岡咲美保、ハートを揺さぶる歌とチャレンジが満載のミニアルバム『SHAKING』に込めたこだわり、3rdライブに向けての意気込みを語る!
声優・アーティストとして幅広く活躍する岡咲美保が、初のミニアルバム『SHAKING』を完成させた。2025年7月クールのTVアニメ『公女殿下の家庭教師』のエンディングテーマ「少女のすゝめ」や「ハピメモ」「JOY!!」といったアニメタイアップ曲に加え、3rdライブに向けて制作した自身作詞曲「イエロー♡ビート」、数々の名曲を手がける作曲家・俊龍との初タッグとなる新曲「月の季節」、ボカロP・日向電工の代表曲「ブリキノダンス」のカバーといった挑戦曲を含む全6曲。キラキラと愛らしい表情から今までになくダークでかっこいい一面まで、いろんな角度からハートをシェイクしてくれる充実作となっている。楽曲の選定から曲順まで彼女のこだわりが詰まった本作について、たっぷりと話を聞いた。
【写真】岡咲美保、『SHAKING』に込めたこだわり、3rdライブに向けての意気込みを語る/インタビュー
ファンと日常をつなぐ、“心の避難所”としての一曲に
──新作『SHAKING』は岡咲さん初のミニアルバムとなりますが、どのような作品にしたい思いがありましたか?
岡咲美保さん(以下、岡咲):7月13日に開催する3rdライブ(「Miho Okasaki 3rd LIVE 2025 ~ハートシェイキング~ supported by animelo」)に向けて、聴いてくださる皆さんと私の両方のギアを上げられるような作品にしたい、というところから始まりました。1stライブのタイトルは「キラメキブルーム」、2ndライブは「ハッピーメモリー」で、3rdライブは初のZepp会場での開催ということもあり、アップテンポな曲からバラードまで様々な世界観でハートを揺らすライブにしたいという思いから「ハートシェイキング」と名付けたのですが、そのライブタイトルに紐づけつつ、これまでのアルバムが『BLOOMING』『DREAMING』と“ing”系で続いていたので、タイトルは『SHAKING』にしました。
──「ハートシェイキング」というワードは、岡咲さんが作詞した「イエロー♡ビート」の歌詞にも入っていますよね。これは公演タイトルも意識して作詞したのでしょうか?
岡咲:はい、3rdライブのテーマ曲にもなるような楽曲を作りたい思いがあって、デモを集めて候補曲を聴かせていただいたのですが、この曲を聴いた時に「自分で歌詞を書きたい!」と思って、自ら立候補して作詞しました。デモ曲を選ばせていただくときはキャッチーで中毒性があることを一番大事にしていて、候補曲をひと通り聴いたうえで、鼻歌で口ずさめるほど印象に残った曲を選ぶことが多いのですが、「イエロー♡ビート」は最初から花丸満点だったんです。サウンドからして、私が大好きなボーカロイドの打ち込み系の楽曲みたいな雰囲気を感じて。すごく馴染みがあるなあと思っていたら、これは後から知ったのですが、楽曲を作られたのが『アイドルマスター シャイニーカラーズ』でお世話になったことのある藤井(健太郎)さんで、すごく納得しました。
──歌詞には岡咲さんのファン想いな部分がたくさん出ているように感じましたが、どのように書き進めていきましたか?
