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どう見ても「チェンソーマン」な低評価ゲームをプレイしてみたら……理不尽&手抜きなシステムで超イライラ!

おたくま経済新聞

Chainsaw Man : Mortal .Fighter

 藤本タツキさん原作の人気漫画「チェンソーマン」。アニメ化もした話題作ですが、先日App Storeにて「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」というゲームを発見しました。

 タイトルもアイコンもキャラクターも「チェンソーマン」にしか見えません。明らかファン狙いの人気便乗作であり、パクリと言われても仕方ないレベル。いったいどんな内容なのか、実際にダウンロードしてプレイしてみました。

AppStoreの「Tokyo Revengers Street Brawl」ページ

■ 制作したのは怪しさが拭えない海外のゲームスタジオ「OUAZ GAMES」

 「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」は「OUAZ GAMES」という海外のスタジオが制作したアプリゲームです。

 「OUAZ GAMES」について公式ホームページで確認したところ、設立年が2018年であること以外、会社に関する詳しい情報は掲載されていませんでした。そこでビジネス特化SNSであるLinked Inにて確認すると「OUAZ GAMES」の所在地はモロッコのカサブランカと記されています。

 また、創業者兼CEOがYasser Ouaziz氏であることも判明。「OUAZ GAMES」の社名の由来は、創業者の名字の一部をとって「OUAZ」としたのだと推測されます。「Ouaziz」は日本では「ワジズ」と訳されることが多いようなので、読み方は「ワジゲームズ」あるい「ワズゲームズ」といったところでしょうか。

 一方でイギリス政府の情報サイト「GOV.UK」によれば2023年に同じ創業者による同じ名称のスタジオがロンドンに設立されています。モロッコから拠点を変えたのか、2拠点にしたのか、どちらなのかは不明です。

 さらに付け加えれば創業者のYasser Ouaziz氏はInstagramの情報を辿る限り、現在はアラブ首長国連邦のドバイを拠点にしている様子。プライベートもビジネスも順調そうな、イケイケなベンチャー経営者という雰囲気の写真を多く投稿しています。

 「OUAZ GAMES」というゲーム会社はたしかに存在するものの、所在地が今ひとつハッキリせず。どうしても怪しさが拭えないゲームスタジオです。

 会社HPに掲載されている利用規約にも気になる点を見つけました。次に記すのは、規約末尾にある英文を日本語に翻訳したものです。

 -このカスタマイズされたエンドユーザーライセンス契約には社名、ゲームタイトルが反映されます

 -ukやメールアドレスなどを、実際の会社詳細に置き換えることを忘れないでください

 -この文書が法的義務と権利保護のニーズを完全に満たしていることを確認するために、法律の専門家にこの文書をレビューしてもらうことを強くお勧めします

 そう、注意書きが記されていました。恐らくもとはどこかで配布されていたテンプレートなのでしょう。それを使うこと自体は全く問題ではありませんが、消すべき注意書きを消さずにそのまま使用している点には、運営自体の粗さを感じさせます。

■ 低評価にも納得!「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」の理不尽なシステムにイライラ

 本題のゲームに戻ります。「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」はアイコンからもうチェンソーマンしか想起しません。他の作品を想起できるなら、逆に教えて欲しいレベルです。

 描かれているキャラクターは「チェンソーマン」の主人公・デンジに似ている、というよりもデンジそのもの。

 違いといえば頭がチェンソーになっていると言うより、なんかチェンソーみたいなヘルメットを被って顔からチェンソーの刃が出ているという点でしょうか。

 さらに気になるのがApp Storeの評価。星2。かなり低いです。

 「おたくま経済新聞」では直近で2件、怪しげなゲームを紹介してきましたが、2件ともゲーム自体の評価は悪くありませんでした。しかし今回は星2。人気便乗作なくせに、評価が低いというのはかなり深刻な問題です。

 まだ面白くないだけなら許せますが、面白くない以上の何らかの有害性があれば目も当てられません。正直ダウンロードするのはちょっと怖かったです。

 ところで以前「巨人の3️D」というゲームを紹介しました。こちらは「進撃の巨人」を元ネタにしたゲームでしたが、Appleの審査で「『進撃の巨人』に似ている」という理由で何度かリジェクトされていました。

 キャラクターに限って言えば今回の「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」の方がよっぽど元ネタ作品「チェンソーマン」に酷似していますが、リリースされてしまっています。

 「巨人の3️D」はキャラビジュアルや世界観設定など作品全体の要素が「進撃の巨人」に似ていましたが、「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」の場合は「チェンソーマン」と似ているのはキャラクターだけ。ゲームの中身そのものは「チェンソーマン」とは無関係です。

