5年後の武道館は「クラブジャズ・カルチャーの再燃」を目指すーーPOLYPLUS・TSUUJIIが語る、アルバム『COSMIC』の意義
インストジャズ界のオールスターチーム・POLYPLUSが今年活動10周年を迎え、約2年ぶりに3rdアルバム『COSMIC』をリリースした。2023年に「5年以内に日本武道館を目指す」という目標に向けて舵を切ったPOLYPLUS。5カ年計画の2年目をひた走る彼らは、『R.T.B.(=Road to Budokan)』と冠した全国ツアーを行いつつ、武道館を成功させるために仲間を増やし続けているところだ。今回SPICEでは、リーダーのTSUUJII(Sax)に現在のPOLYPLUSのモードと武道館への胸中をじっくりと訊いた。様々な人々との会話やコミュニケーションを通して見えてきた、TSUUJIIの原点とは。彼の最新の想いをここに記す。
「Road to Budokan」第2話の始まり。
キーワードは「クラブジャズ・カルチャー」
ーー2022年7月にMusic Club JANUSで行われた、レーベル・Playwright設立10周年イベントで「POLYPLUSは武道館に行きます」と宣言されてから、2023年に5ヵ年計画が練られて、2028年に武道館に行くことを決められたんですね。
計画が決まって走り出したところまでが第1話で、まさに今作『COSMIC』から第2話を始めようとしているところですね。
ーー第1話のフェーズでは、『R.T.B.』 の1本目として2023年6月に渋谷CLUB asiaで『POLYPLUS 2023 上半期単独公演』が、12月に『POLYPLUS LIVE TOUR 2023“R.T.B.”』が東名阪福で開催され、初日の東京公演のレポがSPICEでも掲載されました。
本当に最高のレポートでした!
ーーさらに今年春には『POLYPLUS LIVE TOUR 2024 "R.T.B." RISING』というタイトルで、福岡・名古屋・大阪・北海道でライブがありました。着々と武道館への道を進んでおられると。
POLYPLUSは「好きなことを好きなようにやる」というスタイルでずっと来たんですけど、コロナを経て、Zepp TokyoやBLUE NOTE TOKYOでライブをさせてもらったり、ドラマの音楽を担当させてもらったりする中で「これは俺たちが好きなようにやっているだけじゃいかんな」と。なぜならライブやお仕事のお話をいただくということは、POLYPLUSと関わってくれる人が増えるということで、その人たちに期待してもらっているんだなと。それはちゃんと背負って、自分たちの目指すべき場所に旗を立てようということで、武道館を目標に立てたんです。正直その時点では中身はまだなくて、旗を立てただけだったんですが、次の段階としてロードマップを描いたんですよね。でもそれは「何年に、ここでワンマンする」みたいな、小学生が描くようなロードマップだったんです。
ーーなるほど。
僕自身もインプットとアウトプットを繰り返して、色んな人と話す中で「POLYPLUSというインストバンドが、武道館というデカい目標を掲げるのは良いですね」と言ってもらえるようになりました。それと同時に「武道館で何するの?」と問われることもあって、「なるほどな」と。「武道館はライブの聖地だから」とか、「歴史的にビートルズから始まりましたよね」とか、そういうことは言える。だけど「武道館で何をするか」という考えやイメージは正直まだ深められていなかったんです。そんな時に「TSUUJIIが1番、POLYPLUSでやりたいことは何なの?」と問い直してもらう機会があって。その時に真っ先に、自分の中で純粋に浮かんできた答えが「クラブジャズ・カルチャーかな」だったんですよね。
ーークラブジャズカルチャーというと?
音楽ジャンルとしては、2~30年前から10年前ぐらいまでがピークで、現代では聞く機会が減ったワードになっていると思うのですが、自分自身の初期衝動がそこにあるんです。「マーケティング的にこういうことをやれば売れる」とか「こうやればバズる」みたいな出発点でPOLYPLUSのことを考えるのは、”あり方” に反するなという思いが元々あって。そこで考える起点をどこにするのか考えてみた時に、1番自分の熱がこもった、心から共有したいなと思うもの。それが僕の場合は「自分が憧れたクラブジャズ・カルチャー」だったんですよね。
ーーどうしてクラブジャズカルチャーだったのでしょうか?