岡咲:ライブをテーマにした曲ということで、盛り上がる曲にしたかったのはもちろんなのですが、その場限りで終わる曲にはしたくなかったので、私自身が聴いていてモチベーションが上がるもの、そしてお客さんにとっても、ライブだけでなく日常の中での心の避難所や楽しみになるような曲にしたいという思いがありました。なので、歌詞でしか表現できないような本音の部分、伝えたいことをノートに箇条書きにして、それを重くならないように落とし込んでいきました。
例えば、「イノチ」という単語が何度も出てくるのですが、漢字だと重たい印象になるのでカタカナ表記にしました。私はライブというものにすごく「イノチ」を感じるんです。自分がステージに立っている時は「生きてるな」ってすごく感じますし、お客さんとして参加している時も、その場だけの自分の鼓動を感じることができる。そういう盛り上がりの部分だけでなく、いずれ終わってしまうからこそ「イノチ」を意識してしまう自分もいるので、その切なさのようなものも取りこぼさないように、楽曲に包容力を持たせたいと思って書きました。
──そのバランス感が絶妙ですよね。明るくて楽しい曲調だけど、今この瞬間の歓びを共有できる大切さ、いつか過ぎ去ってしまうからこその尊さがしっかりと伝わってきます。
岡咲:そう言っていただけて安心しました。言葉選びはポップにしていて、「冴えない日々にやんなちゃう」みたいにメロディにハマる語呂を優先してくだけた表現にしているところもあるのですが、伝えたいことは結構重さもあったりして。以前に自分で作詞した「カレイドスコープ」は、手紙のように綺麗な言葉を選んで気持ちを綴ったのですが、今回はそれよりも歌に合った詞を書くという点を意識して。自分でも不思議なバランスで出来上がったなと思っています。
──「賢(かしこ)に了(りょう)しても」のように、独特のフレーズもたくさん組み込まれています。
岡咲:そこはかなり書き直しました!最初は「わかったふりをしててもわかりたくないことあるでしょう」みたいな感じだったのですが、それだと少し普通すぎるなと思って、「賢いふりして了解ってことにしよう」と考えたものの、語呂が合わなかったので、「賢(かしこ)に了(りょう)しても」に辿り着きました。意味が伝わるか少し不安だったのですが、チームの皆さんが「いけると思います」と言ってくれたので、これでいこうと。みほちゃんず(※岡咲のファンネーム)の皆さんには注釈なしでわかってほしいですけど(笑)。自分だけの言葉も生み出すことができて、「イエロー♡ビート」の作詞はすごく楽しかったです。
──作詞は「あと、ちょっと」(塚田耕平と共作詞)と「カレイドスコープ」に続いて3度目だと思いますが、時間はかからずできる方ですか?
岡咲:「カレイドスコープ」はすごく時間がかかりました。私の場合、机に向かって歌詞を書こうとするよりも、移動中とかドライヤーで髪を乾かしている時とか、何かをしながらの方がアイデアが浮かんでくるので、その都度、iPhoneにメモしていて。「イエロー♡ビート」は、お風呂に浸かりながら一晩でほぼ書き上げました。長風呂派なので、お風呂で作業するのが好きなんです。
──体が温まると血行が良くなって、脳にも血液がたくさん巡って頭が冴えると言いますものね。ちなみに岡咲さんはどんな時に「ハートシェイキング」しますか?
岡咲:仕事終わりの乾杯の時とかですかね(笑)。すごく心が躍ります。2ndライブの後に打ち上げができて、チームで乾杯した時は、達成感を分かち合えたのもあってすごくハートシェイキングでした。私、家で一人で飲む時も、自分の中で「世界に乾杯!」とか言うんですよ。その日に友達と遊んだら「〇〇ちゃんの優しさに乾杯」とか、ぬいぐるみを買ったら「かわいさに乾杯」みたいな感じで、乾杯する前にその日の素敵だったことを思い出すんです。それも「イノチ」を感じる瞬間かも(笑)。
──「イエロー♡ビート」というタイトルもいいですよね。黄色は岡咲さんのアーティストカラーでもありますし。
岡咲:曲名はすごく悩みました。最初は「ハートシェイキング」で決まりだと思っていたのですが、少し長いかなと思って。そこで「イノチ=鼓動」というところから発想して「ビート」と、自分のテーマカラーであるイエローを合わせました。真ん中のハートマークはかわいらしさを意識したのと、「イノチ(ハート)」をかけています。
──先ほど、伝えたいことには結構重い部分もある、というお話しでしたが、よく聴くとファンへの愛情もかなり重いですよね。最後は「待って!行かないでよ」「ずっと一緒にいよ」と歌ってますし。
岡咲:そうなんですよ。私もアーティスト活動を始めてから、自分が重いのかもしれないと初めて知りました。インスタライブとかでファンの方から「二画面で推しの配信見てる」「現場を回してきた」みたいなコメントがあると、「ふーん、いいよ全然。でも、今は私を一番にしてね♡」みたいな感じになるので(笑)。そういう部分も含めて、ファンのみなさんは喜んでくれることを期待しています!