 リジェクトの基準は明確に表に出てきていないので掘り下げることはできませんが、キャラクターが似ているだけだとリジェクト対象にはならないのかも知れません。

■ 「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」を実際にプレイ

 「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」を実際にプレイしてみます。

 メイン画面もかなりアウトです。アイコンのキャラクターは細部を見れば「デンジに似た誰か」でギリギリ回避できそうですが、メインのキャラクターはどうしようもないほど「チェンソーマン」です。

 本作は横スクロールのアクションゲームです。画面左下のパッドエリアでキャラクターの操作、右下の剣ボタンで攻撃が行えます。

 基本システムはキャラを右に向かって移動させながら、画面の両端から現れる敵を倒していくというもの。画面左上の赤いHPゲージが0になるか、中央の時間カウントダウンが0になるとゲームオーバーです。

 HPゲージが0になった場合は広告視聴をすることで1回だけゲームオーバーした地点からやり直せますが、時間切れの場合は一発で最初からやり直しです。

 1つの大ステージにつき3つの小ステージがあり、3ステージ目がボス戦となっています。

 プレイヤーキャラクターは頭と右手にチェンソーらしきものが生えた「チェンソーマン」風のなにかです。

 こいつの攻撃は右手のチェンソーを使う斬撃がメインですが、チェンソーの要素は見た目だけ。効果音は「シャキン、シャキン」であり、実態はただの剣です。そこはこだわってくれよ。

 プレイしているうちにこのゲームがApp Storeで星2だった理由も分かってきました。あらゆる部分でストレスがたまるのです、このゲーム。超イライラします。

 まず広告です。本作はほかのスマホ向けフリーゲームと同じようにゲーム中に何度も広告が流れます。これ自体は収益化のためには仕方ないものだと思いますが、本作の不満点は広告を消すためにはサブスクリプションに加入する必要があるという点。

 1度課金すれば永遠に広告なしで遊べるようになるのではなく、月単位で課金をし続けなくてはなりません。おまけに課金額はひと月あたり9.99ドル。現在のレートで約1500円です。さすがに高い。

 ただこちらは広告さえ我慢すればいい話なのでまだいいでしょう。これだけで星2をつけるのはナンセンスです。

 ほかにストレスが溜まったのは回復アイテムのデザイン。このゲームにはHPとMPという2種類のゲージがあり、減少した場合はそれぞれ別の回復アイテムを用いて回復します。

 しかしこの回復アイテムのデザインが2つとも全く同じなのです。アイテムボックス内ではHP回復用のアイテムも、MP回復用のアイテムも、両方とも同じデザインで表示されます。

 実際に使ってみるまで、どっちがどっちなのかわからないのです。つまりHPがないから回復したいのに、使ってみたらMP回復アイテムだった、という事態が頻繁に起こります。

 さらに回復アイテムにはいくつかグレードがあり、グレードによって1度に回復できる量が変わってきます。が、これもデザインが同じ!!!50回復したいのに20しか回復しないアイテムを使ってしまったり、逆に20の回復でいいのに50回復してしまったりと、散々。

 ちなみにこの回復アイテムは敵を倒すとドロップするのですが、なんとドロップ時点ではちゃんと色やサイズなどの見分けがついているのです!!!

 HP回復アイテムは赤、MP回復アイテムは青と分かれています。(使用時には区別がつかなくなっているので、ゲージの色からの推測)。さらに赤青それぞれ回復アイテムにはサイズやデザインの違いもあり、おそらく回復量の区別もできているハズ。

 なのにアイテムボックスに移動するとまったく見分けがつかなくなります!!!なんでだよ!!!

 設計ミスか、途中で「区別すんのめんどくさい」と諦めたか、あるいはわざと見分けがつかなくしてゲームの難易度を理不尽に上げたか。真相はわかりません。

■ ゲームをやっていて最も「チェンソーマン」らしさを感じたのは…

 このゲームのストレスを感じる要素はほかにもいろいろあるのですが、あと1つだけ言わせてください。

 先ほどMPゲージがあるとお伝えしましたが、このゲームにはそのMPゲージを消費して用いる「必殺技」的なものがあります。右下にある小さな3つの丸いアイコンがそれです。

 こちらは「ショップ」ページにてコイン(ゲーム内通貨)+広告視聴で購入することができます。

 「コインの支払いに加えて広告視聴もさせられるのかよ」とつっこみたくなりますが、この際それは無視します。

 問題は「スキル」の価格が異様に高いことと、コインがなくても買えてしまうことの2つです。

 まず1つ目、「スキル」の価格についてです。

 「スキル」は3種類あり、最低でも1万コインが必要です。コインは敵を倒すことで得られるのですが、1回のステージで得られる額がだいたい1200コインなので、1万コインを貯めるとしたら8回はプレイしなくてはなりません。

