【チェーンのチャーハン行脚】第21回:福岡旅最終日は『餃子のテムジン』で茶道のごとき「やきめし」の施し
博多ラーメンにも明太子にも目もくれず、ひたすらチャーハンとうどんを食べまくった2泊3日の福岡旅。最終日のチャーハンは『餃子のテムジン』と決めていた。
福岡市内に店舗多数。もちろん有名なのは餃子であり、同僚も過去記事において「かなりオススメ」と推しているが、私の目的はチャーハンである。
時刻は昼過ぎ、13時前。お店に行くと──
ランチメニューの看板が立っていた。あれ? もしかして今の時間、ランチ限定? 緊張しながら入店し……
「すみません、単品でチャー……いや、『やきめし』単品で注文できたりしますか……?」
「ああ、大丈夫ですよ〜」
よかった。正直、帰りの飛行機の関係で、15時のランチ明けまで待つのは厳しかった。よかった。本当によかった……と、カウンターに座ると、
なんと目の前が焼き台(ガスコンロ)! そして大将は、静かにチャーハン……いや、「やきめし」を作り始めた。
私と大将の間の距離は、おそらく1メートルも無い。私はかしこまりながら背筋を伸ばして椅子に座り、大将は静かに鍋を振る。
カンカンとの音はするが、あまり派手な感じではなく、しっとり、小刻み、「微動」的な動きで鍋を振る……いや、お玉を回す大将。なんだかこれ……
茶道のようだ。
私が入ったのは餃子のテムジンだが、時が時なら茶室だったのではないか。目の前にいるのはチャーハン版の千利休。いや、やきめし版の千利休。
──と、その時。
あまりにも大将の動きに集中しすぎて、不思議と「この世に私と大将しかいないような感覚」におちいった。まわりは漆黒のベタ塗り。究極のタイマン。
茶道の世界では、茶を点(た)て、客人がそれを受ける行為を「茶の施し (ちゃのたし) 」と言うらしいが、今の状態はまさに「炒の施し (チャーのたし)」なのでは……。
いや、「やきめし」だ。
──と、ハッと我にかえったら、目の前に「やきめし(768円)」が置かれていた。なんだったんだろう、あの感覚。テムジンのカウンター、おそるべし……。
肝心のやきめしは、ジットリ系。
具は、たまご、ねぎ、ハム? そして……タマネギ! 『博多一幸舎』のチャーハンにも玉ねぎが入っていたが、もしかして福岡スタイルに玉ねぎはつきものだったりするのかしら?
そしてテムジン、味付けがまた独特。これまで食べてきたことのないチャーハン。もちろん、おいしい。おいしいうえに、唯一無二の味がする。この味を醸しているのは何なのかと推測するに……
やはりタマネギ? スプーンですくい、口の中に放り込むと、先頭集団でトップを走るのはやはりタマネギ。ぶっちぎりの独走状態。これが唯一無二の秘密なのか、それとも……。
ともかく、シメに食べたいチャーハンだ。いいや、「やきめし」だ。
参考リンク:餃子のテムジン
執筆:チャーハン研究家・GO羽鳥
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24