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人の好意に申し訳ない気持ちになってしまう…「ありがとう」を素直に言えないのってなんでだろう【お悩み#97】

Sitakke

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はーい皆さん、ごきげんよう!満島てる子です。

ここしばらくひしひしと感じているのですが、特定のフレーズ、とりわけ挨拶のような決まり文句について、人にはそれぞれ使用頻度の差だったり、得意・不得意があるみたいですね。

何かあったときにはっきりと「ごめんね」が言えない人がいたり、はたまた「ごめんね」の濫用じゃね?と突っ込みたくなるぐらい謝り続ける人がいたり。

かと思えば、職場に来た段での「お疲れ様です」が、声が小さいわけでもないのに誰にも伝わってない人もいれば、これでもかというぐらい気持ちよく使いこなしちゃう人もいたりして。
不思議なものよねぇ。

ライター・満島てる子

かく言うあたしにも、実はなかなか素直に使いこなせていない言葉って、思い当たる節があるんです。
その点で今回は大変共感できるお手紙が。ご紹介します。

読者からのお悩み 「他人の好意を素直に受け取ることができなくて…」

あおたんさん、こんにちは!
ここでいきなりこのフレーズを使うのもアレなんだけれど。笑
お悩み投稿、こちらのコーナーに送ってくださり、本当に"ありがとうございます"!

そう、そうなのよ。
あたし、あおたんさんと似てるんだけれど、「ありがとう」って言葉の使い方、迷っちゃうときが多いというか。

それこそ、他人からの好意やサポートに対してその場で「うわ、うれしい!」とシンプルに喜ぶべきところを、それより先に「これにどうやって報いていくか」「相手に何を期待されているか」を考えてしまう癖みたいなものがあったりするのよね。

だから、「倍にして返さないと、何か返さないと、ついそこばかり考えてしまう」あおたんさんには、大いに共感というか。
ぶっちゃけ、あたしもあなたと同じように、人の好意を素直に受け取ることが苦手な人間の1人だったりします。
うちら、お仲間ね!←

自分のことを観察して考えてみると…

お花シリーズ「リンドウ」花言葉は誠実、悲しんでいるあなたを愛する

なんなんだろうね、あの湧き上がる特有の「申し訳ない気持ち」。

例えば、何かお祝いしてもらったり、ねぎらってもらったりすると。
すんごくハッピーにもなるのに、同時にその裏で、「いや…そんなわたくしめのような下々の者にまで…畏れ多くもこのような格別のご配慮をいただくなどとは…」という感情が、どこからともなく湧き上がってきちゃう。

本人としてもこれ、とても不思議な現象なんです。
なにゆえなんだろう。正確なところはわかんないのよねぇ。

ただここ数年、自分のことを観察してみて「これに起因しているのかな」と思うのが、おのれの自己肯定感というか、自己有用感というかの根本的な薄さ。

自分のことが嫌いだとか、そういうことでは決してないんだけれど(割とすんなり「好き」と言える方な気がする)。
例えば、何かを成し遂げることで周りから感謝される機会があったとしても、「いや僕なんてまだまだ」「こんな未熟者ではいけない」という感覚がこころの芯のところにあったり。

はたまた誰か素敵な人に、万にひとつロマンティックな感情を向けてもらえることがあったとしても、「こんな器量も愛嬌も伴わない人間にどうして」とネガティブな気持ちの発生が、ポジティブな受け止めよりも先行してしまうのよね。

なんだかさ、自分は何も持っていないというか。何者でもないというか。
相手から何かをもらったとして、それに応じられるような対価を持ち合わせていないよなぁって考えちゃうのよ。
良くないよねぇ。
あおたんさんも、そんな傾向あったりしないかしら。

SNS社会であることの余波だなぁと、常日頃感じているのですが。

今は誰しもがみずからの発信によって、「何者か」であるというラベル(「インフルエンサー」とかはその好例)や、自身の市場価値を示す数値(フォロワー数とかね)を得ることが、努力次第で可能です。

そのせいなのか、「何者かでありたい/何者かであらねばならない」という欲望が、世の中に大波と化して渦巻いているように思います。

もっと言えば、「何者でもない/何者にもなれない」という劣等感やコンプレックスが、煽りを受けやすくもなっている気がするんです。
(これ、辟易としちゃうよね。サリンジャー『フラニーとゾーイー』の内容を思い出すなぁ。みんなにおすすめしたい本のひとつよん)