 さらにこの「スキル」は1ステージ使い切り。1度購入したら1ステージ中しか使えず、そのステージをクリアしてもゲームオーバーになっても、次のステージには引き継げません。

 また「スキル」を使うには再購入する必要があり、つまりコインが底を尽きていたらまた何度もステージをプレイしなくてはなりません。

 ただ、ここで2つ目の問題点が関係してきます。実はこの「スキル」はコインがなくても広告視聴だけで購入できるのです。コインなしで購入するとどうなるか?借金、という形になります。つまり所持コインがマイナス値になるのです。

 ゲームを始めた当初、これに気がついていなかった私は「スキル使い放題じゃん」と思ってコインもないのに購入しまくっていました。その結果、借金が5万コインを越しました。

 「借金するだけでスキル使い放題ならそれで良くない?」と思う方をもいるでしょう。しかしことはそう単純ではありません。

 このゲームにはスキルのほかにキャラクターの強化も行えます。強化は200コインまたは500コインを支払うことでHPやMPの最大値を上げたり、攻撃力や防御力を高めることができます。こちらは借金システム不採用のため、しっかりコインで支払わないと強化できません。

 そしてこのゲームは進めていくうちに強化なしでは到底太刀打ちできない敵が出てきます。

 もうおわかりですね。私はコインもないのにスキルを購入しまくったせいで、借金がかさんでいたため、難敵を前にしても一切強化ができなかったのです。

 敵を倒すには強化が必要で、強化をするためにはコイン数を用意しなければならず、そのためには5万超の借金を返済しなければならないという状況。単純計算で40回近くステージをこなさなければなりませんでした。

 借金から始まるゲームなんて「どうぶつの森」以外で聞いたことないです。

 ある意味、この借金返済のために頑張っている時間が一番「チェンソーマン」らしかったかもしれません。(「チェンソーマン」1話にて主人公・デンジは亡くなった親の借金を返すために極貧生活を送っていました)

■ 「OUAZ GAMES」が手がける怪しいゲームは『チェンソーマン』以外にも

 さらに同じ「OUAZ GAMES」のアプリ一覧を眺めていると、もう1つ怪しいゲームを発見しました。

 「Tokyo Revengers Street Brawl」というタイトルです。はい、元ネタは「東京リベンジャーズ」ですね。アニメ化や実写化もされた和久井健さん原作の人気漫画です。

 このゲームはアイコンが「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」よりもさらに強烈です。

 どう見ても「東京リベンジャーズ」の主人公・花垣武道にしか見えない少年ヤンキーが物騒な西洋風の長剣を肩に担いでいるのです。西洋風の長剣はヤンキーに持たせたら一番面白い武器かもしれません。

 本当だったらこの「Tokyo Revengers Street Braw」でもう1本記事を書く予定だったのですが、こちら中身は「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」とほぼ同じなため、もう書くことがありません。なので割愛させていただきます。

 ただ1つだけお伝えしておきたいことがあります。

 「Tokyo Revengers Street Braw」のプレイヤーキャラクターはアイコンからも想像がつく通り「タケミチっぽい誰か」なのですが、こいつの武器はアイコンにあるような西洋風の長剣ではありません。

 チェンソーです。おい、チェンソーを使うな。

 西洋風の長剣を使え。いや、ヤンキーなら拳で戦え。せめて金属バットだ。

 キャラビジュアルまで変えているのに、思わぬところで手抜きです。右手がチェンソーになったヤンキーに苦笑いしつつ、私はそっとゲームを閉じました。

 こういった怪しい作品を決して擁護するわけではありませんが、どうせ作るなら細部までこだわってくれと思うのは私だけでしょうか。少なくともあからさまに手抜きするのだけはやめてほしいと思います。

 著作権というのはひどく曖昧なもので、「これはパクり」と結論づけるのは、なかなか困難。本作も今のところは限りなく黒に近いグレーといったところ。

 グレーな領域だからこそ元ネタ作品への敬意や愛といった、せめて表には出てきにくい部分をおろそかにしないでほしいと思います。

<参考・出典>
Chainsaw Man : Mortal .Fighter
Tokyo Revengers Street Braw
OUAZ GAMES公式サイト
OUAZ GAMES LinkedInページ
OUAZ GAMES GOV.UKページ
Yasser Ouaziz氏のInstagram

※本文掲載の画像は特に記載が無い限り、「Chainsaw Man : Mortal .Fighter」「Tokyo Revengers Street Braw」のゲーム内および関連ページのスクリーンショットです。

(ヨシクラミク)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024100803.html

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