【高知グルメPro】その酒と肴の旨さにハマって行く酒蔵が営む日本酒BAR「BAR夢許/高知 美丈夫」フードジャーナリストが行く高知満腹日記
その店は高知市の中心エリア、日曜日には街路市の「日曜市」が開かれる追手筋に面した二階にあった。
カウンター席とテーブル席がひとつだけのBARである。
だが、普通のBARではない。
日本酒のBAR、しかも銘酒「美丈夫」で知られる蔵元、濵川商店が営むBARなのであった。
バーのバックヤードである壁には、醸されていく日本酒造りの映像が流されている。
その美しく尊い映像を見ながら、喉が鳴った。
日本酒が、美丈夫が飲みたいと、喉が鳴った。
酒のメニューを見れば、しぼりたて生原酒の新酒、特別純米にごり酒、鑑評会出品酒の大吟醸、「吟の夢」という純米大吟醸、泡酒の純米大吟醸である「舞」うすにごりなど、8種類ほどの酒がラインナップされていて、片っ端から飲みたくなる。
その気持ちをグッと抑えて、店長である竹崎洋子さんに全てを委ねることにした。
おつまみも高知の郷土料理や高知産の野菜、特産物などがずらりと並んでいる。
どれにしようかと悩んでいると、
「飲まれているお酒に合わせて、 おすすめでご提供いたします」と、嬉しい申し出で、こちらもお任せすることにした。
まずは細いグラスに注がれた泡酒の舞である。
きめ細やかな泡立ちのスパークリングタイプで、フレッシュな生き生きとした香りが鼻に抜けていく。
おつまみが運ばれた。
夢許酒粕クラッカーとカツオのはらんぼ酒盗である。
美丈夫夢許の酒粕を使って焼き上げたクラッカーにクリームチーズ、 土佐まなべ商店のはらんぼの酒盗をトッピングして、カリッと噛む。
ほんのり甘い酒粕香がして、それがなんとも酒盗と合うのだな。
そしてそこに舞を流し込む。
心の底から酒を飲めい、もっと飲めいという声が迫り上がってくる。
最初からいいぞ。
次は「慎太郎」という純米酒の燗酒が運ばれた。
お相手は、「ゆで卵の酒粕酢醤油煮」である。
「夢許(ゆめばかり)」というもっとも高価な純米大吟醸の酒粕と酢、醤油と出汁を合わせ地に半熟茹で卵を浸けたものである。
酒粕の華やかな香ばしさと酸味、旨味にまみれた卵がなんとも色気があって、燗酒と合わせるとたまらない。
こいつを米の旨味に富み、切れの良い慎太郎が受け止める。
うむ。調子が出てきた。
次に運ばれたのが「田野のかんばもち」である。
中芸地区で知られるかんばもちは、 芋の餅である。
高知弁で言う「かんば」、つまり干し芋と餅を合わせ、砂糖を入れた餅だという。
松本米穀店製のそれは、さくっと軽く、ほんのり甘く、妙にあと引く。
そして酒に合う。
餅を食べながら酒を飲むなんてことはないが、かんばもち特有の甘みのせいか、酒と合わせると、止まらなくなる。
「燗酒ならこれもいいですよ」と、次に運ばれたのが塩むすびだった。
高知県農業技術センターが開発した高知県産酒造好適米「吟の夢」を使ったおにぎりだという。
夢許酒粕でつけたお漬物が添えられている。
同じ米から作った酒とおにぎりである。
そりゃあ、合う。
塩むすびをアムッとかじりながら酒を飲む。
幸せが、体に満ちていく。
目を閉じれば、稲がたわわに実った田んぼの真ん中に立っていた。
最後は、「酒ではなくこちらもどうぞ」と、「蔵ハイ」が出された。
吟醸酒粕で造った米焼酎と、高知県産のゆず、瀬戸内レモン、しょうがなどをブレンドして作ったもので、実に爽快な味わいである。
つい飲み過ぎてしまう、魅力的な酒である。
合わせた肴は、「油揚げのツナ粕のっけ焼き」と「酒粕のチーズ焼きバゲット添え」であった。
香ばしく焼かれた油揚げとツナ粕が馴染み、バケットに乗せて食べる香り高いチーズ焼きで「蔵ハイ」をグイグイといく。
これまた楽しい。
他にも、いずれも地元の生産者である、知る人ぞ知る「谷農園」のみずみずしいミョウガや、
ファームベジコの日本一のキュウリを使った「ちくきゅう」、
そして、鰻HASHIMOTO特製の鰻肝の佃煮など、酒を飲め飲めと誘う、高知特産のつまみがこじゃんとある。
この店の酒と肴は、呑兵衛にとっては危険である。盃と箸が止まらなくなる。
しかし、その酒と肴の旨さと奥深さを味わいに、また来たくなる店なのである。
店舗情報
BAR夢許/高知 美丈夫
営業時間:17:00〜24:00(日曜12:00〜17:30)
定休日:月曜
電話番号:088-803-7221
住所:高知県高知市追手筋1-10-1 2F