『E.T.』続編、スピルバーグが阻止していた ─ 「苦労して権利を勝ち取った」
巨匠スティーブン・スピルバーグが、名作『E.T.』(1982)の続編計画を阻止していたことがわかった。2025年1月25日、映画祭「TCM Classic Film Festival」にて、スピルバーグとガーティ役のドリュー・バリモアが当時を振り返るなかで明らかになった。米が報じている。
『E.T.』はスピルバーグの監督第6作で、地球に取り残されたE.T.(地球外生命体)と子どもたちとの心温まる交流を描き、今もなおSF映画の最高傑作として名高い一作。名作のリバイバルやリメイクが相次ぐ昨今だが、スピルバーグは続編を作る意志がないことを改めて強調している。
「とても苦労して権利を勝ち取ったんです。『E.T.』を撮る前は、一部の権利は持っていましたが、多くの権利は私にありませんでした。だから、我々が“フリーズ”と呼ぶ、スタジオが続編を作ることを止められる権利もなかったんです。それがあれば、続編やリメイクをはじめ、IP(知的財産)の付随的な使用をコントロールできる。当時の私にはそれがなかったんですが、『E.T.』が成功したおかげで、その権利を手に入れることができました。」
映画の公開後、当時8歳だったバリモアは、スピルバーグから「『E.T.』の続編は作らない」と聞かされたことをよく覚えているという。幼心に残念な気持ちにはなったものの、「賢明な選択だと思ったので理解できた」そうだ。現に、スピルバーグは「続編を作りたいとは思わなかった」と話している。
「ちょっとだけ考えたことはあるんです。続編のストーリーを思いつくかな、と思ったんですが、唯一思いついたのは、誰かが書いてくれた『The Green Planet(原題)』という本を映画化するアイデアだけでした。E.T.の家が舞台で、E.T.の暮らしを見られるわけですが、それは映画にするよりも小説のほうがいいと思ったんですよね。」
スピルバーグが言っている『The Green Planet』は、『E.T.』のノベライズを執筆した作家ウィリアム・コツウィンクルが1985年に発表した後日譚小説で、日本でも『E.T.2: 緑の惑星ストーリーブック』として邦訳版が刊行された。星に帰ったE.T.は遠くから少年エリオットを見守っていたが、エリオットの変化に気づき、ルールを破って地球に戻ってくるというストーリーだ。
ちなみにスピルバーグにとって、『E.T.』は『ジョーズ』(1975)や『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)などを経て、ようやく作ることができた「自分の物語」だったという。「プレッシャーはなく、期待もされていないなかで、若者の映画を作りたかったんです。興行収入も期待しなかったし、みなさんの世界ではなく、純粋に自分の世界を送り出したかった。自分のための映画を作りたいと思っていました」。
それほどの思い入れがあったことも、スタジオに続編を作らせるまいとスピルバーグが決意した大きな理由だったのだろう。権利がスピルバーグにある以上、この作品はよほどのことがないかぎり、永遠に唯一無二の作品として存在しつづけるにちがいない。
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