始まりは、僕が大学生の頃にSOIL&“PIMP”SESSIONSを知って衝撃を受け、クラブに足を踏み入れたことです。そこで出会った、良いDJが愛を持ってセレクトした音楽、一夜の中で場をメイクして、ピークタイムに生音のライブがある……、そういったイベントで、音楽とダンスでコミュニケーションが生まれているカルチャーは、大人で、素敵で。そんな大学生の頃の憧れだったシーンに、20代半ばでカルメラに合流したことで、クラブジャズ・カルチャーに触れられるようになったんです。だけど、直後の2013年に風営法の問題が起きて、シーン全体がガクンと下がっちゃったんですよね。
ーー大阪でもクラブが摘発されましたね。
踊ったら捕まるという大変な時代があった。POLYPLUSは2014年に結成したんですけど、クラブジャズ・カルチャーへの憧れとリスペクトがあって始めているので、メンバーを見ても、クラブジャズを根幹に持ったセッションバンドだとよくわかります。だから今一度「クラブジャズ・カルチャーの再燃」を掲げたいなと思っていて。ずっとぐるぐる悩んでいたのに「クラブジャズ」というキーワードが自分の中でキラッと光って感じて、そこから糸口が見えて、「前代未聞の、武道館でクラブジャズイベントやったろうやん」というふうに、スルッと抜けていきそうな感じがしてる。それがここ1ヶ月ぐらいの話だったので、今インタビューで聞いてもらえてめっちゃ嬉しいです(笑)。
ーー 超リアルタイムですね! メンバーさんにもそのお話は共有されたんですか?
共有しました。それもここ2週間ぐらいの話なんですよ。メンバー会議の前に「冒頭5分もらっていいですか」と言って。その前にも個々にチラッと話しながら、いよいよ満を持して全体で共有して。そしたらメンバーの反応は良くて。そもそもナチュラルに成り立ちがクラブジャズにあるし、MELTEN(Key/from JABBERLOOP fox capture plan)さんは「そういう音楽をやると思ってたよね」と言ってて「そりゃそうか」と。だから大きく一周して、原点回帰でもあるんですよね。
ーーライブの現場力や、お客さんと一緒に盛り上がるパフォーマンスも含め、腑に落ちた感じですか?
そうですね、そこも経て。仮にクラブジャズを「洗練されたジャズサウンドとダンスミュージックの融合」であると定義するならば、POLYPLUSのサウンドはクラブジャズなのかと言われたら、やっぱり音楽的には逸脱してるところもいっぱいあるんですよね。別に自分たちは、”音楽ジャンルとしてのクラブジャズの正しさ” を追求したいわけじゃなくて。おっしゃるようにライブでフロアと一緒にセッションすることをやってきたし、生音のライブがあるクラブジャズ・カルチャーの要素を取り込んだバンドでありたいし、そういうライブやイベントづくりをしたい。自分がそれを1番肌で感じたのが、学生の時に見たSOIL&“PIMP”SESSIONSが出演しているクラブイベント。ナイスなDJが良い空気を作ったところからデスジャズが鳴って「うおー!」と盛り上がって、ライブ終わりにバーカンに行って。人によっては集まってテキーラを飲んでるし、DJ周りでゆらゆらしてる人もいる。あの感じが良かったんですよね。
10周年は、次の10年へ向かうための通過点
ーー「クラブジャズカルチャーの再燃」を掲げて、そこからまた進んだことはありますか?
