Yahoo! JAPAN

20世紀前半を代表するアーティスト・カップルの創作活動をたどる「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展が3月1日~6月1日、東京『アーティゾン美術館』で開催

さんたつ

E450-6092

個々の創作活動とアーティスト・カップルとしての活動に迫る「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展が2025年3月1日(土)~6月1日(日)、東京都中央区の『アーティゾン美術館』で開催される。ドイツとフランスのアルプ財団をはじめとする国外のコレクションからゾフィー・トイバー=アルプの作品45点とアルプの作品36点。さらに多様な両者のコラボレーション作品7点の計88点が一堂に会する。

互いを刺激し合う2人の作品と歩み

ジャン・アルプ《共同絵画》おそらく1950年頃 アルプ財団 ベルリン/ローラントシュヴェルト (C)VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772。

テキスタイル・デザイナーとしてキャリアを開始し、緻密な幾何学的な形態による構成を、絵画や室内空間へと広げながら追求したゾフィー・トイバー=アルプ(1889-1943)。一方で詩人としての顔をもちながら、偶然的に生まれる形態に基づいてコラージュやレリーフ、彫刻を制作した夫、ジャン・アルプ(1886-1966)。

19世紀後半以降、それぞれがダダや構成主義、シュルレアリスム、デ・ステイル、抽象といった前衛芸術の前線で活動しながら、デュオとしての作品も残している2人。1943年にゾフィー・トイバー=アルプが逝去して以降も、残された作品はアルプの創作を刺激し、2人の創作は絶えず密接な関係にあったという。

本展では両者がそれぞれの制作に及ぼした影響や、デュオでの協働制作に着目。カップルというパートナーシップの上にどのような創作の可能性を見出せるか、改めて探っていく。

左:《「ダダ・ヘッド」とゾフィー・トイバー》1920年 アルプ財団 ベルリン/ローラントシュヴェルト 撮影=ニック・アルフ 右:《「臍=単眼鏡」とジャン・アルプ》1926年頃 アルプ財団 ベルリン/ローラントシュヴェルト (C) VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4762。
ジャン・アルプ(ゾフィー・トイバー=アルプの作品に基づく)《無題(頭部)》1950年代アルプ財団 ベルリン/ローラントシュヴェルト (C)VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772。

女性アーティストとしての先駆的な活動に注目

ゾフィー・トイバー=アルプ《モジュール式家具(グレーの棚)》1929年頃、アルプ財団、クラマール。

幾何学的抽象と色彩理論の研究を基盤に、テキスタイルや家具デザイン、建築設計、絵画など多方面で創作に取り組んだゾフィー・トイバー=アルプ。2021年には『ニューヨーク近代美術館』で回顧展が開催されるなど、再評価が進んでいる。女性にも門戸が開かれていた応用芸術から出発し、後に前衛芸術の最前線で男性のアーティストと肩を並べるまでに至った彼女の足跡は、女性アーティストのキャリア像を示すとともに、歴史的な意義をそなえているといえる。

夫ジャン・アルプに比べて日本においても紹介の機会が限られてきたゾフィー・トイバー=アルプの創作活動を多面的に紹介する興味深い内容になっている。

ゾフィー・トイバー=アルプ《オーベット200(ストラスブールのオーベットのバーの天井デザイン》1927年 アルプ財団 ベルリン/ローラントシュヴェルト。

ジャン・アルプのユニークな創作活動にも注目

ジャン・アルプ《貝殻=帽子》1965年 バーンホフ・ローランズエック 『アルプ美術館』 Photo= Mick Vincenz。

「アルプその人がアート」とマルセル・デュシャンが評したように、さまざまな前衛の動向の間を自在に行き来し、ユニークな創作活動を展開したジャン・アルプ。

有機的なフォルムの彫刻作品が特に知られるジャン・アルプは、創作活動は絵画と詩を起点としながら、1930年代初め頃から彫刻に取り組むようになる。カンヴァスに油彩で描く従来の絵画の形式ではなく、平面と立体を統合させたレリーフの形式を創出し、偶然的に見出されるイメージやコラージュに関心を向けるなど、規範や束縛から自由な創作を展開した。

20世紀美術におけるジャン・アルプという存在の重要性と、今日に通じる意義が作品を通して伝わってくる。

ジャン・アルプ《花の頭部をもつトルソ》1924年、アルプ財団、クラマール (C) VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4772。

関連プログラム・土曜講座で2人の軌跡をたどる

全3回に分けて、各回14時~15時30分、『アーティゾン美術館』3階レクチャールームにて土曜講座が開催。事前申し込み制、詳細は公式サイトにて。

第1回:3月1日(土)講師にアルプ財団、ベルリン/ローランシュヴェルト、キュレーターのヤナ・トイシャー氏とアルプ財団、クラマール、コレクション部門長のセバスチャン・タルディ氏を迎え「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ 生涯と作品」をテーマに開催。

第2回:4月19日(土)講師に石橋財団『アーティゾン美術館』学芸員・島本英明氏を迎え「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプのめざしたもの」をテーマに開催。

第3回:5月10日(土)講師に日本女子大学国際文化学部教授・河本真理氏を迎え「ダダと抽象を超えて—ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプの芸術上の〈協働〉(仮)」をテーマに開催される。

開催概要

「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」

開催期間:2025年3月1日(土)~6月1日(日)
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(5月5日を除く)・5月7日(水)
会場:アーティゾン美術館  6階展示室(東京都中央区京橋1-7-2)
アクセス:JR東京駅から徒歩5分、地下鉄銀座線京橋駅から徒歩5分、地下鉄日本橋駅から徒歩5分
入場料:WEB予約チケット1800円、窓口販売チケット2000円、学生無料(要WEB予約)※中学生以下はWEB予約不要。
※日時指定予約制(予約枠に空きがあれば、美術館窓口で購入可)
※同時開催「硲伊之助展」「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」の観覧可能。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏ 050-5541-8600
公式HP  https://www.artizon.museum/exhibition/detail/585

取材・文=前田真紀 画像提供=アーティゾン美術館

前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。

【関連記事】

おすすめの記事