発達ナビの就学大調査!就学相談の時期、在籍クラス、合理的配慮…実体験エピソードも満載【未就学・小学校低学年編】
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
就学・進路の大調査!発達特性のある子どもの就学先は?【未就学・小学校低学年編】
2024年12月20日から2025年2月28日に、LITALICO発達ナビでは「就学・進学アンケート」を行い、発達障害のある子どもの保護者283名の声が寄せられました。アンケートへのたくさんのご回答、ありがとうございました。
通常学級に通っている中で、特別な支援が必要だと考えられるお子さんの割合は2022年の文部科学省のデータで8.8%という結果も出ており特別支援の必要性も年々と高まっているのが現実です。
発達障害のあるお子さんは一般的に就学相談で以下のような就学先を選択します。
このコラムでは発達障害や特性のあるお子さんの選んだ進路、トラブル、悩み、進路先の合理的配慮など……アンケートの回答と併せて「就学・進学」にまつわる質問や思いなどもご紹介いたします。
今回は「未就学・小学校低学年編」のアンケート結果になります。実際の経験談やデータは、就学先の検討をされているご家庭の皆さんの参考にもなるはずです。
<調査対象について>
「LITALICO発達ナビ」コラムや会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害の子どもをもつ保護者:283名の回答を集計しました。(調査期間:2024年12月20日から2025年2月28日)
※設問によっては283名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。
※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。
就学・進学アンケート お子さんについて
アンケートの結果、男の子が71%、女の子が27%と、男の子の保護者の方の回答が多い結果となりました。
年齢については未就学児のお子さんが20%、小学生のお子さんが34%、中学生のお子さんが19%、高校生のお子さんが16%、18歳以上のお子さんが11%という結果になりました。
診断名についてはASD(自閉スペクトラム症)が176名、それに続きADHD(注意欠如多動症)が105名となっています。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)と知的障害(知的発達症)など併存していることがデータから読み取れます。
障害者手帳は「療育手帳」「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類があります。持っていない方151人に対して、持っている方は129人という結果になりました。一番多いのは療育手帳で73人の方が所持しています。また、昔持っていたが返還した、という方も3名いらっしゃいました。
就学相談、いつからした?就学に向けて不安なことは?【未就学児のお子さんのいらっしゃる方へのアンケート】
ここからは未就学のお子さんのいる保護者の方の回答とコメントをピックアップしてご紹介します。
就学先は、多くの未就学児の保護者の方が不安を感じたり、悩むのではないでしょうか。現在考えている在籍クラスについては自閉症・情緒障害特別支援学級が43%と一番多い結果となりました。続いて通常学級+通級指導教室(17%)、特別支援学校(17%)、通常学級(11%)、知的障害特別支援学級(9%)となっています。
・年長4月から。
・年長の5月に説明会→その後夏までに個別相談、見学、体験を済ませた。
・年長時の6月頃に直接小学校に電話してアポ取りして訪問しました。
・自閉症・情緒障害特別支援学級希望
本人が2つの教室を行き来することに納得してくれるか不安。
・知的障害特別支援学級希望
小学校ではどこまで支援体制を整えてもらえるのか。
・通常学級+通級指導教室希望
全てが不安です。恐らく通常学級+通級指導教室になるのではと思いますが、自閉症・情緒障害特別支援学級のほうが良いのか、放課後等デイサービスもどうするか迷っています。
就学相談エピソードや進路決定の決め手は?【小学校に通っているお子さんのいる保護者の回答/小学校1.2.3年生保護者のコメント】
ここからは小学校に通っているお子さんのいる保護者の方の回答と、その中から小学校1.2.3年生のお子さんのいる保護者より寄せられたコメントをピックアップしてご紹介します。
現在小学校在籍中のお子さんのいる保護者が選んだのは、自閉症・情緒障害特別支援学級(27%)が一番多い結果となりました。その後通常学級(24%)、通常学級+通級指導教室(21%)、知的障害特別支援学級(16%)、特別支援学校(8%)と続きます。就学相談を行い、通常学級、特別支援学級、特別支援学校とそれぞれ見学などを重ね、最終的に在籍クラスを決めた方が多いようです。
・通常学級
通級指導教室の希望を年長の夏頃に教頭先生に出していましたが、教頭先生が忘れていて空きがなく、通級指導教室に通えませんでした。ですが、通級指導教室に通うとなると送迎や授業を抜けなくてはいけなかったり大変だったので、その代わりに担任の先生や、スクールカウンセラーの方や担当医の先生、子育て相談員の方に相談に乗っていただき逆に助かりました。