あおたんさんやあたしは、そんな煽りをまともにくらってしまったタイプなのかもしれない。
くうぅ、そう考えると、なんだか悔しいよねぇ。

「誰かに何かを返すことのできる人間でありたい」という欲望自体が、ひるがえって「自分はそんな人間にまだなれていない」という失望を照らし出してしまう。

そのシステムそのものから抜け出すことができたらなぁと、夢想しているあたしなのでした。

あたしなりのAnswer

先日八雲にて。ご縁をいただけたことにも本当に「ありがとう」ですね

とはいえ、あおたんさん。
あたしたちは、なんだかんだ言いながらこの社会から離脱したり、そこからの影響を拒むことはできないと思うの。

だから、自分たちの抱えている「何者でもない/何者にもなれない」という感覚とは、今後もそれぞれで向き合っていかなければならないと思うんだけれど。

あおたんさんが今欲しいのは「何か効く言葉の薬」だったわよね。

つたないものかもしれないけれど、ここからあたしがつづっていく文章も含めて、あなたにそんな薬を届けられたらなぁと願いつつ、お悩みへの回答をさせていただこうかなぁと思います。

さて、あたしが思うに。
「素直にありがとうと受け取れていない自分」をどうにかするために、あおたんさんやあたしがまずすべきこと。それはきっと、意識的に感謝の気持ちを示すことだと思うのよ。

具体的に言えば、好意を受けることがあったときに、はっきりと「ありがとう」と口に出すこと。
これだと思うのよね。
この5文字の言葉自体が、あたしたちの薬になってくれるんじゃないかって。

「何を単純なことを言っとるんじゃ!」と思われたかもしれません。
でもあたし、これ結構本気。
だし、実際に日頃から実践していることなの。

しかもこれによって、ずいぶん自己肯定感の薄さも改善されたなぁって、最近そう感じているところなんです。

周りの人から、様々なかたちでよくしてもらったとき。
「自分は何ができるんだろう、何も返せないんじゃないか」という不安が先立つ心理状態だと、実は行動や発話が変わってくるように思います。

個人的な経験としても、何かいただきものをしたり、仕事関係で助けてもらったときなど、この手の不安に支配されていると、なぜかその場で感謝を伝えることに躊躇してしまうのよね。

思わず「ありがとう!うれしい!」ではなくて、「いやこんなもったいないものを…」とか「力不足で申し訳ない…」とか、ネガティブなフレーズが口から飛び出してきてしまう。
そんなことを伝えたい訳じゃないのにね。

だけど、だからこそ。
自己否定的な言葉を使ってしまう前に。

相手にまず「ありがとう」と伝える癖をつける。
その5文字を足がかりに、うれしい気持ちをあえてその場で、その流れで語ってみる。

こうすると、気持ちが暗がりに転がり込む前に、好意を向けてくれた人とポジティブなやり取りができるし、良い関係性がつむげる気がするの。

「引き寄せの法則」やら「プライミング効果」やら、大仰なマーケティング論や心理学っぽい何がしかだったりを、ここで語りたいわけではありません(言っていること、伝えたいことは、よくよく似ているけれどね)。

でもあたし、現実的な意味で言霊ってあるんだなぁって、つくづく思うのよ。

自分の口から発された言葉は、自分のこころを変え、行動を変えてくれます。
なんなら結果的に、その言葉は自分自身を救ってくれるかもしれない。

事実あたしは、「ありがとう」というコンパスにしたがって前に進むようになったことで、自分が何者であるかという疑問、何者でもない無価値な存在なのではないかという心配よりも、目の前の人とともに笑顔でありたいという、明るい欲求を抱けるようになりました。

あおたんさんも抱いているという、独特の「申し訳ない気持ち」からも、かなり解放されたように思います。

だからぜひ、あおたんさん。
これからは他者の好意、気持ちのどこかで「まず素直にありがとうと受け取れていな」かったとしても、そんな自分を一旦棚上げにして、きちんと「ありがとう」と口にするようにしてみてください。

そしてできるなら、その好意が「どううれしく、どうありがたい」のか、言語化して相手に伝えてみてほしい。
それが、あなた自身の癒しとケアにも、きっとつながるはずだから。

「ありがとう」という言葉。
それが、あたしだけでなくあおたんさんにとっても、人生の薬になってくれるはず。

そう信じながら、あおたんさんがこれからも素敵な友人たちや仕事仲間と笑顔でいてくれますようにと、あなたのひとりの「苦手仲間」として、あたしは心から祈っているのでした。

ま・と・め♡

ということで、今回は「好意を受け取ること」の難しさについて書いてみました。
いやぁ今回のコラムも、自分のことを掘り下げて整理しなおす、とってもいい機会にさせてもらった気がするなぁ。

「何者なのか」を執拗に、あちこちで問われ続けるこの現代社会ではありますが。
その問いに振り回されないようにしながら、今隣にいてくれる人たちとともに、人生という道をここちよく歩んでいくこと。
それをこれからも大切にしていこうと、改めてそう考えているところです。

さぁて、次はどんなお悩みと出会えるかしら。
みんな、ぜひ応募フォームから、どしどし送ってちょうだいね!
ではではまた次回。Sitakkeね〜!

***

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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部あい
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集 しています。

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