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「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を解説!介護施設における実施要件と留意点とは

「みんなの介護」ニュース

長谷川 昌之

オンライン診療の定義と介護施設における基本的な位置づけ

オンライン診療の定義と適用範囲

オンライン診療とは、医師-患者間において、情報通信機器を通して患者の診察及び診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為を指します。

2024年10月1日時点において、情報通信機器を用いた初診料等の届け出医療機関数は12,507に上り、年々増加傾向にあります。

この定義の重要なポイントは「リアルタイム」という点です。医師は情報通信機器を活用して、遠隔地にいる患者の状態を視覚及び聴覚により即時に認識する必要があります。つまり、文字や写真、録画動画のみでのやり取りではオンライン診療としては認められません。

オンライン診療には、以下のようなメリットがあります。

通院負担の軽減:特に移動が困難な高齢者や障害を持つ方の身体的・精神的負担を大幅に軽減 感染リスクの低減:医療機関での他者との接触を避けることができ、感染症対策として有効 時間の効率化:移動時間が不要となり、患者・医療従事者双方の時間を効率的に使える 継続的なケア:定期的な受診がしやすくなり、治療の継続性が高まる

特に介護施設においては、入居者が医療機関に通院する際の負担が大幅に軽減されるでしょう。これまで通院の度に必要だった介護スタッフの付き添いも最小限に抑えることができ、施設全体の業務効率が向上します。

また、入居者様の体調に急な変化があった際も、オンラインで迅速に医師に相談できるため、より安心な医療体制を整えることができます。

さらに、一度の診療時間内で複数の入居者様の診察が可能となり、かかりつけ医との密な連携を通じて、より質の高い継続的な医療ケアを提供することができるようになります。

頭に入れておきたいのが、遠隔医療には主に3つの分類があることです。

オンライン診療:診断や処方等の診療行為をリアルタイムで行う オンライン受診勧奨:医療機関への受診勧奨をリアルタイムで行う 遠隔健康医療相談:一般的な情報提供に留まり、診断等の医師の医学的判断を伴わない

このうち、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が全面的に適用されるのは「オンライン診療」のみです。「オンライン受診勧奨」は一部適用、「遠隔健康医療相談」は適用対象外となります。

ここで重要なのは、それぞれの行為の範囲を明確に理解し、適切な対応を取ることです。例えば、オンライン受診勧奨では、具体的な疾患名を挙げてこれにり患している旨を伝えたり、医学的判断に基づく治療方針を伝達したりすることはできません。

医療法における「療養生活の場」の位置づけ

医療法では、オンライン診療を実施できる場所として「医療提供施設」と「居宅等」の2種類を定めています。介護施設は「居宅等」に含まれ、以下の施設が具体的に定められています。

養護老人ホーム特別養護老人ホーム軽費老人ホーム有料老人ホームその他、医療を受ける者が療養生活を営むことができる場所

通所介護事業所等についても、患者が長時間にわたり滞在する場合には、「療養生活を営むことができる場所」として認められ、オンライン診療の実施が可能です。

「最低限遵守する事項」と医師法第20条との関係

医師法第20条では、医師が自ら診察しないで治療等をしてはならないと定めています(無診察治療等の禁止)。しかし、オンライン診療の適切な実施に関する指針で示される「最低限遵守する事項」に従ってオンライン診療を行う場合は、医師法第20条に抵触しないことが明確化されています。

これは、オンライン診療が安全性を担保し、診療として有効な問診、診断等が行われるための必要条件として「最低限遵守する事項」が設定されているためです。具体的には、医師による適切な判断、患者の状態についての十分な情報収集、診療計画の作成、本人確認の実施、適切な通信環境の確保などが含まれます。

また、この指針では「最低限遵守する事項」の他に「推奨される事項」も示されています。これらは必須ではありませんが、より安全で効果的なオンライン診療を実施するために参考とすべき事項として位置づけられています。