採用されたのは“わんぱくテイク”!「サンキュー!」に込めたライブ感
──リード曲の「少女のすゝめ」は、岡咲さんもリィネ役で出演している7月クール放送のTVアニメ『公女殿下の家庭教師』のエンディングテーマ。楽曲の制作はどのように進めていきましたか?
岡咲:楽曲選びの段階では、まだアフレコも始まっておらず、エンディングとして、しっとり系でいくか、かわいくいくか、元気にいくかを悩んだのですが、原作のテンポ感が良く、かわいい女の子がたくさん登場する一方で、リアルな心象描写もある作品なので、アニメを観終わった後に高鳴る鼓動のままエンディングを迎えるのがいいかなと思い、そのイメージをお伝えして、集めていただいたデモ曲から選ばせていただきました。
──この楽曲を選んだ決め手は?
岡咲:中毒性と新鮮さです。スウィング感のあるリズムとブラスサウンドが新鮮で、少女たちが行進していくような感じもありつつ、どこか懐かしいレトロ感もあって、少女が聴いてくれてもいいですし、大人が少女気分で聴いても素敵だと思います。歌詞も文学的で、作品の「家庭教師」という題材に合っていると感じました。
──作品にはどのように寄り添っているのでしょうか。
岡咲:作品自体、魔法などが登場するファンタジーな世界が舞台なので、歌詞に出てくる「剣(つるぎ)」や「氷」といったワードは、作品を観ていただければ「ここだ」とわかる部分がたくさんあると思います。それとこの作品には、私が演じるリィネを含め、本当にいろいろな少女が登場するのですが、「少女のすゝめ」の歌詞にも「駆け出し少女」「成長少女」「あえかな少女」「清廉少女」「可憐な少女」「優しい少女」など、たくさんの少女が出てくるので、聴く人が自分に当てはめたり、その時々の状況で捉え方を変えたりできるのがいいなと思いました。
──それで言うと、岡咲さんは「〇〇少女」だと思いますか?
岡咲:「未完成少女」じゃないですかね。デビュー前から今までずっと「私は未完成だな、悔しいな」とないものねだりをしてきているので。でも、完成してしまったら、それはそれで寂しいだろうなとも思います。そこにロマンを感じるくらいの余裕があれば、良いバランスなのかなと。なので私はこれからも「未完成少女」でいたいです。それが自分の良さだと思って頑張ります。
──楽曲タイトルの「少女のすゝめ」もインパクトがあっていいですよね。福沢諭吉の「学問のすゝめ」とかけていて。
岡咲:このタイトルは私が付けました。少女たちの背中を押すという意味だけでなく、「少女なんだから失敗してもいいんじゃない?」くらいのテンション感をおすすめしたいなと思ったんです。子供の頃って、失敗とか怪我を恐れることなく、自分のやりたいことを自由に何でもやるところがあったと思うのですが、大人になってもそういうメンタルは見習いたいなと。誰しもそういう時期を経て大人になっているはずだから、たまにはそこに戻ってみてもいいんじゃないか、という気持ちで聴いてもらえると嬉しいです。
──歌声も、すごく明るくて可憐な感じがしました。
岡咲:軽さを出すために、喉や胸にしっかり落として歌うというよりも、歌声がずっと繋がっているような、レガート感を意識して歌いました。一息で歌うような独特の節回しだったので、レコーディングは順調でしたが、ライブで初披露する時はどうなるかドキドキです。
──楽曲のラストを「サンキュー!」と元気いっぱいに締め括るのも良かったです。
岡咲:あれは4パターンくらい録ったうちの、一番わんぱくなテイクを採用しました。これまでの楽曲でも、落ちサビ前の吐息を数パターン録って「吐息選手権」を開いたりしていたんですけど、今回は「サンキュー選手権」でした(笑)。もっとかわいい感じのテイクもあったんですけど、私と作曲してくださった澤田(空海理)さんの意見で、一番わんぱくで打ち上げ感のある「サンキュー!」にしようということになりました。
──MVでは、カフェの店員に扮した岡咲さんがフィーチャーされていますが、撮影はいかがでしたか?
