手づくりの味が染み渡る、東新小岩『桧山水産』のできたておでん
今回は葛飾区東新小岩のみのり商店会にあるおでん種専門店、『桧山水産』(東新小岩)のできたておでんとお総菜を紹介しよう。『桧山水産』は東京に2店舗あり、暖簾(のれん)分けによって別々の経営となっている。今回紹介する『桧山水産』はJR新小岩駅から徒歩14分ほどの距離にある。揚げ蒲鉾のおでん種から、天ぷらや大学芋などのお総菜も充実している。
お総菜も充実、お買い得な商品が揃う『桧山水産』
JR新小岩駅から新小岩陸橋を越えて北に向かうと、古き良き昭和の風情を残した商店街、みのり商店会がある。1962年に発足し、古くから営業を続ける店舗が多い。
商店街ができる前は田畑が広がるのどかな場所だったが、高度成長期に伴い発展していった。バブル以降は訪れる人が少なくなり店舗を減らしているが、商店街の中心あたりは今も買い物客でにぎわっている。
みのり商店会には魅力的な店舗が多い。夜はバー(スナック)となる喫茶店『白馬』は人懐っこい店主とおいしい料理が魅力で、『肉の青木』は昔ながらの精肉店の雰囲気が抜群で、眺めているとタイムスリップした心持ちになる。
おすすめは『なかむら屋』という総菜屋で、きんぴらや煮物など何十種類ものお総菜が揃う。梅干しも各種あり、どれもお求めやすい価格となっている。高齢のご夫婦が手づくりしており、おばあちゃんの家に来たようなぬくもりが感じられる。
『桧山水産』はみのり商店会で最もにぎわいのある場所で営業している。スーパーや鮮魚店が連なっているので、買い物にはもってこいだ。
『桧山水産』は江戸川区中央にも同名の店舗がある。今回訪れた東新小岩の店舗近くに檜山水産食品(東京都葛飾区東新小岩5-18-7、閉業)があり、そこから暖簾分けしたという。ちなみに檜山水産食品の跡地は「檜山マンション」という名の建物になっている。
店舗の前には揚げ蒲鉾が並び、ちくわぶや白滝など練り物以外のおでん種も揃えている。揚げ蒲鉾の種類は季節によって増減するので、おでんのシーズンとなる涼しい時期が狙い目だ。
ちくわぶは「ハダカ」と呼ばれる真空パックされていないものが手に入る。おでん汁はチヨダのおでんの味、白滝は神戸物産、はんぺんは嘉平屋のものだ。
お総菜も充実しており、訪れる日によって商品が変わる。天ぷらは野菜を中心に春菊天、きんぴら天、かぼちゃ、かきあげ、ちくわ天などが揃い、お手頃価格で人気があるようだ。
美しい艶が魅力の大学芋も人気で、2パック買うと値引きになる。おやつにもお総菜にもなる便利なひと品だ。このほかに、お総菜はごぼうと人参のきんぴらが並んでいた。今回は販売していなかったが、切りこぶや里芋なども揃う。
今回のお目当ての品であるできたておでんはセット売りとなっている。それぞれの種が大きくお買い得だ。お店の方から「おでん種が足りなければ、揚げ蒲鉾を購入して一緒に煮るといい」とすすめていただいた。接客は非常に丁寧で、柔和な雰囲気に心が和む。お買い得品が手に入るだけでなく、あたたかな人の心に触れ合える。これぞ商店街で買い物をする醍醐味といえるだろう。
手づくりの味が染み渡る、『桧山水産』のおでんとお総菜
買い物を終えてみのり商店会をあとにし、さっそく自宅で調理を開始する。今回はできたておでん、揚げ蒲鉾、大学芋、きんぴらを購入した。
ひとつの店舗でさまざまなお総菜が手に入るのは便利なだけでなく、迷いながらも選ぶ楽しみが感じられる。ひとり暮らしでも家族と一緒でも、手づくりの品をいくつも味わえるのはうれしいものだ。
おでんを紹介する前にお総菜を見ていこう。大学芋は食べやすい大きさながら、ごろりとしていて食べ応えがある。つやつやとした糖蜜とサツマイモ本来の甘みが絡まり、黒胡麻の香ばしさがよいアクセントとなっている。
きんぴらは大きめにスライスされており、ごぼうの食感と滋味深い味わいを堪能できる。ニンジンは柔らかく甘みがあって、素朴ながら奥深さも感じられる。
さて、今回の主役となるできたておでんを紹介していこう。6種類のおでん種が入っており、時計回りに12時から、こんにゃく、さつま揚げ、大根、こんぶ、ボール、玉子(中央)。
大根は芯まで汁が染み込んでいて、箸を入れるとじわっとあふれ出す。おでん汁は定番の味付けながら、さまざまな具材の旨味が溶け合っていて味わい深い。
玉子もしっかり色づいているが、しょっぱくならずまろやかな味になっている。きめ細やかでクリーミーな黄身の食感とともに、舌の上でやさしく溶けていく。
揚げ蒲鉾は「えび玉ねぎ」という玉ねぎと桜エビが混ぜ込まれたものだ。おそらくはセットによって種類が変わるのだろう。玉ねぎの甘みが魚のすり身の旨味を引き立て、桜エビの香ばしさが奥行きのある味わいを作り上げている。
こんにゃくは片側に隠し包丁を入れており、しっかりと汁を抱き込んでいる。ぷるぷるとした食感を残しており、厚みもちょうどよい。
ボールは具材の入っていないプレーンなもので、蒲鉾職人の技を十分に堪能できるだろう。ソフトな食感ながらほどよく弾力があり、噛むごとに魚の旨味が感じられる。
結び昆布はかなり大きめになっており、結び目にかぶりつけば海の恵みを存分に楽しめる。昆布好きなら一度は食したいところだ。
最後に追加で購入した揚げ蒲鉾も味わっていこう。購入したのは3種類。どれも大きめにつくられており、満足感がある。左からもやし天、おこのみ天、スタミナ天となる。
もやし天は魚のすり身にもやしがたくさん入っており、しゃきしゃきとした食感を存分に楽しめる。魚のすり身のソフトな食感とのコントラストも見事だ。
おこのみ天はキャベツ、紅生姜、長ネギ、青海苔などが入っており、まるでお好み焼きのような味わいが楽しめる揚げ蒲鉾だ。キャベツのしんなりとした食感や香りが心地よく、紅生姜や青海苔がアクセントとなっている。
スタミナ天はニラ、もやし、ニンジン、ゴマなどが入っており、名前のとおり活力を得られそうな具材が揃っている。ニラのかぐわしい香りがたまらなく食欲をそそる。
『桧山水産』はおでん種はもちろん、お総菜やできたておでんなど手軽に味わる品が揃っており、どれもお手頃な価格となっている。『桧山水産』だけでなく、みのり商店会も古き良き雰囲気が漂っているので、ぜひ散歩がてら訪れてみてほしい。
『桧山水産』(東新小岩)の基本情報
東京都葛飾区東新小岩7-30
03-3691-8122
定休日:日・祝
営業時間:10:00~19:30
取材・文・撮影=東京おでんだね
東京おでんだね
東京のおでん種・蒲鉾・練り物の魅力を紹介
「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる」文化を盛り上げるべく、都内各地を奔走中。ビジネスでなく趣味でちまちま活動しています。