『G7サミットの終焉?』再選トランプが火をつけた欧米分裂と揺らぐ世界秩序の行方
2025年6月、カナダで開催された先進国首脳会議(G7サミット)は、国際社会における欧米の影響力低下を背景に、その存在意義が改めて問われる場となった。
近年、グローバルなパワーバランスの変化が顕著となり、特にトランプ米政権の復活によって、G7内部の分裂と亀裂が一層深まっている。
この状況下、G7の役割と存続可能性について疑問の声が高まっており、近い将来、その実質的な終焉も予想される。
G7の歴史と役割
G7は1970年代、経済危機への対応を目的に始まった先進国の枠組みだ。
米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本からなるこのグループは、冷戦時代からグローバル経済や安全保障の課題を主導してきた。
しかし、21世紀に入り、新興国の台頭や多極化する世界秩序の中で、G7の影響力は相対的に低下。
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やG20の台頭により、G7の「世界の中心」としての地位は揺らいでいる。
欧米諸国内での分断
そして近年、欧米諸国の経済的・政治的影響力の低下が顕著だ。欧州では、ブレグジットやウクライナ問題によるエネルギー危機、経済停滞が続いている。
米国も、国内の政治的分極化や経済格差の拡大により、国際社会でのリーダーシップが不安定化している。
特に、2025年に再び成立したトランプ政権は、「アメリカ第一主義」を掲げ、同盟国との協調よりも自国利益を優先する姿勢を鮮明にしている。
これにより、G7内の結束はさらに弱体化している。
トランプ大統領の復帰は、G7にとって決定的な転換点となる可能性が高い。
前政権時(2017-2021年)、トランプ氏はG7サミットで孤立主義的な姿勢を示し、気候変動協定や自由貿易協定に対する懐疑的な態度で他国と対立した。
2025年以降も、同様の傾向が続くと予想される。
例えば、対中政策やロシアとの関係を巡り、米国と欧州の意見対立が深まる可能性がある。
また、トランプ氏の保護主義政策は、G7の自由貿易推進の理念とも矛盾し、グループの求心力をさらに下げるだろう。
新興国の台頭とG20の拡大
G7の衰退の背景には、新興国の経済的・政治的影響力の増大がある。
中国やインドを始めとするBRICS諸国は、G20を通じてグローバルな議題設定に参加し、G7の独占的な役割を希薄化させている。
G20は先進国と新興国を包含する枠組みとして、より包括的で現実的な議論の場となりつつある。
特に、中国の「一帯一路」構想やインドの経済成長は、グローバル経済の重心をアジアへと移している。
このような状況下、G7の「先進国クラブ」としての魅力は薄れ、存在意義が問われている。
また、G7の内部にも構造的な問題が存在する。
まず、経済力の格差だ。日本の停滞や欧州諸国の低成長に対し、米国の経済力は依然として強いが、そのリーダーシップは不安定だ。
さらに、気候変動やデジタル経済、AIガバナンスなど新たな課題に対応する能力が、G7には不足していると批判される。
各国の国内政治の不安定さも影響している。
例えば、フランスやドイツではポピュリズムの台頭が顕著であり、国際協調への意欲が低下している。
G7の終焉と今後の展望
以上の状況を踏まえると、G7が今後数年で実質的に機能しなくなる可能性は高い。
トランプ政権による米国優先主義、欧州の内政問題、新興国の台頭が重なり、G7は求心力を失いつつある。
代わりに、G20や地域的な枠組み(例:ASEAN+3やアフリカ連合)が、グローバルガバナンスの中心として浮上するだろう。
ただし、G7が完全に解散するシナリオは現実的ではなく、象徴的な存在として存続する可能性はある。しかし、その影響力は大幅に縮小し、単なる「先進国の懇談会」に成り下がるかもしれない。
日本にとって、G7の衰退は外交上の課題だ。
G7は日本が国際社会で発言力を維持する重要な場であり、その弱体化は日本の影響力低下に直結する。日本はG20や地域枠組みでの積極的な役割を通じて、新たな国際秩序に対応する必要がある。
特に、アジア太平洋地域でのリーダーシップ発揮が求められるだろう。
2025年のG7サミットは、欧米の分裂と世界秩序の変容を象徴する場となった。
トランプ政権の復活、新興国の台頭、内部の構造的問題により、G7の存在意義は揺らいでいる。
今後数年で、G7は実質的な影響力を失い、グローバルガバナンスの中心はG20や地域枠組みに移るだろう。
国際社会はより多極化し、協調と競争が複雑に絡み合う時代へと突入する。
日本を含むG7諸国は、この新たな現実に対応する戦略を模索する必要がある。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部