岡咲:普段はステージでの演奏も楽しめるカフェを貸し切って撮影しました。私はお店の閉店作業をして、エプロンを巻くと妄想なのかステージで歌っているシーンに切り替わる内容になっています。私も飲食店でアルバイトをしていたので、その頃を思い出しながら、手際よく掃除しました(笑)。
──どんなお店でアルバイトをされていたのですか?
岡咲:カレー屋さんで働いていました。その頃は、お昼時はスパイスと共に過ごしていましたね(笑)。そこの店長さんが父親と同世代で、娘さんも私と同い年くらいだったこともあり、本当に娘のようにかわいがっていただいて、今でもライブに来てくださったりします。
──素敵なご縁ですね。MVの衣装の注目ポイントも教えてください。
岡咲:それはもうメガネですね。MVでメガネを長い時間かけるのは初めてじゃないかな? 雑誌の撮影では何度かかけたことがあって、その時に「メガネおみほ」と喜んでくれた方もいたのですが、それが全員の意見なのか、一部の方に深く刺さっているのか……皆さんがどう受け取ってくれるかドキドキです(笑)。自分としては、メガネをかけると雰囲気が変わって柔らかくなると思うんですよね。メガネ好きの方にも刺さると嬉しいです。最後には取っちゃいますけど(笑)。
──せっかくなので『公女殿下の家庭教師』についてもう少し詳しくお聞かせください。ずばり見どころは?
岡咲:まず、かわいい女の子がたくさん出てくるので、必ず推しが見つかると思います! 願わくば私が演じるリィネちゃんを贔屓にしていただきたいですけど(笑)。リィネは、年齢的には幼いけどプライドが高くて、些細なことにも噛みつきますが、一度懐くと仲間意識が強く情に厚い、猫のような性格なので、好きな方には刺さる子だと思います。
作品は、ポップでハーレム要素も楽しめる一方で、複雑な心境を抱えている少女が多く、誰かがうまくいっている横で、寂しげな顔をしている子がいたりします。その点で、頑張っているのにうまくいかない自分の状況とキャラクターを重ねて勇気をもらえたり、学生時代の「あの子は評価されているけど自分は……」といったリアルな心境に寄り添ってくれる作品です。絵はかわいいですが、意外と深い物語が描かれています。
──女の子のキャラが多いこともあり、キャストは華やかな方々が揃っていますが、アフレコの思い出も聞いていいですか?
岡咲:アフレコは席が自由だったので、私はいつも(水瀬)いのりさんと前島亜美さんの間に座っていました。前島さんとはこの作品が初対面だったのですが、実は誕生日が11月22日で私と同じなんですよ。なのですごく仲良くなれそうだなと思って、「あみたって呼んでいいですか?」と聞いたら、「じゃあ、私はおみほさんって呼ぶね」と言ってくれて。キャリア的には前島さんの方が上なのに、すごく丁寧な方で、人見知りだそうなので、「じゃあ私がこじ開けるね」と宣言して、今はもっと仲良くなるために打ち合わせ中です(笑)。そんな私たちを、いのりさんはニコニコしながら見守ってくれて、収録後にいのりさんが誘ってくれて3人でご飯に行ったりもしました。本当にお姉さんのような愛を感じています。
──キングレコード所属の縁もあって親交が深まっているようですね。余談ですが、この間、水瀬さんと2人でカラオケに行かれたそうですね。SNSで報告されていましたけど。
岡咲:そうなんです! 「LIVE DAM WAO!」で「KING SUPER LIVE 2024」の映像を使った楽曲を楽しめるということで、その映像を2人で観ながら、副音声みたいに「あー、ここ!」って言い合って、本当にホームパーティーのような時間を過ごしました。ほとんど歌わずにしゃべっていたんですけど、お互い水樹奈々さんへのリスペクトが強いので、最後に2人で「ETERNAL BLAZE」を歌って締め括りました。
「月」に「鐘」、そして“カンパネルラ”──岡咲流・詞世界の広がり
──その他の収録曲に目を向けると、俊龍さんが書き下ろした新曲「月の季節」も注目の1曲。俊龍さんとご一緒するのは初めてですよね?
