オノマトペでオノマトペで巡る、名古屋の町中華vol.0|「後書き」
チクタクと進む時計の針、朝目覚めればサンサンと差し込む太陽の光、キッチンでは朝食の香り。あ、今日のお昼はパラパラの炒飯が食べたいな。
私たちの生活はあらゆる音で構成されています。
そしてここ名古屋の街に日々奏でられるウマい音は1日の楽しみ生みます!その音を聞けば自然と脳裏に浮かぶ料理たち…。あぁ、早く食べたい!
本来私たちには表現することのできない、自然の音、ウマい音。それを伝える術…。
そう、それはオノマトペ。
「ジュージュー」「ずるずる」「ジュワッ」
今回オノマトペのチューニングを合わせるのはみんな大好き"町中華"。半音たりとも外さない中華の奏でる音の数々。
「今日はあの音を求めて」
オノマトペで巡る、名古屋の町中華をご紹介します!
前回無事最終回を迎えましたが、この連載をパタリと綴じるための後書き。筆をすらすらと走らせるように名古屋の町中華が奏でた音を振り返っていこうと思います!
名古屋の町中華が奏でた音を振り返る。オノマトペでオノマトペで巡る、名古屋の町中華vol.0|「後書き」
連載を終えて
さて、今日はどんな音を味わおう?このようにして始まる連載も前回の12回を持って最終回を迎えました。これはその後のお話。小説のアッと驚く展開のあとに続くちょっとした小話、すなわち連載の後書きをお届けしていきます。きっと連載初の試み!
改めて全12回の連載、いかがだったでしょうか?私自身、一人呑み、名古屋めしの連載を担当させていただき、今回の町中華連載が3本目の連載となりました。何かエモい、宇多田ヒカルのデビュー当時の曲を聴いた感覚でエモい。この部分は読者の方を少し置いていくような内容になってしまいますが、連載って楽しい!それと同じくらいに大変、というか悩ましい部分もあります。
音を意識して書くって意外と難しかったな…。何事もそうですが、積み重なっていくだけ重みは増していきますよね。でもそれがやりがいに繋がっていくし、ナゴレコを支えるような企画になっていくわけで、それを担っていたことを光栄に思います。ナゴレコでは現在3本の連載が進行中なので、そちらもぜひご覧ください。そして過去の私の連載もご覧いただけると幸いです!
名古屋は個性的な食が集まる街。味噌を中心とした濃厚な味付けの料理の数々が名古屋名物として名を馳せていますが、昨今改めて注目されているのが町中華というジャンルですよね。
この町中華や昔ながらの酒場の雰囲気を現代版として落とし込んだのがネオ中華、ネオ酒場などのネオ〇〇というジャンルで、それは名古屋はもちろん全国で広まりつつありますよね。最初はネオって何?EXILEから派生した三代目とかFANTASTICSとかの類い?と思いましたが、食にも古き良きの中に吹く新風が人気に再び火をつけることがあるんです。名古屋の中華料理といえば「味仙」さんが有名ですが、そこに引けを取らない町中華が旨い音を日々奏でています。オノマトペ×町中華ってすごく面白いコンセプトの連載だったなと自負しております。
とにかく安いよ町中華
名古屋は魅力的なお店が多く、食を楽しむ街でもあると思います。それだけの価値もあってか名古屋の飲食店はほかの都市に比べても若干割高な印象があります。
もちろん安けりゃ何でもいいっていうわけではないですが、それでも美味しいものをお得に食べれたらそれに越したことはありませんよね。安くて美味しいを叶えてくれるのが町中華の魅力の1つ。町中華は誰もが信じ崇めてるまさに最強で無敵のアイドルなんです!