・自閉症・情緒障害特別支援学級
夫婦で揃って面談に出向き、心配されること、不安なことを全て吐露してきた。春頃と秋頃に、子どもを連れて、小学校見学に行き、本人に、通常学級と特別支援学級、どちらがいいか尋ねた。
・特別支援学校へ就学
特別支援学級、特別支援学校どちらがよいか悩ましいと担任の先生にも言われており、保護者としてもどうしてよいのか分かりませんでした。教育委員会の就学相談会では子どもの描いた絵や文字なども見ながら、なるべく多面的に娘の進路を考えようとしてくださってると感じました。なので、特別支援学校判定が出た際、娘にとって一番良い選択肢だと納得できました。
・通常学級に就学
本人にとってどこが合っているのか悩みました。診断がないので特に支援は受けられないということもあり、思い切って通常学級にしました。
・自閉症・情緒障害特別支援学級に就学
本人がみんなと違うクラスで落ち込まないか悩みました。
・知的障害特別支援学級に就学
少しでもできることを増やして自信をつけてほしい、本人の気持ちを最優先にした。
実際に決めた就学先については、合っていたと感じた方が67%と一番多い結果になりました。どちらともいえない方は26%、合っていなかったと感じた方は5%でした。合理的配慮などを受けることで安心して通うことができたり、交流学級での体験が良い経験になっていることもあるようです。
・合っていたと感じる(通常学級)
少人数学級なので小回りがきき、子どもがしんどくなった時に「先生、ちょっと休んできます」と申告すると、10分ほど別室で休憩ができたりするので。
・合っていたと感じる(自閉症・情緒障害特別支援学級)
年を経るごとに、自分の状態に合わせて通常学級と特別支援学級を行き来できるようになった。学校も友だちも勉強も好きでいてくれた。
・どちらとも言えない(通常学級)
通級指導教室に通っていないので、なんとも言えませんが子どもは子どもでちゃんと成長していっているので、通常学級を選んでよかったです。療育にも通っているので、そちらのサポートはかなり大事だと思っています。
就学先の支援や合理的配慮に満足をしている(25%)、おおむね満足している(52%)という結果となり、合わせて77%の方が満足していると回答しています。あまり満足していない(15%)、不満がある(4%)は合計19%と全体の約1/5は課題があるとの結果に。お子さん一人ひとりに合った支援がより一層求められています。
・満足している(自閉症・情緒障害特別支援学級)
1クラス9人に先生2人なので目が行き届いていると感じる。体育の授業で自転車に乗れるようになるまで指導してくれたり、お買い物の仕方など生活に必要な技術を身につけさせてくれるので助かっている。
・満足している(特別支援学校)
非常に手厚いと感じています。一人ひとりにあった学習内容を考えてくださるので、ゆっくりではありますが確実に成長できていると感じます。
・おおむね満足している(自閉症・情緒障害特別支援学級)
学校でのことを話さないので、状況が伝わってこない。特別支援学級でのことは連絡帳や先生との話からある程度知れるが、通常学級でのことは分からない。
・おおむね満足している(通常学級)
担任の先生によって配慮や手厚さが異なる。学校にWISCの結果や配慮事項は共有をお願いしているものの、個人情報すぎて金庫に収納されているらしく、校長等の管理職から担任へ共有されていないことも。結局毎回同じものをお渡しし、説明している。
【未就学のお子さんの保護者】就学についての悩みや入学後の合理的配慮について専門家が解説!
Q:今後子どもの就学相談を控えています。障害のある子どもの就学先はどのように決定されるのでしょうか。
A:就学先決定までの簡単なプロセスを紹介します。まず、アンケートにあるように、年長児になってから園の先生、就学先の学校などと就学に関する支援会議が持たれます。この間、いくつかの学校や学級を見学したり体験入級をしてみたりして情報を集めていきます。
いろいろな先生の話を聞いたり、パートナー同士で意見交換をしながら現時点での選択肢を固めて、希望を提出します。自治体での就学支援委員会によって望ましい就学先が決定され、通知されます。もし親の意見と合わない場合は、教育委員会と相談することになります。(回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授))
Q:小学校入学後に合理的配慮を受けたいです。就学前に準備したほうがいいものや受けたほうがいい検査などを知りたいです。
A:小学校での合理的配慮は主として通常学級で行われることが多いです。具体的にどのような場面で配慮が必要かは入学してからでないと分からない部分もありますが、園や保育所などで個別的な配慮を必要としている場面があれば同様の場面でどのような配慮が必要かを入学前に学校と話をしておいてもよいでしょう。
配慮の内容によっては主治医からの診断書や意見書などがあったほうが良い場合もあります。検査などの具体的データがあると配慮も受けやすくなるので学校に相談してみて頂ければと思います。(回答:井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授))
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。