次のツアーは大阪、福岡、名古屋とやって11月のファイナルがLIQUIDROOM。5カ年計画の2年目はLIQUIDROOMと決めていたので、そこは達成。だけどさっき言ったみたいに、最初の段階ではハコのサイズをデカくしていくことしか考えてなかった。そこを「クラブジャズカルチャーの再燃」が見えた時に「3年目をどうするか」を再考できるというか。なのでLIQUIDROOM公演も、今言ったことを感じてもらえる空間作りやライブ作りをしようと思っていて。ナイスなDJに入っていただく画策をしていますし、バーカンも充実させたいし、なんならアフターパーティーもあった方がいいよなとか。意味のある広げ方を考えたいです。準備が楽しみですね。
ーー具体的に進み出したんですね。
1個コンセプトのようなものを据えられたことで、迷いが減るし判断も早くなる。効率が良くなったからこそ、もっと色々できるようになる気がしています。
ーーしかも今年は結成10周年。特別な年に新たな1歩を踏み出せると。
ただの節目の10周年ではなく、この10周年から次の10年を見据えられそうな気がしてます。
ーー武道館と10周年で言うと、比重的にはどちらが大きい感じで進んでいますか?
武道館ですね。10周年はあくまで通過点。セーブポイントのひとつぐらいの感覚です。これはちょっと表現が難しいんですけど……POLYPLUSの最初の数年間は年に1~2回ライブをやって、ベロベロに飲んでただけなので(笑)。2018年に初音源デビューをしたのが紀元後で、それまでは紀元前のイメージです。
ーー2018年にレーベル・Playwrightに所属して音源をリリース、その10年後に武道館と考えると、導かれているというか、何だか意味のあることのように感じますね。
確かに! 僕は無宗教だし、スピリチュアルな思考は基本ないんですけど、何か大きなものに導かれることはあるとは思っていて。今回のアルバムタイトルの『COSMIC』は、メンバーのYUKI(Ba/from JABBERLOOP)さんがポロッと言ったワードなんですよ。YUKIさん曰く、本当にふっと思いついたと。今回はアルバムコンセプトを決めて、それに向かって曲を作ったんじゃなく、「10周年のアルバムを出そう。過去のタイアップものは全部入れたい!」ぐらいのことだけ決めて、みんなでどんどん新曲を放り込みながら作っていったので、最後までアルバムタイトルがなかったんですよね。でもいざラインナップを並べてみると「なんか『COSMIC』で括れてる感じあるよね」となったんですよね。結果的にそれが良かったんですけど、それも導かれたのかな(笑)。
今作も現時点の最高到達点を出せた
ーー新曲はセッションで作られたんですか?
新曲群は、10周年だからどうこうじゃなく、今のPOLYPLUSメンバーから出てくるものをセッションして作りましたね。でも昔ほど完全にセッションで作る曲はないかな。メンバーそれぞれが作曲して、楽譜を作ってそれを元にセッションしたので、過去曲のようにリフたコードだけを決めて、あとは全てセッションで、という作り方ではないですね。
ーーやはり劇伴などの経験を経て変わってきたんですか。
その影響はありますね。結果、それも全然良いし、表現の幅が広がったなと。そういう意味で言うと、今までよりも音色やミックスを作り込んだ感じはありますね。
ーーそれぞれのスキルがより高くなったから、できることでもありますか。
本当にそう思いました。例えば「float」は「Gotti(Gt/from Neighbors Complain)節のきいたナイスな曲なんですが、それをそのままやっちゃうと、ただのBGMっぽくなっちゃう。俺らはそれをホームセンター感と言ったりするんですけど、特にアルトサックスはそうなりがちだから、最初「どうしようか」となったんです。でもメンバーでディスカッションして、メロディーもコードも変わってないけど、音色の作り方とプレイを変えることでホームセンターでは聴き流せない魂の宿った音楽になり、最終的には全員大納得の形で完成しました。それこそ紅白まで行ったMELTENさんに、中山美穂さんのバンドでバンマスを張ってるYUKIさん。彼らの経験値が活かされつつ、それぞれが専門家として出すものがあって、うまく融合しました。他の曲もそういうやり取りのもとで作り込まれたので、アップデートした感じはありますね。