例えば連載第1回目で取り上げた「南海園」さんの鉄板麻婆豆腐!グツグツと煮立つ麻婆豆腐はなかなか出会うことができないインパクトのある逸品でした。お値段なんと350円!350円ですよ?!通販番組のように値段を念押ししたくなるくらいで、これは価格のベルリンの壁が崩壊しているといってもいいでしょう。
飲食店は原材料や高熱費の高騰で値上げを余儀なくされていることが日々ニュースでも報道されており、このような価格帯で手間のかかった中華を食べれることが町中華の魅力の1つだと思います。
町中華は気遣いの詰まった場所だったりする
中華料理って大人数で楽しむイメージありません?中華でしか見ないぐるぐると回る中華テーブル。私が幼少期に中華テーブルのあるお店に行った記憶がありますが、あれめちゃくちゃ楽しいですよね。ただ町中華と呼ばれるジャンルのお店ではそのような設備があるお店はなかなか見かけることがありません。
町中華は昔ながらの雰囲気にカウンター、テーブル、お座敷が主流。おひとり様でも訪れやすい環境にあるんですね。先ほども少し触れましたが、中華料理は大皿でドーンと提供されるイメージがありますが、無問題。町中華を巡って分かったんですが、ハーフ、スモールサイズがあるお店がほとんど。その上でおひとり様、少人数でもふらっと訪れて、お得に楽しむことができるセットを用意してくれています。たまにはこうして肩を並べて飲んで、ほんの少しだけ立ち止まってみたい場所なんです。
第6回目のプリプリのエビチリで小躍りできてしまう「春日飯店」さん。こちらもほろ酔いセットというお得過ぎるセットがあり、ドリンクに餃子、春巻きと対象の料理1品で1150円!マジでどうなってんだ、これは破格以外の何物でもないですよね。居酒屋でいうせんべろセットの立ち位置を担うようなセットを提供するお店が結構あり、町中華にフラッと寄ってく口実になるのではないでしょうか。
胃袋を支え続ける町中華のボリューム満点
安さとその雰囲気が魅力的な町中華ですが、その上でさらにボリューム満点!顔が濡れてもお腹が減っても力は出ないし元気出ない、腹が減っては戦はできぬのだ。
第5回のジュワっと溢れる肉汁で魅了してくれた唐揚げを提供する「大東飯店」さん。お得な感謝デーでは2個で150円で提供する唐揚げは溢れる肉汁だけでなく、その大きさも魅力の1つ。とても一口で食べれるサイズではなく、頬張ればお酒もご飯も止まらない食慾のブースターをかけてくれます。
唐揚げだけでなくお店の独創性を感じる中華風オムライスも圧倒的なボリュームを誇ります。炒飯を半熟の卵で包み込み、その上にエビフライ、ケチャップとタルタルソースで味付け、こういう料理があったらいいなを叶えたような逸品は食べ応え抜群!Creepy Nutsみたいに華麗な韻は踏めないけど、腹ペコの胃袋も間違いなく満たす!町中華ってそういう場所ですよね。
名古屋の町中華が奏でる音の魅力とは
ここまでいろいろと書いてきましたが、味、安い、ボリューム、その雰囲気…町中華の魅力は挙げ始めればキリがありません。
そもそも今回町中華を取り上げるにあたってきて用いてきたオノマトペ。これは外界の音や動物の鳴き声などを模した言葉である擬音語と物事の様態を象徴的に表す擬態語の総称したものです。突然言葉の意味だけを抜き取ると堅苦しい!ただ料理の感想として私たちが使う言葉って「美味しい」だと思うんです。
もちろん疲れ切った状態でボーっとしながら作って焦がしてしまった料理は美味しくないこともあるかもしれません。こんな私でも一応はナゴレコのグルメライターの端くれですから、その美味しいをいかに美味しいという言葉を使わず、より具体的な言葉でお伝えできるかが大切だと思っています。オノマトペはそれをより具体化させてくれる言葉の1つ。12のオノマトペを用いて名古屋の旨い音をお伝えしてきたわけです。
そして町中華が奏でる音は「ワクワク」「ウキウキ」と幸せな気持ちにさせてくれました。出来立てほやほやのラーメンからのモクモクとのぼる湯気、パラパラの炒飯から漂う香りは無意識の内に私たちを幸せな気持ちにしてくれます。その時の気持ちって自分が好きなアーティストの曲を聴いた時の高揚感に近いものを持っていると思います。美味しいと音には人を幸せに、元気に後押しする、まるでサンボマスターみたいな魅力があるのです。
もちろんそれは町中華だけでなくどの料理にでもいえること。名古屋の食の奏でる音を目いっぱい浴びて、時に理不尽なこの日々を不器用なりに乗り切っていきましょう!