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「失いたくない」小学生が町を動かした「次が非常に近い」巨大地震にどう備えるか

Sitakke

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東日本大震災から14年。

30年以内に起こるとされる「千島海溝沿いの巨大地震」で北海道東部では、津波対策が進む一方で気になる観測データもあります。

【特集】“じぶんごと”防災

切迫する“千島海溝”巨大地震

北海道東部の観光の拠点、JR釧路駅では2月に津波避難訓練が行われました。

「直ちに高い場所に逃げてください、避難場所はロイヤルインです!」

JR職員の声が響きます。
海から1キロの場所にある釧路駅。

津波の第1波は、地震発生から33分で海岸に到達し、海抜2.4メートルの駅では、最大5メートルの津波が予想されています。

JRの職員は、利用客を避難場所の隣のホテル 、10 階まで誘導します。

「釧路駅は2階までが津波の浸水が想定されている 。今後もよりリアリティがでるように様々な客を想定して検討したい」

高さ10メートルの避難タワー

北海道の沖合に延びる千島海溝。
政府の地震調査委員会は、このエリアで今後30年以内に、東日本大震災クラスの地震が発生する確率を「7%から40%」としています。

地震が冬に発生した場合、津波による死者数は最悪10万人と想定しています。

釧路市のお隣、釧路町では2月、2基の避難タワーが完成しました。

高さは10メートル、約400人が避難でき、冬の避難を想定して暖房も完備しています。

総工費は、2基あわせて14億円。
3分の2は、国の補助金で賄われました。

釧路町セチリ太地区は、近くを釧路川が流れるエリア。
最短30分で、5メートルの津波が予想されています。

その釧路川沿いに住む本間孝一さん(86)は避難タワーの完成を「助かった」と歓迎しています。

「うちなんて目の前が釧路川だから、万が一津波があったらどこに逃げようかなとは思う。今回立派な施設が立ち上がって3分4分で行けるから心強い」

住民1900人のうち、37パーセントが高齢者。

避難タワーが完成する前までは、半径500メートル以内に高い建物がない「避難困難地域」でした。

この命を守る避難タワー建設のきっかけは、「小学生からの手紙」でした。


もう失いたくないから…小学生が町長へ手紙

「釧路町が東日本大震災みたいなことになってしまったら、自分も悲しいし、ほかの人も悲しいと思うので」

齊藤純那(じゅな)さん、15歳。
3年前、小学6年生の授業で、釧路町長に1通の手紙を書きました。

手紙にはこう書かれていました。

私は、家族も友達も地域の人も失いたくないし、悲しい顔を見たくないです。
その命を一人でも多く救うには『津波避難タワー』が必要なのではないでしょうか。

手紙を受け取った小松町長は振り返ります。

「避難タワーが必要だと具体的に提案されたことが非常に衝撃的で、小学校6年生ながらにそういった不安を抱えているんだと思った」

「海抜がとても低くて、あまり周りに高い建物がないので不安があった」と話す純那さん。

家では、純那さんのアイディアで新しい取り組みを始めました。

それが「防災ポーチ」。

純那さんの母・希菜さん(36)は「最近、防災のミニポーチをみんな家族持つようにして、仕事に行くときも持っていくし、常にどこかに行くときは持って行っている」と話してくれました。

ポーチに何が入っているのか、特別に見せてもらいました。


水にカイロに家族の写真…

水、ホイッスル、カイロ。
そして、離れて被災しても寂しくないよう、家族の写真。

ポーチといっても、これだけ入れば軽いものではありません。
でも純那さんはこう話します。

「もし学校に行っているときにこのポーチを持っていたら、生き延びられると思うので、重たくても命を守るためには必要だと思う」

「次の地震は非常に近い」

そんな中、巨大地震と大津波の発生想定されている千島海溝で「ひずみ」がたまり続けていることがわかったのです。

北海道大学地震火山研究観測センターの高橋浩晃教授に詳しく聞きました。

「5年間根室沖の海底の動きを調べた結果、次の地震を起こすエネルギーがたまり続けるということが確からしいということが分かった」

北海道大学と東北大、海洋研究開発機構の研究グループは、根室沖の海底にGPSを置いて、2019年から5年間にわたり、海底がどれくらい動いているのか調査しました。

その結果、海側のプレートが年間「約8センチ」移動。

海側のプレートが沈み始めている場所の観測点も、同じように「約8センチ」陸側に移動していることがわかりました。

これは、海側のプレートが沈み始める場所で、プレート同士が強くくっついている所があり「ひずみ」がたまっていることを示すというのです。

「やはり次の地震は非常に近いんだということを示す結果になっている」

地震を起こすひずみエネルギーがたまりつつあることが分かった今、釧路十勝太平洋の沿岸を中心に、行政にも民間にも対策の強化を呼び掛けています。

百年単位で繰り返されるともいわれる海溝型地震。防災に終わりはありません。

【特集】“じぶんごと”防災

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は取材時(2025年3月11日)の情報に基づきます。

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