ーー各々の知見が詰まっているわけですね。「float」は、ライブで聴いたらすごいことになるだろうなという予感をかき立てられました。
ありがとうございます。POLYPLUSの全作品を手がけてくださっているミックスエンジニアの上原翔さんが、JABBERLOOPチームと一緒にクラブジャズシーンを生きてきている人だから。POLYPLUSの第5のメンバーがサポートドラマーの横田誓哉くんだとすれば、上原さんは第6のメンバー。「上原エフェクト」によって、最終もう1段音が面白くなっていますね。だた、毎作品その時の最高到達点なので「振り返ってみれば前よりもちょっと高くなってるかも」という感じで、今回が特別「明らかに俺たちスキルアップしたよな」という感じではないですね。今回も例に漏れず、現時点の最高到達点を出せたと思っています。
生音セッションバンドの真髄が出た「Hi-Tech Jazz」のカバー
ーー1曲目の「cosmic introduction」はこれまでのお話を聞くに、最後にできたんでしょうか。
そうです。実は図らずも伏線回収になってるんですけど、『"R.T.B." RISING』ツアーで使っていたSEをミックスで再編集したものなんです。ツアーのSEとしてMELTENさんが持ってきてくれた時は名前もついてなかったんですけど、全部できあがって「cosmic」とタイトルがついて、「イントロ欲しいよね」となって、「cosmic」はイントロダクション感があるよねとくっつけた感じです。これも導かれました(笑)。
ーー続くリード曲「survive」は、タイトルからもサウンドからも力強さが感じられます。
今のPOLYPLUSのパワーをいかに全開放するかという楽曲になりました。例えばBGMとして機能するアルバムであってほしいなら、正直曲順はどうでもいいというか、多分1曲目からドカンと来ない方がいいし、「survive」みたいな曲は入れないかもしれない。だけどあくまで「10周年の今のPOLYPLUSです」と出す時は、冒頭に自信のある2曲を並べたいねということで、「survive」と「Hi-Tech Jazz」の曲順を決めましたね。
ーー「Hi-Tech Jazz」に関しては、カバーを1曲入れようという感じで決まったんですか?
そう。カバーを1曲入れるのが最初に決まっていて。これも「クラブジャズ・カルチャーの再燃」に導かれていくんですけど、1stアルバム『debut(2018年9月リリース)』の時にAviciiのカバーをして、今でもライブで強い曲としてプレイするんですけど、実は最初そういう角度のカバーを考えていて、提案しようかなと思った時に、MELTENさんから「Hi-Tech Jazz」を提案されて。正直僕だけオリジナルを聴いたことがない状態だったんですけど、メンバーとレーベルの谷口慶介さんが「めっちゃ流行ってたよね!」と盛り上がっていて。約30年前の曲なんですけど、クラブですごく流行ってたらしいんですよ。それで、「このタイミングでやるの面白いよね」ぐらいの感じで決まりました。もちろん僕はオリジナルを聴いて勉強してレコーディングに臨みました。アレンジはMELTENさんが、演奏のディレクションはYUKIさんが舵を取ってくれて。結果、メンバー4人で空き時間に「自分たちのこのカバー、最高や!」と自画自賛する時間が生まれました。
ーー素敵! この曲がクラブジャズカルチャーの再燃に導かれていくというのは?
時系列的には、この曲をレコーディングした時点では「クラブジャズ・カルチャーの再燃」というワードは自分の中のはまだなかったんですよ。「良い音楽できた!いいね!」ぐらいに思っていたんですけど、今この段階で「Hi-Tech Jazz」のカバーを入れていることは、姿勢の表明としてもめちゃ良いなって。恐れずに言うと、「Hi-Tech Jazz」の最高到達点、出てます。
ーーおお!!
国内外色んなアーティストが「Hi-Tech Jazz」をカバーをしていて、レコーディング後に色々聴いたんですけど、現段階でPOLYPLUSを超えてくるカバーはないですね。これに関してはもう「POLYPLUSが「Hi-Tech Jazz」をアップデートしました」と言えると思います。 生音でダンスミュージックをやるセッションバンドということは変わらずに、その真髄が出ましたね。今「Hi-Tech Jazz」界では、オリジナルかPOLYPLUSかのどっちかやと思います(笑)。
ーー特にどの部分が「ここ最高や」と盛り上がりましたか?
