モデル動物として<アフリカツメガエル>の有用性が判明 ヒト病原性細菌の感染モデルとして利用可能?
細菌がヒトに感染することで引き起こされる感染症。細菌感染症のメカニズムを理解するためには、モデル動物を用いた感染実験が必要不可欠です。
マウスなど哺乳類の感染モデルはヒトに近い構造を持つ利点がある一方、様々な問題から多数の個体を用いた探索研究が困難とされています。この課題を解決するため非哺乳類動物感染モデルが用いられてきましたが、免疫システムや呼吸様式がヒトと異なる問題がありました。
そのような中、岡山大学の研究チームは哺乳類と類似した免疫システムと呼吸様式を持ち、発生生物学におけるモデル動物でもある「アフリカツメガエル」が、ヒト病原性細菌の感染モデルとして利用できるのか解析を行いました。
この研究成果は『Infection and Immunity』に掲載されています(論文タイトル:Xenopus laevis as an infection model for human pathogenic bacteria)
様々な研究で利用されるモデル動物
細菌によって引き起こされる細菌感染症の分子メカニズムを解明するためには、動物感染モデルの利用が必要不可欠。ですが、これまで利用されてきたマウスなどの哺乳類感染モデルは、倫理面・コスト面の問題により多数の個体を用いて薬剤などを探索することが困難でした。
また、これらの問題を解決するためにゼブラフィッシュやショウジョウバエなど哺乳類ではない動物モデルが利用されてきましたが、ヒトと免疫システムや呼吸様式が異なることが課題となっています。
そうした中、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の栗生綾乃大学院生、学術研究院医歯薬学域の石川一也助教、古田和幸准教授、垣内力教授らの研究グループは、哺乳類と類似した免疫システムと呼吸様式を持ち、発生生物学のモデル動物であるアフリカツメガエルについて、ヒト病原性細菌の感染モデルとして利用できるか検討を行いました。
アフリカツメガエルはヒト病原性細菌で感染死する
この研究ではアフリカツメガエルへヒトに対する病原性細菌である黄色ブドウ球菌、緑膿菌およびリステリア・モノサイトゲネスの腹腔内注射が行われています。
実験の結果では、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、ステリア・モノサイトゲネスがアフリカツメガエルを感染死させることが判明。また、黄色ブドウ球菌と緑膿菌によるアフリカツメガエルの感染死は、臨床上使用されている抗菌物質により抑制させることも明らかになりました。
さらに、黄色ブドウ球菌とリステリア・モノサイトゲネスの病原性に関わる遺伝子を欠損させることで、アフリカツメガエルの感染死が抑制することも明らかになっています。
加えて、黄色ブドウ球菌を注射したアフリカツメガエルの血液、肝臓、筋肉から黄色ブドウ球菌が検出。黄色ブドウ球菌が、アフリカツメガエルに対して全身感染を引き起こすことを示唆しました。
これらの結果から、アフリカツメガエルがヒト病原性細菌の全身感染モデルとして利用可能であることが示されたのです。
今後の展望は?
今回の研究により、アフリカツメガエルがヒト病原性細菌により感染死すること、抗菌薬により感染死が抑制されることが判明しました。アフリカツメガエル感染モデルは感染症の分子メカニズムの解明や治療薬開発の効率化実現に貢献すると期待されています。
また、今後はアフリカツメガエル体内の細菌感染プロセスを解析し、ヒト病原性細菌の病原性に関する遺伝子を探索する予定とのことです。
(サカナト編集部)