高田翔と手塚日南人が出演!フランス発のウィットに富んだ二人芝居『Fallait pas le dire 〜 それを言っちゃお終い』がまもなく開幕
フランス発のウィットに富んだ二人芝居『Fallait pas le dire 〜 それを言っちゃお終い』が2025年2月21日(金)から3月2日(日)まで、六本木トリコロールシアター(東京都港区)で上演される。
2022年12月に同劇場で日本初上演された『それを言っちゃお終い』。これまでドラマ・リーティングやストレートプレイなどさまざまな形で上演されてきたが、記念すべき10回目の上演となる今回は、数々の舞台に出演して実力をつけている高田翔と、活動を始めたばかりではあるが大きな注目を集める手塚日南人の2人が出演。全15景からなる本作で12景を抜粋し、「彼」役と「彼女」役を場面ごとに入れ替わりで演じるという。
出演する高田翔と手塚日南人、そして本作の演出とプロデュースを手掛ける白樹栞氏に、作品にかける思いや見どころを語ってもらった。
――10回目の上演となる本作ですが、改めて脚本を読まれた感想や実際に稽古をしてみての感想を教えてください。
高田翔(以下、高田):この作品が10回目の上演ということで、記念すべきときに携わることができて、嬉しいです。
でも、どうあがいても、2人しかいないのでね……(笑)。今後の稽古でいろいろと深めていけたらと思いますが、きっとやる度に違うものになる気がするんです。「今日はこう感じたけれど、明日はまた別の感情が生まれて……」という風に。自分自身も変化を楽しみながら稽古をしていきたいです。
手塚日南人(以下、手塚):高田さんと楽しく稽古させてもらっています。
僕はスペインに留学していたことがあるので、『それを言っちゃお終い』の脚本には、慣れ親しんだ文化に近いものを感じますね。ただ、これを日本でやるとなると、フランスの変わったコミュニケーションスタイルや、今の時事的な問題、現代の社会風刺も踏まえないといけません。頑張ります。
――この作品の魅力は何だと思いますか?
高田:今回は「彼」役も「彼女」役もやるということで、見どころになりそうですよね。それに入れ替わるからこそ、違う見え方ができて、分かることも出てくる気がしています。僕としてはどういう風に演じていくのか、まだまだ考えているところですけど、いろいろ遊びたいなと思っています。
手塚:高田さんが仰る通りです。僕は2人芝居をやるのが初めてだし、女性役をやるのも初めて。初めてこのお話を聞いたときは「大丈夫かな……」と不安だったんですが、実際にやってみると、「女の人はこんな風に思っていたんだ!」と女心の勉強になっています(笑)。
それに「彼」でも「彼女」でも、高田さんが演じるときと僕が演じるときでは雰囲気が違ってきて、その違いがまた面白いなと思います。
――「彼」役と「彼女」役が入れ替えて上演するというのは、白樹さんのアイデアですか。
白樹栞(以下、白樹):はい。作者から「これは彼と彼女の2人の芝居だけれども、男優同士でもいいし、女優同士でもいい。15景から成り立つので、15人の男優と15人の女優で演じてもいい。15景は順不同でもいい」というメッセージをもらっているんですね。
今回は、そのうち12景を上演する予定です。配役については「このセリフは高田さんに言ってもらいたいな」とか「日南人くんのお稽古の成果が出てきたから、ここでは可愛い彼女をやってもらおう」とか私が考えて、決めました。
また、ピアノの生演奏も見どころだと思います。朗読やセリフに音楽が寄り添い、言葉と音楽が融合して1つの芸術作品となる「ポエトリーリーディング」の手法が今注目されているようですが、今回はSEも含めて、彼らのセリフに合わせて音楽を奏でてもらう予定です。
――お好きなシーンやセリフがあれば教えてください。
白樹:高田さんは「彼」と「彼女」の他に、配管工役もあるんです。同じシーンの中で、一人で二役を演じ分けてくれて……
手塚:あの場面、面白いですよね!
高田:僕は「履歴」が好きです。エロサイトを見ている/見ていないとか、履歴を消す/消さないというやりとりがあるんですけど、女性の方が絶対上手(うわて)なんですよね。「あぁ、男って馬鹿だなぁ」「フランスも日本も一緒だなぁ」なんて思っています(笑)
手塚:僕は最初読んだときは「キックボード」が分かりやすいオチがついていて面白いなと思ったんですが、稽古の中で「形成」も面白いなと思って。高田さんが途中、しゃくれてセリフを言う場面があるんですが、声色が面白くて、あれは絶対ウケるなと!