介護施設等で実施可能なオンライン診療の範囲と制限事項

通所介護事業所等が満たすべき要件

通所介護事業所等でオンライン診療を実施する場合、基本的な要件を満たす必要があります。

まず、オンライン診療は原則として、個々の患者の居宅において受診していただくものとされています。ただし、個々の患者の日常生活等の事情によって、居宅と同様に療養生活を営む場所として、患者が長時間にわたり滞在する場合には、通所介護事業所等もオンライン診療を受診できる場所として認められます。

療養生活を営む場所として認められるためには、以下の2つの要件を同時に満たす必要があります。

医療を受ける場として満たすべき一般的条件 プライバシーが適切に確保できること 医師との適切なコミュニケーションが可能な通信環境があること 緊急時の対応体制が整備されていること オンライン診療の受診の場として満たすべき特別な条件社会通念上、医療を受けるにあたり適切な環境が担保されていること 清潔が保持され、衛生上安全であること

例えば、職場が療養生活を営むことができる場所として認められる理由は、居宅と同様に長時間にわたり滞在する場所であり、上記の要件を満たすことが可能だからです。

同様の考え方で、通所介護事業所等においても、利用者が長時間を過ごす場所として、これらの要件を満たすことでオンライン診療の実施が可能となります。

ただし、これらの要件は一律に判断されるものではありません。個々の患者の日常生活等の事情によって異なるため、医師は患者の所在が適切な場所であるかについて、個別に確認する必要があります。

医療提供との区分と制限される行為

通所介護事業所等でオンライン診療を実施する際に重要なのは、医療提供との明確な区分です。通所介護事業所等は、自ら医療提供を行うことはできません。また、診療所に課せられる医療法の各種規制(清潔保持、医療事故の報告、報告徴収等)の対象とはなりません。

医療提供との区分において特に注意が必要なのが、オンライン診療時に診療の補助行為が必要な場合です。例えば、医療機器を使用した測定やバイタルサインの測定、検査データの採取などが該当します。これらの行為は、通常の医療機関であれば日常的に行われる行為ですが、通所介護事業所等では実施することができません。

また、通常医療機関に置いているような医療機器の使用も制限されます。心電図モニターや医療機器として承認されている血圧計、酸素飽和度測定器などの使用は、医療機関でなければ認められません。さらに、看護師等による採血や注射、処置などの医療行為も、通所介護事業所等では実施できません。

これらの行為が必要となる場合は、通所介護事業所等での実施は認められず、診療所の開設が必要となります。つまり、通所介護事業所等では、純粋なオンライン診療の実施環境の提供のみが認められ、それ以外の医療行為は一切認められないということです。

一方で、ICT機器の操作支援については、医療行為に該当しないため実施可能です。カメラの位置調整やマイクの音量調整、通信状態の確認など、診療の補助とならない基本的なサポートは提供することができます。

なお、高齢者のニーズに対応するサービスとして、通所介護のサービス提供時間外に、通所介護の職員が職場のICT機器を使用して利用者のオンライン診療をサポートする場合には、利用者からの同意を取得し、介護保険サービスと明確に区分した上で、保険外サービスとして実施することが可能です。

この場合も、あくまでも環境整備とICT機器の操作支援に限られ、医療行為は含まれないことに注意が必要です。

このように、通所介護事業所等におけるオンライン診療では、医療提供との区分を明確にし、認められる範囲内でのサービス提供を徹底することが重要です。施設の管理者は、これらの制限事項を十分に理解し、適切な運用体制を整備する必要があります。

利用者への説明が必要な事項

通所介護事業所等でオンライン診療を実施する際には、利用者の適切な理解を促すため、十分な説明が必要です。特に重要なのは、オンライン診療における医療提供の主体と責任の所在を明確にすることです。

まず、この場合における医療の提供は、居宅同様、医師と患者の一対一関係の中で提供されるものであることを説明します。通所介護事業所等は、あくまでも場所を提供しているだけであり、医療提供の主体ではありません。医療行為の責任は、原則として診療を行う医師が負うことになります。