岡咲:はい。以前、冨田明宏さんと一緒にやっていたラジオ番組「ANISON INSTITUTE 神ラボ!」で、俊龍さんのライブイベント「俊龍F」が開催されるお知らせを読んだ時に、「私もいつか俊龍Fに出たい!」と思ったんです。もちろん私も俊龍さんの楽曲を聴いて育ってきたので、楽曲を書いていただきたい気持ちはずっとありましたし、今回ご一緒できて本当に嬉しいです。
──俊龍さんはアイドルポップからアニソンまで幅広く手掛けていますが、今回は岡咲さんの楽曲としては珍しく、マイナー調のドラマチックなロックナンバーですね。
岡咲:これは私の想いとプロデューサーさんの想いが合致した部分です。俊龍さんにしか書けないテイストでありながら、ライブでも一際目立つ、私のイメージとは真逆の世界観を、という狙いがありました。私は「太陽みたい」と言っていただくことが多いので、今回は「月」というテーマは俊龍さんから提案していただいて。メロディのデモをいただいた際に、「歌詞に入れたいワードがあれば」ということだったので、「楽曲からカンパネルラという感じがしました」と伝えたところ、「じゃあ“鐘”という単語を入れよう」ということで「鐘が鳴るよ月の季節」や「鐘よ響け月の季節」という歌詞や、楽曲にも鐘の音を入れてくださりました。
──ご自身のイメージとは真逆ということで、挑戦的な曲になったのではないでしょうか。
岡咲:確かにお仕事で歌うのは明るい曲が多かったですが、プライベートで聴いたりカラオケで歌ったりするのは、影の部分の感情を描いた楽曲が多いんです。私の声質はどちらかというとシャープよりはフラットなタイプなので、明るく聴こえるようにするには、自分が思っている以上に弾けて歌う必要があるのですが、この曲は真っ直ぐな表現で臨むことができて。岡咲美保として表現するのは難しいかなと思いましたが、俊龍さんの節回しを聴き馴染んでいたこともあり、レコーディングは順調に進みました。小説を朗読するような詞でもあったので、声を置いていくような感覚で歌いました。
──新鮮な表情をお届けできる一曲になりましたね。
岡咲:この曲はばっちりキメて歌いたいですね。ピアノの前奏がすごくかっこいいので、早く生バンドで聴きたいです。
──これは個人的にぜひ聞いてみたいのですが、好きな俊龍ソングは?
岡咲:ええっ!「俊龍F」出演に向けて重要な質問ですね(笑)。まだご本人には「俊龍F」に出演したいことをお伝えしていないんですけど。好きな曲はたくさんあるので悩みますけど……やっぱり俊龍さんのことを最初に知った、小倉唯さんのソロデビュー曲「Raise」ですね。当時の唯さんのイメージは、ゆいかおりや作品で演じているキャラクターのかわいらしいイメージがあったなかで、「Raise」でかっこよくきたことに衝撃を受けました。それこそ「月の季節」は曲調的に「Raise」と通じる部分も感じられますし、本当に贅沢な楽曲を書き下ろしていただきました。
──そして新録曲がもう1曲、ボカロPの日向電工さんの代表曲「ブリキノダンス」のカバーも大きなトピックです。カバーを作品に収録するのは初めてですよね。
岡咲:今回、ミニアルバムに6曲収録するにあたり、新曲4曲をどういう方向性にするか話し合うなかで、何か新しいことに挑戦したいと思い、ボカロPさんに楽曲を書いていただくのではなく、本家をカバーすることにしました。カバーは初めてだったので、お客さんがどう思うかドキドキでしたが、ボカロ好きは公言していますし、デビュー曲の「ハピネス」をDECO*27さんに書いていただいた経緯もあるので、ファンの方にもボカロ好きの人は多いだろうと思い、挑戦することにしました。
──「ブリキノダンス」は島爺さんからAdoさんまで、数々の歌い手が歌ってきた人気曲だからこそ、岡咲さんならではの表現を考えた部分もあったのではないでしょうか。