この作品には中絶の話もあって、なかなか演じるのは難しいんですが、作品のメッセージ性も強く、ぜひ見てもらいたい場面ですね。
――白樹さんの演出はいかがですか?
高田:フランスのことをよくご存じだし、作品に対する愛情がある方ですよね。僕は割と言いたいことも言える関係性になってきているので、今回も楽しくやれればいいなと思っています。
手塚:高田さんが稽古に入る前に、マンツーマンで稽古をしてくださったのですが、いろいろと気を使ってくださいました。もちろん厳しいところは厳しく締めてくださるんですが、基本的にまるで家族のように僕のことを考えてくださる。初めての2人芝居ということで緊張していたんですが、白樹さんのおかげで心置きなく稽古ができていると思います。
――白樹さんから見てお二人はいかがですか?
白樹:これまでもいろいろな俳優さんに出てもらいましたが、このお二人が一番面白いですよ。いや、他の俳優さんたちに怒られてしまうかもしれないですが……上演する度に「もっとこうしたい、ああしたい」と言うアイデアや反省点が自分の中にあったので、それを今回は爆発させたいと思っているんです。
高田さんはもう直すことがないぐらい、抜群にいい芝居をしてくださっていますし、手塚さんもめきめき力をつけてくださっている。自分で言うのも変な話ですが、最高のキャスティングです。
――お互いの印象を教えてください。
高田:とても落ち着いた方だなと思います。1対1でやるわけなので、これからどんどんコミュニケーションを取って、お互いのことを知っていけたらと思っています。
手塚:落ち着いて見えるのは、緊張しているからだと思います(笑)
高田:え!緊張しないでくださいよ!(笑)
手塚:はい、ありがとうございます(笑)。こんな風にとても心が広くて、優しい方です。高田さんは声が通るし、技術があるし、やっぱりすごいなぁと思っています。僕も高田さんの胸を借りながら、稽古を通じて、じゃんじゃん自分を出していきたいです。
――本作はお二人のキャリアにとって、どんな位置づけの作品になりそうですか。
高田:フランスの作品をやる機会って、本当になくて。多分ここ(※主催の一般社団法人Société Le Théâtre Elyséeのこと)でしかないものなので、すごくいい経験を積ませてもらっています。毎回楽しいですし、ありがたいことだなと思っています。
……俺は『プールサイドの男たち』も『ル・ゲィ・マリアージュ』も出ているので、多分今回で、レパートリーを全部制覇するんですよね?
白樹:実はこの間、フランスで爆発的にチケットが売れたという作品を買ったんです。その作品も看板作品になると思うので、まだ「制覇」とは言えないかもしれない(笑)
高田:分かりました(笑)。またよろしくお願いします……!
――手塚さんはいかがですか?
手塚:烏滸がましく聞こえるかもしれませんが、自分の殻を破るチャンスだと思っています。僕は俳優をまだ始めたばかりですが、高田さんのような大先輩と密にやらせていただけるのは本当にありがたい。いろいろな人に感動していただけるように、頑張って稽古したいです。
白樹:お母様(※手塚さんの母は女優の手塚理美さん)からは早速予約をいただきました。お父様(※手塚さんの父は俳優の真田広之)は来てくださるかしら?(笑)
手塚:どうでしょう?(笑)。でもごっそりハリウッドから来てくれたら嬉しいですね。
――最後に観客の皆さんへメッセージをお願いします!
高田:六本木トリコロールシアターはお客さんの顔も見られるし、反応も分かって、お客さんの空気や熱を感じやすい劇場。皆さんといい時間と空間を共有できるように、稽古を頑張ります。ご来場をお待ちしています!
手塚:ウィットやユーモアがたっぷり詰まった作品です。また、笑えるけれども、ちゃんとしたメッセージが潜んでいるところも魅力。我々日本人は特に意見を言わずに、思いを内に秘めてしまうところもあると思うんですけど、思いを秘めることによる弊害もあるし、言うことによる弊害もある。その両方を、男女の視点を通して見られる、しかも今回は男2人がやるというところに意味を感じています。
既存の価値観を超えていくような体験になると思うので、ぜひ楽しんでいただければ嬉しいです。
取材・文・撮影=五月女菜穂