幕張さんぽのおすすめ9スポット。ベイサイドをゆるっとのんびり回遊
フェスや展示会などで盛況する幕張メッセを筆頭に、スタジアムありアウトレットあり。大箱が立ち並ぶ印象が強いが、西洋の街並みが出現したり、昔ながらの商店街に迷い込んだり。いろんな要素が入り混じる街を回遊してみた。
『Hecho en Paraiso(エチョ エン パライソ)』風と味わう幕張ラテンの夕暮れ[幕張]
2024年5月開店のメキシカン料理店が中古マンション2階に潜む。欧州アンティークを配し、窓を開け、ジューシーなタコスとともに蒸留酒・メスカルを舐める恍惚(こうこつ)感といったら。中南米のレコードと相まって、ラテンの風が心地いい。
・17:00~24:00、火休。
・☎043-306-9099
『草古堂』全方位サブカルでワクワク[幕張]
手塚治虫、DVD、懐メロレコード、民芸品やガッドギターまで充実。サブカル雑誌は約40年前の創業時から力を注ぎ、古書店の域を超えた品揃えが魔窟のようだ。「チェロは外せないから飾り」と、2代目店主の相田浩稔(ひろとし)さん。
・10:00~21:00(火は~20:00)、無休。
・☎043-273-4188
「県立幕張海浜公園 見浜園」幕張新都心の隠れオアシス[海浜幕張]
池泉回遊式庭園は、ビルと緑のコントラストが稀有(けう)。太古の大賀ハスが8月まで咲き誇る。「茶室松籟亭(しょうらいてい)」で庭をめでながら抹茶(夏は冷やしあり)と季節の和菓子700円で一服したい。入園料100円。
・8:00~16:30入園(茶室松籟亭は9:00~16:00に券購入)、無休。
・☎043-296-0126
『Yell』服屋だけど、コーヒー目当ても多し[幕張]
天然素材を用いた国内外のブランドは、アップリケ、染めなどを施した新しくも懐かしいクラフトもの。また、レジカウンターはコーヒースタンド。英国製カップで供すサイフォンコーヒー500円を片手に、服談義に花が咲く。
・12:00~21:00(土・日・祝~20:00)、火休。
・☎043-375-8411
『パティスリータルブ』甘薯(かんしょ)にまつわる幕張の歴史を味わう[海浜幕張]
フランス菓子に、修業した和洋菓子の技を加味する店主の竹見茂雄さんが、幕張の歴史を菓子にした。昆陽は、ひんやりもっちりした求肥に白餡とクリームチーズを加え、なめらかなスイートポテトが香る。焼き菓子版もあり。
・9:30~18:30、火休。
・☎043-351-7551
『伊東電機 習志野ファーム vechica』シャキシャキ野菜は道路下育ち[幕張豊砂]
3種のレタスと8種のベビーリーフの採れたてが並ぶ朝10時、大量買いの人がひっきりなしに訪れる。菌が少ない地下10mのトンネルを活用した日本唯一の地下植物工場は、電機メーカーが完全自動化で水耕栽培している。
・金10:00~14:00のみ営業(売り切れ次第終了)。
・☎047-411-4004
『cafe fikasmysa(フィーカスミーサ)』住宅地に出現した北欧空間[幕張豊砂]
カフェ不毛地帯ゆえ、友人を自宅でもてなしていた山崎絵理さんが、2023年にコーヒーと焼き菓子を看板に開店。夏はほろ苦&甘みがクセになるエスプレッソバナナシェイク700円を。エスプレッソチーズケーキ700円と相性抜群。
・9:00~17:00、日・月・火休。
・☎なし
『Hey's Diner』もろ、アメリカンな味とスタイル[幕張本郷]
昼のワッフルフライドチキン1599円は「メイプルの全かけが秘訣」と店主の山下将平さん。ソーダファウンテン+400円のセットでいただこう。夜はメニューが変わる。
・11:00~14:00LO・17:00~21:00LO(土・日・祝は11:00~21:00LO)、火・第3水休。
・☎043-441-7633
『ベーカリー レンガのおうち』気張らない味わいにリピート必至[幕張本郷]
「毎日食べたくなるように」と、幕張っ子の山本佳菜子さんが供するのは、ふわもちのシンプルな素朴系パン。クロワッサン生地ながら新食感のクロッカン、ゴロゴロ豚肉が入るカレーパンなどに加え、母が自家栽培する野菜も人気だ。
・8:00~18:00、月・木休。
・☎なし
・Instagram:rengano.ouchi
コントラストがこの街の魅力
幕張新都心は新しい街だ。1989年に誕生した幕張メッセを皮切りに、高層ビルが立ち、2023年には幕張豊砂駅が開業。駅南はまだ物流センターと大型店しかないが、さくら広場の緑、海辺の青一色と、思わぬ自然の彩りに心が躍る。海浜幕張公園の広報・亀井利男さんは「1990年から『見浜園』はありますが、初めてという住民の方も多いのです。ぜひいらしてください」と話し、「この街はコントラストが魅力ですよ」と耳打ちした。確かに、幕張ベイタウンに入ると未来都市から一転、欧州を視察して作っただけあって、ここは外国? と見紛うばかりだ。
内外の人が集い合わせて文化も醸成
幕張本郷の『Hey’s Diner』では欧米人客が嬉々としてフライドチキンを頬張っていた。店主の山下将平さんは「海外経験のある日本人も“懐かしい”と言ってくれます」と目尻を下げる。下町風情の幕張にもメキシカンなど、各国カルチャーの個人店が増えていて、発掘感満載。
ところが、意外なことに歴史スポットも。『パティスリータルブ』には、江戸時代の大飢饉で死者を出さなかった偉人にあやかった「昆陽」という銘菓があるのだ。「学生さんから教えてもらった歴史を子供たちにも伝えたくて」と竹見茂雄さん。「神社もありますよ」と聞いて向かえば、かつて小山だった神社の下をトンネルが貫き、境内脇を電車が走る異次元スポットだった。
『草古堂』2代目の相田浩稔さんが「駅南の信号から先は、かつて海でした」と話すように、幕張の風景は激変した。でも、和文化と各国の文化、歴史と新しさ、日常と非日常。いろいろなものがベイタウンに流れつき、磨きをかけられて同居している。そのコントラストこそが、唯一無二のユニークさを生んでいるのだ。
取材・文=林 さゆり 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2024年8月号より