偏差値35の高3春〜二浪が 現役東大生・「ドラゴン桜2」監修者が伝授する「スマホ学習術」
今や受験生の多くが取り入れているというスマホ学習。この新しい勉強スタイルに、親はどう向き合うべきなのでしょうか? 『東大式スマホ勉強術』の著者・西岡壱誠さんにお聞ききしました。全4回の3回目。
スマホを3時間以上使う子は成績が平均に届かない!? 調査グラフを公開!子育て中の家庭が知っておきたい、子どものスマホ利用のリスクとメリット。1・2回目では、東北大学助教・榊󠄀浩平先生に、スマホの利用時間が長いほど、成績が下がるという研究結果について解説していただきました。対して、東大合格を目指す受験漫画『ドラゴン桜2』の監修者であり、現役東大生の西岡壱誠さんは、「スマホを上手に使うことで、やる気がある子はさらに伸び、やる気がない子は勉強へのハードルを下げることができる」と言います。
そこで今回は、西岡さんにスマホを勉強に使うメリットと親の見守り方についてお聞きしました。
西岡壱誠(にしおか・いっせい)
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。
高校3年の春の偏差値は35
──西岡さんは著書『東大式スマホ勉強術』の中で、「スマホを勉強に活用することで東大に合格することができた」と書かれていますが、これはどういうことでしょうか?
西岡壱誠さん(以下、西岡さん):僕も初めからスマホを有効活用できていたわけではありません。高校時代はゲーム三昧。勉強を全くしなかったため、高校3年の春の時点で偏差値は35でした。これではまずいと一念発起して、スマホを完全に封印。東大合格を目指して勉強に励みましたが、成績は全く上がらず、2年連続不合格となってしまいました。
そんなとき、同じく東大を目指していた友人が教えてくれたのが、スマホアプリを使った勉強でした。
スマホアプリで勉強の効率がアップ!
スマホアプリで勉強の効率がアップ!
西岡さん:暗記や計算、スケジュール管理など、試してみると確かに勉強の効率がアップしたんです。
アプリにも詳しくなり、友人と情報交換をしながら、スマホをフル活用して受験勉強に励みました。その年、晴れて東大に合格することができました。そして入学してわかったのは、東大生の多くが同じようにスマホを上手に活用して勉強していることでした。
もちろん、全員がスマホを使うことで成績が伸びるとは断言できませんが、少なくとも僕の場合はとても相性が良かったですね。現在は勉強を教える立場として、全国の小中高生にかかわっていますが、スマホを上手に活用している子が、低学年から増えている印象です。実際に成績を伸ばしている子もたくさんいますよ。
勉強中のスマホ利用は子どもに決めさせてみる
──しかし、スマホが手元にあると勉強に集中できない子も多いかと思います。特に小・中学生はまだ自分の管理が十分にできない子も多く、スマホが手元にあると気が散ってしまうのではないでしょうか。
西岡さん:確かに、スマホを使って勉強していると思ったら、全然関係ないことをしていた、なんてことはよくあると思います。親としてはついスマホを取り上げたくなるでしょうが、ちょっと待ってください。なぜなら、人は痛い目に遭わないと学ばないからです。
何も結果が出ていないうちから「そんな使い方をしていたら成績が下がる」とスマホを取り上げたら、子どもは反発するだけです。そうではなくて、実際に成績が落ちたり、思ったように伸びなかったときにはじめて「付き合い方を変えてみたら?」と提案してみる。すると子どもも「そうだね」と納得するはずです。
失敗していないうちから取り上げてしまったら、学びの機会を奪うことになります。勉強中にスマホを手元に置くかどうかも含めて、子ども自身に考えさせ、決めさせてみてください。
勉強中のSNSの通知はオフに
目的意識があればスマホは関係ない
西岡さん:僕の場合は、“東大合格”という明確な目標があったのがよかったのかもしれません。それでも一度ゲームなどをし始めるとあっという間に時間が経ってしまうことがわかっていたので、アプリごとに時間制限をかけ、息抜きとしての利用は1時間程度に留めていました。
教えている子どもたちを見ていても、「次の模試で良い点を取りたい」とか「数学の成績を上げたい」とか目的意識のある子は、自分にあったやり方で上手に使えている印象です。
勉強中、スマホが手元にあることで一番マイナスなのは、SNSの通知です。「見ようかな」「勉強を続けようかな」と迷う時点で集中力が遮断されてしまいます。勉強中は通知をオフにしたり、通知が鳴っても絶対に見ない、という強い意志を持てるかは、目的意識によると思いますね。
好奇心を刺激するきっかけに
──目的意識がない子や勉強をやる気がない子にとっては、スマホはやはり「敵」なのでしょうか?
西岡さん:必ずしもそうとは言えません。僕は、やる気がない子や勉強が苦手な子にも、よく算数や数学のアプリを薦めています。というのも、九九アプリとか因数分解アプリなど、種類が豊富。勉強は嫌だけど、アプリならやるという子がけっこういるんです。こういった子は、楽しんでやっているうちに苦手を克服できるのでおすすめです。
中にはハマって6桁の因数分解とか、普通じゃ考えられないレベルの高度な計算までできるようになる子もいます。かといって、数学の成績がすごく伸びるかというと、そうでもないんですけどね(笑)。
一般的に学習は「これができたら、次のこれができるようになる」と積み木を積んでいくイメージなのですが、スマホで勉強していると、ときどきそれがバグることがあります。できるわけがないような計算ができてしまったり、すごくマニアックなことを覚えたり。
正攻法ではないけど、これはこれで面白いと僕は思います。あとは、因数分解ひとつとってもさまざまなアプリがあるので、その子に合うアプリを見つけてあげられるといいですよね。
スマホはツールのひとつ
──しかし、勉強と言っても、ずっと子どもがスマホを使っているのは、親としては心配です……。
西岡さん:長時間使うことがどんな影響を与えているかは、子どもの様子を見て判断すべきなのかなと思います。スマホ学習と言いながらも、子どもによってはやりすぎて、バランスを崩しているような子もなかにはいます。
一方で、対面やアナログの学習よりもデジタル学習のほうが相性が良く、ものすごく集中できて爆発的に伸びる子もいるんです。単純に時間で判断するのではなく、その子がどんなふうに勉強に向き合っているのかを見て判断することが大事だと思います。
保護者の方は、「スマホを使うことはあくまで選択肢の一つであり、勉強のツールとして良いものが増えた」ととらえ、お子さんがスマホでのびのび学べて「勉強は窮屈なものじゃない」と思えたらそれでよいのではないでしょうか。
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目標が明確な子も、やる気がない子も、スマホを上手に活用することで学力アップやモチベーションの向上につながることがわかりました。4回目では、西岡さんおすすめのスマホ活用法を伺います。
取材・文/北 京子
『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』著:西岡壱誠(東洋経済新聞社)
『読んだら勉強したくなる東大生の学び方 』著:西岡壱誠(笠間書院)
『「思考」が整う 東大ノート。』著:西岡壱誠(ダイヤモンド社)
「東大式スマホ勉強術 いつでもどこでも効率的に学習する新時代の独学法」著:西岡壱誠(文藝春秋)