クラスではいつも一人…小学生の友達関係、親は口出ししないほうがいいの?サポートのコツ【公認心理師・井上雅彦先生にきく】
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
小学生の友達関係、保護者にできることって?
仲の良い友達ができず、いつもひとりぼっちで過ごす子どもの様子を目にすると、保護者としては心配になり「何か親ができることは?」と考えることもあるかもしれません。発達ナビのQ&Aコーナーでも、以下のようにわが子の友達関係についての質問が寄せられています。
自閉症スペクトラムの小学1年の息子がいます。同じような障害もってる方で友達作りって上手くできてますか?
息子はコミュニケーションが下手で相手との会話が行き違いだったり、自分の興味あることは一方的に話続けるのでなかなか友達作りが難しいです。(学校の休み時間はほぼ補助の先生と遊ぶか補助の先生を入れて少人数の友達と遊ぶかしてます)
https://h-navi.jp/qa/questions/38431
1、2年のときは一人でいたくて一人でいたのですが、3年になって、友達がいないから楽しくないと言います。私から見ても楽しくなさそうです。たまに楽しそうにするのですが。。。(略)
一人が嫌なら、誘ってもらえないなら自分から誘うしかないんだよって言っても、言わず。。
本人が一番寂しいとは思うのですが、それを見ていると私まで寂しくなります。https://h-navi.jp/qa/questions/141006
今回はそのような友達関係のお悩みについて、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生にお伺いしました。
友達を作ろうとしない……このままでいいの?
A:保護者としては「わが子は友達が少ないみたいだ」と感じて心配になることもあるかもしれません。お子さん本人が「面倒くさいから友達はいいや」と言っていたとしても、「本当にいいの?」と思う気持ちも自然なことだと思います。
これまでいろいろなご相談をお受けしてきましたが、「無理をしてまで友達に合わせるよりは、自分ペースで過ごしたい」という判断をする子どもたちも、もちろんいます。
お子さんは小学6年生ですよね。高学年になるまでの段階で、おそらくいろいろな努力をされたり、いろいろなお友達を見てきたりしているのだと思います。その中で、「無理をして友達は作らない」という判断が自分でできて、保護者に言葉で伝えられるというのは、ひとつの成長と言えるかもしれません。
保護者としてご心配なお気持ちも大変理解できますが、自分の過ごしやすい方法が分かり、言葉で伝えられる力もあるお子さんですので、心配しすぎなくてもよいのかもしれません。
一方でお子さんは「友達は一切いらない」と言っているかというと、そういうわけではないかと思います。ただ“自分が頑張りすぎずに付き合える友達”が、今のクラスの中ではいないのかもしれませんね。
自分の好きなものや興味関心があるものが、今のクラスメイトとは合わないという場合には、学校以外の別のコミュニティがあるとすごくいいなと思います。不登校でゲームが大好きなお子さんが、ゲームの大会に出て、そこで別の学校のお子さんと知り合いになってだんだんと仲良くなり、そのことがきっかけで学校のクラスメイトに対する苦手意識も和らいだというケースもありました。
今のクラスの中に、自分と話が合う友達が必ずしもいるわけではないものです。今すぐでなくても、本人と趣味や興味関心が似ていて、楽しく過ごせる友達もきっと見つかるのではないかと思います。そういう機会を学校以外でも作れると、よりいいのかなと思います。お子さんのお気持ち次第ではありますが、あまり同年齢にこだわらなくても良いかもしれません。
子どもの友達作り、どうサポートしたらいい?
A:同年齢集団の中で、遊びに入りにくい理由は複数考えられます。例えばクラスで流行っている遊び自体に興味がない場合、その遊びのルールがよく分からない場合や、クラスメイトの中に指示が多かったり言葉が強かったりと苦手な友達がいる場合などが考えられます。
幼児のお子さんや低学年であれば、遊びのルールやコミュニケーションの仕方を事前に大人と練習することも有効かと思います。ルールが分かるだけでも遊びに参加しやすくなりますね。例えば遠足や宿泊体験ではみんなと遊びたいという場合には、どのようなレクリエーションがあるか事前に先生に聞いておいて、お家で事前にやってみるということはできるかもしれません。
対人的なやりとり自体は、大人相手のほうが学びやすい面はあると思います。お家でできることは限りがあるかもしれませんが、ご家族やご親戚の方と遊びを通してやりとりしていく機会も、本人の自信につながると思います。放課後等デイサービスなどでもサポートしてもらえるでしょう。
お子さんが自信をもって参加できる遊びや活動があれば、先生にご相談して、その遊びや活動で活躍できる場を作ってもらうなんてこともできるかもしれませんね。
まとめ
学齢期の友人関係については、低学年から高学年・思春期にかけて、さまざまなバリエーションや変化が求められます。
それぞれの年齢や環境のなかで、どのようなタイプの友人とどのような付き合い方をするのか、一人ひとりの発達や状況、好みをもとに考えていくことが大切です。
現在のクラスや同じ年代にしばられず、少し長い目で見ていくという視点も大事になってくるかもしれません。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。