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<アユ>は孵化したタイミングで育つ流域が変わる? 耳石を分析→生涯履歴を読み解くことに成功

サカナト

アユ(提供:PhotoAC)

アユは日本を代表する魚の1種であり、明治時代の水産増殖学的研究にはじまり、研究が盛んに行われてきました。一方、実河川における生態学的な研究は乏しく、身近な魚でありながら謎の残された魚でもあります。

古来より知られる有名な習性も、謎の一つです。アユの親は秋になると産卵のため下流の産卵場に集まりますが、アユが流域のどこで成長しどこからやってくるのか、これまで分からなかったといいます。

そのような中、岐阜大学環境社会共生体研究センターの永山滋也特任助教(2025年4月より長野大学共創情報科学部 設置準備室准教授)らの研究チームは、長良川漁師の協力で得たアユの耳石を分析し、長年のミステリーを解き明かしました。

この研究成果は『Scientific Reports』に掲載されています(論文タイトル:Habitat use and growth strategies of amphidromous fish “ayu” throughout a river system)。

日本を代表する魚<アユ>

アユPlecoglossus altivelis は日本を代表する魚の1つであり、釣りや漁業の対象としても人気の魚種です。

アユ(提供:PhotoAC)

日本人に親しみが深いアユは、古くより研究が盛んに行われてきた一方で、謎が多い魚でもあります。古来から知られるアユの有名な習性もその一つです。

産卵期になると下流に集まるアユ

漁業の対象だけではなく、翌年の野生アユ集団にとっても、極めて重要なアユ産卵親魚(落ちアユ)。

アユは秋の産卵期に下流に集まりますが、この親のアユが下流の産卵場に集まる習性は古来から知られているものの、アユが流域のどこで成長し、どこからやってくるのかは謎に包まれていました。

そこで、岐阜大学環境社会共生体研究センターの永山滋也特任助教らの研究チームは、長良川漁師の協力で得たアユの耳石を分析。長年のミステリーであるアユの習性の謎を解き明かしました。

耳石を用いてアユの謎を解明

この研究では、2022年9~12月に長良川本川下流部の鏡島において、漁師の許可を得てアユ産卵親魚133個体を捕獲。魚のバランス感覚や聴覚に関する構造物「耳石」を摘出・薄片化し、耳石の核から縁辺にかけてストロンチウム同位体比の測定が行われました。

長良川(提供:PhotoAC)

測定の結果、アユ親魚の約90%は天然遡上由来放流由来は10%程度で、天然遡上アユは産卵集団に大きく貢献していたことが判明。さらに天然遡上のアユ親魚は5つの生息場利用パターンを示し、天然遡上116個体のうち、本川上流域と本川中流域で育ったアユが約84%、残りは中流域の支流を利用していることが分かったそうです。

また、前年の秋に早く生まれて、春に早く遡上したアユは本川利用タイプに、遅く生まれて遅く遡上したアユは支川利用タイプになる傾向が見出されています。加えて、長良川において、早生まれアユは本川の餌場を優先的に利用し、後にやってくる遅生まれアユは先客がいる本川を避け、支川に餌場を求めていることが判明したのです。

今後の研究に期待

今回の研究で、長良川におけるアユ親魚の生涯履歴が明らかになったほか、孵化のタイミングがその後どの流域で成長期を過ごすのかに関係していることが判明。長年「謎」とされてきたアユ生態のミステリーが、解明されました。

この研究成果は、河川環境整備やアユ資源管理への貢献が期待されています。

(サカナト編集部)

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