【ミリオンヒッツ1994】90年代はCDバブル!売れに売れた洋楽オムニバスアルバム「MAX」
リレー連載【ミリオンヒッツ1994】vol.26
MAX -Best Hits In The World- / Various Artists(アルバム)
▶ 発売:1994年11月11日
▶ 売上枚数:114万枚
CDバブルの10年間だった90年代
2024年現在、日本において音楽を聴く際のメディアは、YouTubeやサブスクが主流となっていて “もの” として所有するようなCD、ましてやレコードなんていうものは過去の産物になっているのかもしれない。昨今レコードやカセットテープの需要が世界的に増加しているというデータが示されているようだが、音楽視聴メディア全体からみたら、その占める割合は微々たるもの。エルダー層においてCD / レコードを購入する傾向はあるものの、若年層〜中年層では音楽を “もの” という形あるもので所有することはないようだ。
しかしかつての日本は(もちろん世界的に)、音楽を聴く際のメディアはCD隆盛の時代があったことは周知の事実。それは1980年代後半から2000年代までのおよそ25年間といったところだが、とりわけ1990年代の10年間はCDバブルの時代といっていい状況だった。シングル作品に関しては、1980年代まではミリオンヒットが年に1〜2作出ればいいようなペースだったが、1990年代は驚愕のB.B.クィーンズ「おどるポンポコリン」を皮切りにして通算150曲超を輩出。アルバム作品に関しては、1980年代までのミリオンセラーは数年に1作ペースだったのが、1990年代はやはり150作超を残している。そう、1990年代の10年間は突出してフィジカル音楽作品が売れに売れていた時代、まさしくCDバブルの10年間だった。
洋楽最新ヒットのコンピレーションCD発売ラッシュが勃発
そんな1990年代のCDバブルは、メガヒットの法則に則ったJ-POPシングル、それらシングルヒットを収録したベスト盤化したアルバムといった現象に支えられていたものだが、もうひとつの特徴として最新ヒットをコンパイルした洋楽系楽曲のコンピレーションアルバムが地道にセールスを稼いでいたというものがあった。
1980年代にUK最新ヒットをコンパイルした『NOW』 シリーズ(Now That's What I Call Music! / 英1983年~)が90年代に入っても継続リリースされていたものを、1993年東芝EMI(現:ユニバーサル ミュージック)が日本独自編集で『Now』シリーズとして発売。これが好調なセールスを記録したのを皮切りに、各洋楽メジャー系レコード会社を中心に同様の品がコンスタントにリリース。ちょっとした “洋楽最新ヒットのコンピレーションCD” 発売ラッシュが勃発したのだ。
各レコード会社からリリースされたこの手のオムニバスCDは軒並み良い売り上げとなっていた。その中でも東芝EMIの元祖『NOW』シリーズとソニーミュージック『MAX』シリーズが双璧だったといえるだろう。両者ともに日本独自ヒットという共通項をベースとしながら、UKヒットを主軸にした『NOW』に比して、『MAX』は王道USヒットを主軸にコンパイルされていた。この『MAX』シリーズの記念すべき第1弾作品『MAX Best Hits In The World』(1994年)からちょうど30年が経過した2024年に、“最新洋楽ヒット” コンピレーション黎明期のCDバブルを象徴する本作を紐解いてみようではないか。
1993年から1994年にかけて欧米でヒットした楽曲がズラリ
① Goody Goody / リセット・メレンデス
“グリグリ” の空耳でお馴染み、リセットの一発ヒット。本国USでは小ヒットながら、日本のFMラジオから火が付いた90年代を象徴する日本独自ヒット。
② Do You Wanna Get Funky / C+Cミュージック・ファクトリー
複数のヒット曲のエキスをまぶしたクラブヒット。“エヴリバディ・ダンス・ナウ!” でお馴染みC+Cの1994年作品。
③ Hero / マライア・キャリー
1993年末の全米ナンバーワン。こういったUSメジャーヒットが収録できるのがソニーミュージック盤の強み。
④ Heartbeat / アスワド
ビッグ・マウンテンの流れを汲むようなライトレゲエ作品。クラブやラジオから人気を得た、これも日本独自ヒット。
⑤ I Can See Clearly Now / ジミー・クリフジョニー・ナッシュによる1972年全米1位作品が、映画「クール・ランニング」でカバーされ1993年にヒット。
⑥ Got To Be There / ジャネット・ケイ
一時期はレゲエ風カバーの女王として君臨していたジャネット・ケイが、マイケル・ジャクソンのソロデビューヒット(1971年)に挑戦。
⑦ A Whole New World / ピーボ・ブライソン&レジーナ・ベル
ご存知ディズニー映画『アラジン』の主題歌にして、世界的なメジャーヒット。『美女と野獣』に続き老若男女が知る作品。
⑧ Drunk On Love / バーシア
1986年デビューの女性シンガー、バーシアによる1994年のクラブから火が付いた作品。典型的な日本独自ヒット。
⑨ Un Homme Et Une Femme / クレモンティーヌ
フランス映画『男と女』(1966年)主題歌。フランス人歌手クレモンティーヌは、この後日本独自のJ-POPカバーヒットを多く残していく。
⑩ Kiss Of Life / シャーディ
人気女性シンガー、シャーデー・アデュ擁する英グループによる1993年ワールドワイドヒット。
⑪ When A Man Loves A Woman / マイケル・ボルトン
パーシー・スレッジの全米ナンバーワン(1966年)をマイケル・ボルトンが再び全米1位(1991年)にした名カバー。
⑫ The Power Of Love / セリーヌ・ディオン
セリーヌ・ディオンにとって初の全米ナンバーワン(1994年)となった、ワールドワイド大ヒット作品。
⑬ All About Soul / ビリー・ジョエル
ソニーミュージックの看板シンガー、ビリー・ジョエルの全米ヒット(29位)。ビリーにとって今のところ最後のトップ40曲。
⑭ Rocks / プライマル・スクリーム
プライマル・スクリーム史上最高のダンスロック。ミック・ジャガーの歌唱スタイルを模して、日欧ヒットとなった作品。
⑮ Space Cowboy / ジャミロクワイ
1990年代ソニーミュージックの洋楽ドル箱的存在だったジャミロクワイにとっては初期の日英ヒット作品(1994年)。
⑯ A Hazy Shade Of Winter / サイモン&ガーファンクル
往年のS&G作品(1966年)がTBS系ドラマ『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(1994年)の挿入歌で使用され日本独自のリバイバルヒットを記録。
⑰ Heal The World / マイケル・ジャクソンマイケルが誇りをもって創造したといわれる、アルバム『デンジャラス』(1991年)から生まれた永遠の名曲。
おおよそ1993年から1994年にかけて欧米でヒットした楽曲がズラリと並ぶ。本作のリリースが1994年11月なので、まさしく直近の洋楽ヒットソングがギュッと詰まった作品だったのだ。『MAX』は累積で100万枚を超えるセールスを記録。CDバブルの一角を担った “洋楽コンピレーション” の名作といったところか。