また、通所介護事業所等は診療所に課せられる医療法の各種規制の対象とならないことも、利用者に説明する必要があります。具体的には、医療機関に義務付けられている清潔保持に関する規制や、医療事故が発生した場合の報告義務、行政からの報告徴収等の規制が適用されないということです。

さらに、オンライン診療特有の注意事項についても説明が必要です。例えば、通信環境の状況によっては診療が中断する可能性があることや、緊急時の対応方法、予約方法、診療時間の制約などについても、あらかじめ説明しておくことが望ましいでしょう。

オンライン診療における安全性確保とプライバシー保護

実施場所に求められる環境要件

オンライン診療を実施する場所には、対面診療が行われる場合と同程度に、清潔かつ安全であることが求められます。これは、医療を受ける場として基本的な要件であり、医療法の規制は受けないものの通所介護事業所等で実施する場合も意識すべきでしょう。

特に重要なのが、プライバシーの確保です。オンライン診療を行う空間は、物理的に外部から隔離される必要があります。これは、診療内容という機密性の高い医療情報を扱うためです。具体的には、個室や仕切りのある専用スペースを確保し、会話が外部に漏れないよう防音性にも配慮が必要です。

また、適切な照明や換気、清潔な環境も必要です。医師が画面越しに患者の状態を適切に観察できるよう、十分な明るさを確保することが重要です。さらに、長時間の診療にも対応できるよう、適度な室温管理や換気システムの整備も求められます。

通信環境の整備も重要な要件です。安定したインターネット接続が確保され、医師とのコミュニケーションに支障をきたさない通信速度が必要です。また、情報セキュリティの観点から、通信経路の暗号化やセキュリティ対策も適切に実施されている必要があります。

これらの環境要件は、単に形式的に整えるだけでなく、実際の運用において適切に機能することが重要です。定期的な点検や必要に応じた改善を行い、常に適切な診療環境を維持することが求められます。

急変時の医療機関との連携体制

オンライン診療において、患者の急変時に適切に対応できる体制を整えることは極めて重要です。特に通所介護事業所等では、高齢者が利用者の中心となるため、より慎重な対応が求められます。

医師は、患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておく必要があります。具体的には、患者の所在地近隣の医療機関と受け入れの合意等を事前に取得しておくことが求められます。

その際、地域医療に与える影響やその可能性について、地域の関係者と連携して把握することも重要です。

通所介護事業所等の職員は、急変時の対応手順を明確に理解しておく必要があります。

まず、オンライン診療中に利用者の容態が急変した場合、直ちに診療を行っている医師に状況を報告します。医師の指示に従いながら、必要に応じて救急要請を行い、あらかじめ定められた連携医療機関への受診手配を行います。

また、日頃から利用者の既往歴や服薬情報などの医療情報を適切に管理し、急変時に医療機関へ円滑に情報提供できる体制を整えておくことも重要です。これらの情報は、プライバシーに配慮しながら、必要な範囲で職員間で共有されている必要があります。

職員による機器操作サポートの範囲

通所介護事業所等の職員が提供できる機器操作サポートについては、その範囲を明確に理解し、適切に実施することが重要です。

職員が実施可能なICT機器の基本的な操作支援は、オンライン診療システムへのログイン方法の説明、カメラやマイクの設定調整、通信状態の確認などが該当します。オンライン診療の予約管理や時間管理といった事務的なサポートも可能です。

さらに、職員は情報セキュリティやプライバシー保護についても十分な理解が必要です。オンライン診療で取り扱われる情報は、機密性の高い医療情報です。職員は、診療内容を記録したり、画面を撮影したりすることは厳禁であり、知り得た情報の取り扱いには細心の注意を払う必要があります。

オンライン診療のサポートを行う職員に対しては、定期的な研修や教育を実施することが望ましいでしょう。特に、情報セキュリティに関する基本的な知識、緊急時の対応手順、プライバシー保護の重要性などについて、継続的な教育が必要です。

また、職員のサポート体制自体も定期的に評価し、必要に応じて改善を図ることが重要です。利用者からのフィードバックや、実際の運用での課題を踏まえ、より効果的なサポート体制を構築していく必要があるでしょう。

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