまうんですよね。「そこは触れてくれよ!」と思わずにはいられなかったのですが、古代艦長も色々な想いを抱えているから仕方なくて……。
ーー第二章の時に福井さんにお話を伺ったのですが、古代を演じる小野さんも「せめて抱きしめられないのか」とおっしゃっていたそうですね。
畠中:久々に再会したのに手をひっこめてしまう古代艦長と、その後のサーシャの表情がまた切ない。台本を読んだ時からあそこは物凄く印象に残っています。
ーーそして第二章の土門と言えば、古代への「あんた遅いよ!」という台詞はとても印象に残りました。
畠中:苛立ちをぶつけまくっていたように思います。あの「あんた遅いよ!」というセリフは、ぶつける先である古代艦長には聞こえていないつもりで漏らした言葉で、土門の中にある理想の古代艦長へ向けて言っているイメージで演じました。
土門の中には「ああして欲しかったのに」という理想があって、そういう古代艦長へのリスペクトがずっと根底にあるから、そこと乖離している現状に苛立ちを募らせてしまっている気がしていて。
ーー『2205』の時から古代へ向ける感情には重いものがありましたものね。
畠中:想いは人一倍強いと思います。教わったことがあるといいますか、「俺も若い頃はそうだった」的なところで繋がったのに、「何でだよ!」みたいな感じですよね。そういうところを信頼していたからこそ、自分の中にある信じていた古代艦長に言ってしまったということなのかなと。
ーー「こっちは経験者だぞ」と言ってくれましたからね。そんな土門に感情を向けるのが揚羽だと思います。ふたりの掛け合いはどんなところにこだわっていましたか?
畠中:とにかくこちらは、自分が思ったようにぶつけようと考えました。きっとこれだけ確執があったとしても、長年蓄積した分だけ怒る時は本気になるんじゃないかと思ったんです。「本来ならこんなことで怒らないだろう」ということでも怒るくらいなので、感じたままに怒りをぶつけるような演じ方にこだわりました。
上村:揚羽の言い方にしても「お前さ」とか「この戦術長じゃな」とか、本人に言っているようでちょっと違うところに言っているような、絶妙に聞こえるか聞こえないかくらいの嫌味を足して伝えているような気がします。
畠中:一番ムカつくというか、「直接言ってこいよ」って思うやつだよね。
上村:そうそう。ちゃんと見ないで後ろの方から言っているから、それは怒られるし殴られるだろうと。結局、揚羽の方も殴り返しちゃうんだけども……。
畠中:あの喧嘩のシーン、どちらかと言うと揚羽の方が殴ってたよね!? 本当に見ていて面白かったんだよね。
上村:最終的には揚羽のほうが馬乗りになってたからね(苦笑)。
畠中:土門は一瞬躊躇ったのに……!!
一同:(笑)
畠中さん&上村さんが収録で小野さんから受けた影響とは?
ーー他にスタッフ陣からのディレクションで印象に残ったものはありましたか?
上村:最初に資料をいただいた段階で福井さんからメッセージをいただきました。その時に、「『ヤマト』は歴史ある作品で重厚な印象もありますが、上村さんに通ずる部分が揚羽を通して出てくると思うので、気兼ねなく自由に演じてください」と言われました。その言葉が支えになっています。
そして、キャスト陣の中でも祐くんたち同期組とは同世代なので、そういう意味でも新人クルーたちの空気感は大事に演じていきたいと思いました。だから役作りはしっかりやりつつ、現場に行ってからの空気感を重視しました。実際に現場に入ったらそこに対する不安はなくなりましたし、収録も着々と進みました。
ーー福井さんは上村さんに通ずる部分が揚羽に出てくるとおっしゃっていたそうですが、ご自身で何か揚羽に似ていると感じる部分はありますか?
上村:他人との距離の取り方とか、言葉のかけ方が凄く不器用なところでしょうか。今回も過去回想で自分なりの思いやりから土門に声をかけるシーンがあるのですが、結果的に受け取り方が思っていたものと違ってくる。けれど、あの揚羽の言い方では土門は「え?なんで?」ってなってしまうと思うんです。
互いに歩み寄ろうとして歯車が噛み合わなくなるような……そういう不器用さや他人との接し方みたいな部分は共感できるところがありました。そんな揚羽を通して、自分も他人との距離感を振り返れたんじゃないかと感じています。
ーー畠中さんはいかがでしょうか?
畠中:「一番若いのだから、若い世代の代弁者のような前のめりな姿勢で挑んでほしい」と言われていました。収録中のディレクションも、落ち着きすぎているとか、そういう指示が多かった印象です。
鬱屈とした感情は土門はもちろん、誰しも感じたことがあるはずだから、そこに踏み込んでいける無鉄砲さを常に意識しました。視聴者に一番近い感覚を持っているのが土門かもしれない。だからこそ、「そこは前のめりに行きなさい」と言ってもらえた気がします。
ーー痛ましい状況なのは理解できるものの、「今の古代には言いたいことがある」という視聴者も多そうです。
畠中:あんな神妙な顔でずっといられたら気になってしまいますよね。仕方ないとわかってはいるけれど、視聴者も思っていることだと思います。
上村:そこに「あまり突っかかるなよ」と釘を刺しにくる揚羽とのバランス感がいいんだよね。
畠中:確かに。色々な見方があるんじゃないかと思います。土門を見ていて共感する人もいれば、「若いなあ」って感じる人もいるでしょうし、ご覧になってくださる方の世代によっても変わってくる。今回の土門は、視聴者が自分を映す鏡になる気がします。
ーー古代進を演じる小野大輔さんからは収録時にどのような影響を受けましたか?