10項目ぐらいあるんですけど、抜粋すると、まずYUKIさんとMELTENさんが言うには、「Hi-Tech Jazz」のオリジナルを聴いた時に「サックスっぽいシンセの音を、生でTSUUJIIがやった方が絶対カッコ良い」と思ったと。その目論見がバシッとハマったよねと言っていました。リズムについては、最初演奏した時に「最高出せたぜ」とはならなかったんです。だけどYUKIさんが「実は根底に流れてるこういうリズムがあるんだよね」みたいな話をしだして、やってみたら「おお、これやん!」と全員がなる感じ。そういうものの集合体ですかね。あと、曲の中にいわゆるメロディーが2種類あって、大体のカバーはわかりやすいメロディーのところだけを使っていることが多いんですけど、もう一つのメロディーが結構難解で不思議な音階感で。そこまで含めてカバーしてる人が少ないんですよね。POLYPLUSはそこもちゃんとやっているというので、オリジナルへのリスペクトと捉えて頂けたらと。良いとこ取りのカバーじゃない、骨の髄までカバーしてる感じ。だから俺らが1番濃厚です。
一緒に作った歴史を記したかった。タイアップ相手への想い
ーー今作の中でTSUUJIIさん的に「これは話しておきたい」という楽曲はありますか?
僕、タイアップものは、特に大事にしたいんですよね。
ーーこれまでのタイアップのテーマ曲4曲が収録されていますが、全て再録されたんですか?
そうですね。フランス・パリのショコラトリー『LES TROIS CHOCOLATS PARIS』2024バレンタインコフレテーマ曲の「trois ‘c’」はそもそもリリースができていなかったので、今回収録して。「showtime」はソロを再録して、「open the auto door」と「close tail」はオール再録。「open the auto door」に関しては少しリアレンジもしました。
ーーなるほど。
皆さんの名前を書きたかったんです。『LES TROIS CHOCOLATS PARIS』、『ゲッターズ飯田の五星三心占い』、『コンビニ★ヒーローズ~あなたのSOS、いただきました!!~』、『クロステイル 〜探偵教室〜』って。一緒に作った歴史を記したかった。この新曲至上主義の世界の中において、再録は新曲じゃない。でも音楽は本来賞味期限がないわけで。メンバーにとってはこの時作ったかけがえのない1曲だし、握手した相手がいる曲はそれだけ関わる人が多いので、期待や信頼してもらったことが、時間が過ぎたら終わりというふうにはしたくない。なので、タイアップの4曲は必ず収録したいなと思っていました。ファンの方は「どれも既に聴いたことある」と思うかもしれないけど、確実に新しいものになっているし、初めて聴いていただく方にとっては全部新曲なので。「こういう相手方と曲を作ったんだ」って、その方の名前とも出会ってもらえたらいいなと思っています。
ーーそして9月25日(水)の大阪・Music Club JANUSを皮切りに11月14日(木)の東京・LIQUIDROOMまで、『POLYPLUS the 10th Anniversary Album “COSMIC” Release Tour』が行われます。改めて意気込みをお願いします。
もちろん気合いの入ったエネルギー溢れるライブを変わらずにやるんですが、今回のツアーは「クラブジャズ・カルチャーの再燃」というテーマを胸に進み始める1発目になるので、DJが鳴っている空間としての楽しさやカルチャー感のある、良いコミュニケーションの場になるものを作っていきたいです。会場はライブハウスだし、深夜にやるわけでもないので、何かが大きく変わるわけではないけど、僕の考えるクラブジャズ・カルチャーに必要なナイスDJ、生音のライブ、ダンス、ナイスコミュニケーションを、少しずつ揃えていきたいなと思っていますね。
ーー良いですね。
昔は「バンドのライブは演者もお客さんもお互い真剣勝負だぜ!」という感覚が強かったんですが、今は本当に「遊びに来てくださいね」と思う。テーマパークに遊びに行くのと横並びで良いなと思っています。でも、来てもらったらしっかり喰らわせるパワーは健在で。それでいて、真剣勝負だけじゃないカルチャー感を表現していけたらと。これは今までのライブを否定するわけではなくて、過去があっての今なので。来年にはまたさらに進んで、別の旗が立ってる可能性も全然ありますね。
取材・文=久保田瑛理 撮影=ハヤシマコ