『キューティーハニー』『魔女っ子メグちゃん』『魔法のプリンセス ミンキーモモ』も!“ピンク髪”アニメキャラクターについて考えてみた
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は「ピンク髪のキャラクター」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
髪の色がピンク!? その色をアニメキャラクターに使う理由とは
今日はピンク髪のキャラクターについて考えてみました。原点をたどると、手塚治虫さん原作の『悟空の大冒険』(1967年)に出てくる竜子が最初の“ピンク髪キャラ”だと思われます。それより前だと白黒アニメが中心なんで、色がついてないこともあり、おそらく竜子が最初なんじゃないかと。
ピンクという色には2種類の使い方があって、ひとつはキャラクターが多いからバリエーションを付けるために、現実にはないピンクを髪色に使ってキャラを表現するため、です。
もうひとつは小さい女の子向けにかわいくするため、ですね。赤よりも柔らかい印象で使えるので赤のバリエーションというニュアンスもあると思います。
そういう意味では、2000年代以降は美少女ゲームの影響もあってキャラクターを最初から髪色で区別するということが当たり前になっていくので、キャラ表現のピンク髪が増えていきます。
昔は濃い茶や濃いブルーで黒髪を表現したり、あるいは茶色。金髪っぽいイメージで黄色という色使いが中心で、そこまでピンク髪のキャラはいませんでした。『悟空の大冒険』のあとは、判断に悩むところですが『キューティーハニー』(1973年)、『魔女っ子メグちゃん』(1974年)が「赤かなピンクかな」というぐらいの色合いになっています。
1980年代に入ると、『伝説巨神イデオン』(1980年)にピンク髪キャラが登場します。この頃のアニメはセル絵の具で塗っていて、色数が100色ないぐらいなんです。その中でキャラクターを区別しようとしたときに、ピンクしかなかったのだと思います。色数が少ない中で工夫していた結果ですよね。
『うる星やつら』(1981年)ではヒロインのラムの友達にランというキャラクターがいたのですが、このコの髪が濃いめのピンク髪。ランはかわいい子ぶっているという設定なので、かわいい色としてピンクが使われたのだと思います。
それからなんといっても『魔法のプリンセス ミンキーモモ』(1982年)ですね。ピンク髪で扇形に広がった髪のシルエットが、非常にインパクトのあるキャラクターでした。基本的には女の子向けの作品なのでピンクで可愛くまとまっています。コンセプトが“桃太郎”のキャラクターなので、桃色(=ピンク)が選択されるのは、極めて自然なんですね。このあたりから、だんだん、ピンク髪のキャラクターが増えていきます。
『聖戦士ダンバイン』(1983年)にもピンク髪は4人出てきます。チャム・ファウという小さな妖精の女の子、反乱軍のリーダー・ポジションであるニー・ギブン、ミの国の王女エレ・ハンム、あとはダブリン出身のパンクロッカー、ジェリル・クチビ。最初の3人は、異世界バイストン・ウェルの住人なので、異世界表現としてのピンクかなと。地上出身のジェリルはピンクの髪に青のメッシュが入っているのですが、パンクロッカーという設定なので、本当にピンクに染めているんだと思います。
『重戦機エルガイム』(1984年)でも妖精のリリス・ファウがピンクといえなくもない色をしています。80年代半ばになると、『機動戦士Zガンダム』のハマーン・カーンとサラ・ザビアロフがピンク髪です。前作『機動戦士ガンダム』はそんな色使いのキャラがいる感じではないのに、『Zガンダム』になるとそういう色彩設計が出てくるんですね。それから『銀河漂流バイファム』(1983年)のルチーナという女の子もピンク髪ですが、こちらは幼い子どもなのでかわいい感じにまとめるために、ピンクを使っているのかなという感じです。
というわけで、2000年以降ピンク髪が大発生しましたが、その前を振り返ると、1980年代に入ったところからピンクを髪色に使うケースが徐々に増えてきたという傾向が見えると思います。
ひとつの作品に登場するキャラクターが増えたことと、ちょっとずつリアリズムから距離をとって「アニメの世界」を表現するようになってきた、ということが重なり合った結果という仮説もたてられると思います。