上村:まさに第三章のあるシーンなのですが、収録をご一緒する機会がありました。その時、古代が「サーシャ……」と呟く台詞があったのですが、隣のマイクに立って聴いていても本当に苦しそうに演じられていたんです。
その一言を出すために福井さんと綿密にディスカッションされていて、その様子から小野さんが台詞ひとつひとつにかける想いや背負っているものを感じられて。これまでの積み重ねがあってのものだと思いますが、新しく入った自分も「負けないように頑張らなくては」と刺激を受けました。
畠中:小野さんとは収録で一緒になる機会も多いのですが、主砲を発射する時の「撃て!」という台詞をはじめ、色々なことを細かく教えてもらいました。土門と古代艦長で多少の違いはあるかもしれませんが、脈々と受け継がれるものがある。本当にドラマチックだと思いますし、演じる時も教えてもらったという体で台詞を発しています。
小野さんは当然『ヤマト』への思い入れが強いし、今の状況下でどうしてこの言葉が出てきたのか、凄く考えてくれるんです。本当に作中の古代艦長のように迷っている瞬間もあって、そういう時に監督とディスカッションする光景をよく見かけます。
実際の掛け合いの中で「こういう解釈だったのか」と気づくことも多く、素直にその場で感じているようにも見えると言いますか。素直だからこそ揺れているけど、だからこそ、目指すところに泳いで行ける自由さも持っていて。
それがお芝居の醍醐味なんです。迷いながらも進んで行く姿や、現場でそんな醍醐味を見つけた時の楽しさを教えてくれるのも、古代艦長みたいだと思っています。
ーーおふたりと近い年齢の若い世代に向けて、「『ヤマト』のこういうところが面白い」というポイントを挙げていただけますか?
畠中:原作が展開された当時は高度経済成長期のタイミングで、今よりもう少し希望に満ちて前向きな気持ちが強かった。今の日本にそれがないとは言わないけど、日本のみならず世界中が少し迷っているような気がしています。そんな状況下では、きっとヤマトも力強く進めないことがあるんじゃないかと。
古代艦長の姿からも迷いが見えてくる。僕らの生きる現代でも、色々なものが発達してすぐ他者と繋がれる方法が出てきました。一方で、その関係性はどこか希薄に見えたり、繋がっているようで監視しあっているかのようにも感じられる。
そんな中で僕たちは何を信じるべきなのか、考えなきゃならない場所に立たされているように思えてしまって。この第三章で描かれる部分にしたって重たい話だけど、僕らが日常生活で遭遇することでもある。これからヤマトが突き進む先は遠い未来の話ではなくて、僕たちにも関係していることだと思います。
そういう意味では、何か大切なことを教えてくれるというより、僕らが拾いにいくべきものかもしれません。そういうところにも注目してもらえると嬉しいです。
上村:「宇宙戦艦ヤマト」というタイトルは誰もが知っていますが、「ちょっと難しそう」みたいな漠然としたイメージがある。自分がキャラクターを演じる側になり、実際に映像も拝見して感じたのは、やっぱり人間ドラマだということでした。
この先の未来をどうしたら迎えられるのか、その考え方ひとつに対しても色々な立場の人がいて、その数だけ考え方が違ってきます。そして、そのために話し合ったり、争い合ったりしないと解決できない問題がある。
この作品は、色々な角度から捉えられる演出が散りばめられていると思うんです。物語を通して、今この時代を生きる人たちはどういう風に考えているのかが見えてきます。そういう人間ドラマを、ヤマトという戦艦を通して様々な視点からくまなく描いているからこそ、今の時代にも合致しているのかなと思いました。
ーー最後に上映を楽しみにしているファンのみなさんへのメッセージをお願いします。
上村:揚羽は第二章から登場しましたが、福井さんから彼の登場シーンについて「カッコよかったでしょ?」と聞かれたことがあるんです。もちろん「カッコよかったです!」とお返ししたのですが、現場では揚羽は誰が演じるんだろうって話題になっていたらしくて。満を持して登場させてもらった有り難みを感じています。
今回の第三章では、そんな揚羽がどんな過去を背負っているのか、なぜ土門との関係が拗れてしまったのかが明らかになります。ずっと大変な状況が続きますが、ひとつひとつの変化を楽しんでいただけたら嬉しいです。
畠中:と聞くと構えてしまう人もいるんじゃないかと思いますが、どの章にも親切に前回までのあらすじが入っています。それだけでなく、戦艦同士の殴り合いや戦闘機のアクションも見応えがありますし、そういったシンプルな楽しみ方もできるので、まずは『ヤマト』に出会わなければ始まりません。
僕らと同世代の人たちがより多く『ヤマト』に出会い、土門と同じように古代艦長を一緒に見守ってくれる人が増えたらいいなと心から思っています。
[インタビュー・撮影/胃の上心臓]