史上最高の続編映画「トップガン マーヴェリック」トム・クルーズのカッコ良さにロックオン
史上最高! スカイアクションの金字塔「トップガン」
1986年最大のヒット映画『トップガン』。本国アメリカ公開から遅れること半年。日本では12月に新春映画として全国公開された。筆者は高校の授業をさぼって映画館に直行。今はもうない横浜馬車道の東宝会館。満員の劇場の一番前の席で首をアゲながら観たトム・クルーズのカッコ良さに完全にロックオン!サウンドトラックから順次発進され、その年の全米ヒットチャートを飾った曲はすべてメロディをなぞれるほど聴き慣れていた。ラヴァーボーイ「ヘヴン・イン・ユア・アイズ」の挿入シーンがどうしても分からず、3回目の鑑賞でやっと判明。全部で4回は観た。そんなリピーターも多かったのだろうか。『トップガン』はそのままお正月映画の主役となり、1987年度国内No.1興行収入を記録する大ヒットとなった。
サントラも80万枚に迫るセールスを突破し、80年代洋楽ベストセラーアルバムの仲間入り。スリリングな「トップガン・アンセム」が刻む空母からの離陸シーン。点火と同時に「デンジャー・ゾーン」(ケニー・ロギンス)の爆音が戦闘機トムキャットのエンジン音を豪快にかき消す。『トップガン』はオープニングだけで、80年代を代表する究極のMTV映画としての地位を確立し、史上最高のスカイアクションの金字塔の称号までを手にすることになった。
スクリーンに再びロックオン!「トップガン マーヴェリック」
あれから36年。『トップガン マーヴェリック』はやってくれた。オープニング5分だけで、これ以上はないと思われる “究極の続編” の舞台に誘ってくれる。2019年夏に公開されるはずがコロナ禍などの影響で何度も延期。当初の予定から実に3年も遅れ満を持しての劇場公開。長く待たされたことによる上がっていくハードルと余計な不安は、最新戦闘機スーパーホーネットの離陸の瞬間に一気に解消。鑑賞中も期待値の高度だけがぐんぐん上がり続け36年ぶりにスクリーンに再びロックオン!
アメリカ海軍のエリートパイロットチーム “トップガン”。彼らは、選びぬかれた精鋭エースパイロットたちをもってしても絶対不可能な極秘任務に直面していた。ミッション遂行のため最後の切り札として白羽の矢を立てられたのは “マーヴェリック”(トム・クルーズ)だった。記録的な成績を誇るトップガン史上究極のパイロットでありながら、常識破りな向こう見ずな性格と、組織に縛られない振る舞いから、一向に昇進せず、現役であり続ける男。
なぜ彼は、トップガンに戻り、新世代トップガンと共にこのミッションに命を懸けるのか? その問いに散りばめられた前作からのファクトを拾い上げながら物語は展開していく。
高まる期待!世代を超えて心に響くテーマとは
“ハリウッド最大の続編” を存分に楽しむためには、前作を復習することが必須であろうが、『トップガン マーヴェリック』に至っては本作だけでも充分に満足できる内容になっている。
物語の主軸となるのは亡き相棒グースの息子であるルースター(マイルズ・テラー)との因縁の関係だ。父と同じトップガン・メンバーになったルースターは、教官マーヴェリックに対して敵意を剥き出しにする。かつて優秀なパイロットだった父の死因を求めて上官たちに無鉄砲な振る舞いをみせた若きマーヴェリックの姿とも重なる。
ただひたすら飛ぶことに執着できたマーヴェリックだったが、トップガン・チームの若き命を預かりながら、いまは彼らの才能を限界までに押し上げる責務を負う。どこの世界にもあるような上司という立場での苦悩を描く様は『トップガン』世代には感情移入しやすいはずだ。そして、最も信頼していた盟友グースはもうこの世にはいない。では今回は誰がマーヴェリックの相棒となるのか?(ニヤリ)。無人機の発達によりパイロットの存在意義や軍の組織変貌が問われるなか時代に対応しながらも、守り抜くこと、生きること、信じることを求めたテーマは世代を超えて心に響くはずだ。考えるな、行動しろ!
トム・クルーズが劇場公開にこだわった理由
伝説のパイロット、マーヴェリックが教官として再びトップガンに帰還。
―― この1行だけで『トップガン』ファンならば興奮必至だが『トップガン マーヴェリック』は見事にその期待に応えた。多くのファンが続編に望むであろうディテールを惜しみなく出し切った。作り手の自己満足に陥らず、決して懐古主義にもならずアングル、サウンド、ライン、ロマンス、フィーリングまでを含む『トップガン』要素を最新レベルでオマージュしてみせた。
やはり特筆すべきは、CGではない “リアル” を追求した実写による圧巻のフライトアクション。臨場感あふれるパイロット視線カットとコックピットのクローズアップは前作を踏襲しつつも、飛躍的にアップデートしたアトラクションのような映像体験が出来るドッグファイトは最大の見せ場だ。IMAX試写で拍手をしていたのは明らかに前作公開時には生まれていない若い世代だった。トム・クルーズが配信ではなく劇場公開にこだわった理由の答えがひとつ出たようだ。
本作には “胸アツ” 公開という言葉が使われているようだ。かつてのライバルで首席トップガンを争った冷静沈着な “アイスマン”(ヴァル・キルマー)と育んだ友情。戦闘機と併走するマーヴェリックのKAWASAKIバイクなど数えきれないアツいシーンがあったなかで、筆者の一番の “胸アツ” は前作をならって主要キャストたちが映し出されていくエンドロール直前。やっぱりそうだよね。
♪ Goodness gracious great balls of fire!
*UPDATE:2022/05/27