岡咲:シンプルに曲が好きで、昔からカラオケでよく歌っていましたし、言葉数が多いメロラップは私の持ち味であるクリアな発声にも合うのではないかと思い、初めてのカバーはこの曲を歌うことに決めました。歌ううえで大切にしたのは、とにかくかっこよくすること。私の中の「少年」のような響きを意識して、女性らしさが出すぎないようにコントロールしました。それと「頑張ってます」感が出ると少し冷めてしまうかもしれないと思ったので、軽く歌っているようなテンション感を大事にしました。余裕を見せつつ、決めるところはしっかりリズムに乗せていく、リピートしても聴き疲れしない心地良さを目指しました。個人的に、女性がカバーする低音の効いた「ブリキノダンス」が好きだったので、自分も憧れの歌い方ができて嬉しかったです。
──今回のミニアルバムには未収録ですが、YouTubeの公式チャンネルに「テレパシ」と「オーバーライド」の歌ってみた動画も公開されています。ボカロ曲を歌うのは楽しいですか?
岡咲:楽しいです! キャラクターソングとも、自分の楽曲ともまた全然違う、でもそこで培ったことが活きる、職人技のような感覚です。ボカロ曲は言葉数が多く、歌詞も尖っているので、感情を出すアプローチはキャラソンに近いですが、キャラクターではなく自分の引き出しで表現する感覚があって。これからもぜひ続けたいと思っているので、また色々なボカロ曲に挑戦していきたいです。
──さらに今作にはシングル曲「ハピメモ」「JOY!!」を1曲目と2曲目に収録しています。
岡咲:今回は曲順も自分で考えました。「ハピメモ」は楽しい時間の始まりを告げる曲として1曲目に置いて、2ndライブの思い出の曲から「JOY!!」に繋がる流れになっています。「JOY!!」はライブで歌うたびに、すごくライブ映えする楽曲だと実感しているので、今回の『SHAKING』というテーマにもぴったりだと思います。その後に「イエロー♡ビート」を置いたのは「素直にレッツジョイ!しよ」という歌詞があるからで、そこから「月の季節」になるのは、「黄色(=イエロー)」といえば「月」という、マジカルバナナ的な発想ですね(笑)。最後は異色の「ブリキノダンス」から、太陽のような「少女のすゝめ」で締め括る、良い曲順になったと思っています。
──初回限定盤には、初のロケ企画映像「おみほのODEKAKE!!」が収録されるとのことですが、これはどんな内容ですか?
岡咲:急に名付けられて始まったロケ企画です(笑)。詳しくは観てのお楽しみなんですけど、少しだけお話しすると、料理をしました。ロケ自体あまり経験がないですし、今まで配信や番組で料理をすることもなかったので、新鮮な私が見られると思います。自分的には、新たな才能に目覚めたなと思っています(笑)。このロケは3rdライブにも繋がる企画になっているので、ぜひライブに行く前に見てもらえたら嬉しいです。
──普段は料理をされないのですか?
岡咲:あまりしないですね。でも凝り性なので、やり出したらハマると思います。料理を始めたあかつきには、自己肯定感が爆発するのを楽しみにしています(笑)。
──最後に、7月13日のワンマンライブへの意気込みをお願いします。
岡咲:3rdライブということで、1stライブ、2ndライブの時以上に皆さんに会える喜びや、会えることが当たり前ではないということを噛み締めながらのライブにしたいです。ライブタイトル通り、自分の理想だけでなく、皆さんと一緒に心を揺らすライブにしたいです。セットリストも、心や体を様々な方面から揺らせる楽曲を集めましたので、ぜひ皆さんも命を感じながら、KT Zepp Yokohamaに会いに来てくれると嬉しいです!
[文・北野創]